【上白石萌歌さん】『リア王』で3年ぶりに舞台に挑戦!【スペシャルインタビュー】
ドラマや映画で大活躍している上白石萌歌さんが、3月から上演される『リア王』で約3年ぶりに舞台に挑みます。ご自身にとっての原点と語る舞台にかける意気込み、そしていま最も輝いている俳優の一人である上白石さんの〝ウェルビーイングなこと〟に対する考え方まで、2回に渡りスペシャルインタビューをお届けします!
――シェイクスピアの4大悲劇の1つとして知られる『リア王』。段田安則さんがタイトルロールを務める今作のオファーが来たときの感想を教えてください。
私はとにかく舞台が大好きなんです! 鹿児島で暮らしていた幼い頃に姉と2人でミュージカルを習っていたのですが、私が初めて表現というものに触れたのがその時なので、舞台が原点だと思っているんです。その頃に年に1回行われる公演で受けた感動や感激は、今やらせていただいている表現のお仕事の原動力になっていると思います。表現の仕方はいろいろとありますが、舞台というものに特別なものを感じているので3年振りにまた立つことができてとても嬉しいです。今回初めてシェイクスピア作品に挑みますが、演劇をやっているうえで一度はやってみたいと思っていたので今から楽しみです。
――シェイクスピア作品にはどんな印象をもっていらっしゃいますか?
シェイクスピアが数々の戯曲を作りだしたのが今から約400年前で、当時、シェイクスピアは戯曲を作るだけでなく当時はなかった演出家や劇場管理などのプロデューサーの役割も果たしていて、演劇のすべてを担っていたことに驚きました。そしてなによりもすごいなと感じているのが、400年経っても演じ続けられていることです。今も「演じたい」「観たい」と思わせるのは、時代が違っても変わることのない問題提起を投げかけているからではないでしょうか。今回の『リア王』で描かれているのは真実の愛や忖度についてだと思うのですが、昔に書かれたものなのに現代の私達にも起こり得る感情として受け止められるのがシェイクスピア作品の醍醐味だと思います。
――今回演じるコーディリアという役をどのようにとらえていらっしゃいますか?
一見、優等生にも見えますが、それは誰よりも誠実で嘘がつけないからだと思うんです。父に愛を語ればいいのに、自分の正義感がそうさせません。素直だけどこうと決めたら頑なに意志を曲げない強さを持っている人だと思います。
――コーディリアは上白石さんのイメージとも重なるのですが、ご自分では共感できるところはありますか?
嬉しいです! 私も何か物事を始めるときに、ちょっとしたことですが「毎週必ずやろう」とか「最後まで絶対にやろう」と決めた信念は曲げないタイプです。でも頑固にはなりたくないので、柔軟な対応力は持っていたいと思っています。
――主演の段田さんをはじめ、小池徹平さん、江口のりこさん、高橋克実さん、浅野和之さんなど錚々たる先輩方がキャストに並んでいますが、カンパニーの雰囲気はいかがですか?
再共演の方が多いのでとても心強いのですが、顔合わせや本格的なお稽古はまだ始まっていません。今はプレ稽古の段階で、来日されている演出家のショーン・ホームズさんたちとワークショップをしています。海外の演出家さんとご一緒するのは初めてなのですが、稽古場の雰囲気が温かいので嬉しいです。日本ではいわゆる〝ダメ出し〟になるところを、ショーンさんだと「今の君のお芝居はとてもいいね! さらにこうするともっとよくなると思うよ!」と言ってくださいます。私を肯定したうえで次に進む方法を提案してくださるのはとてもやりやすいですし、演出家と役者が対等でいられるのは新しい感覚です。
――今回の演出家のショーン・ホームズさんの作品は過去に何度もご覧になっているそうですね。
日本で上演したショーンさんの作品はすべて拝見していますが、伝統的な戯曲の中に斬新な現代の風を吹かせるところに魅力を感じます。なかでも印象に残っているのが今回共演させていただく段田安則さん主演の『セールスマンの死』なのですが、舞台上に黄色い冷蔵庫が1つ置かれていたんです。最後に段田さんが冷蔵庫の中に入っていくのですが…。「あの冷蔵庫は何?」と、想像力をかきたてられました。私は「冷蔵庫は棺桶を意味していたのではないか」と思ったのですが、モチーフの意味を考えたり推理するのがとても面白かったんです。今回も戯曲の大筋は変わらないと思いますが、ショーンさんらしい新しい見せ方をしてくれて、今までにない『リア王』が生まれると思っています。
――お稽古場ではどんなふうに過ごしていますか?
関係性ができているとお芝居がやりやすいので、皆さんとお話しして過ごすことが多いです。座組で私が一番年下ということが多くて今回もそうなのですが、「全部教えてください!」という気持ちで話しかけると皆さん快く意見をくださいます。もともとは人見知りなんですけど、年々コミュニケーションをとるのが楽しくなっているのは優しい先輩方のお陰なのではないでしょうか。どの現場でも一番後輩だった私も今年で24歳ですから、私より年下の10代の方とご一緒する機会も増えてきました。そんなときはちょっと焦ってしまい、一番下にしがみついていたくなりますが(笑)。諸先輩方に教えていただいたように、私もアドバイスできるようになりたいと思っています。
――東京を皮切りに5都市を周り約2カ月の長丁場となる公演ですが、目標にしていることがありますか?
舞台のお仕事をするときに毎回思うのですが、その日のお客さまや劇場によって作品は毎回変わるんです。毎公演、新鮮な『リア王』をお客さまと一緒に作っていきたいと思っています。また、同じカンパニーで5都市も回るので、地方で皆さんと一緒に美味しい物を食べたりして絆を深めたいです。
――最後に今回の舞台を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
舞台は演じている側もエネルギーを放出しますが、同じようにお客さまからもエネルギーをいただくので、劇場はエネルギーの渡し合いの場のようになるんです。演出家のショーンさんの魔法がかかった新しい『リア王』が、演者とお客さまの間にどのような新しい風を吹かせるかとても楽しみですので、是非この機会に劇場まで足を運んでいただけると嬉しいです。
『リア王』
‘22年演劇界に衝撃を与えた『セールスマンの死』のタッグ、ショーン・ホームズ&段田安則がシェイクスピア4大悲劇の1つ『リア王』に挑む。愛を取り繕った甘言、言葉にできぬ真心。真時の選択を間違えた王は狂気の中、王国を彷徨い…。豪華実力派俳優が挑む悲嘆と狂乱の物語。作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子 演出:ショーン・ホームズ 出演:段田安則 小池徹平 上白石萌歌 江口のりこ 田畑智子 玉置玲央 入野自由 前原滉 盛隆二 平田敦子 / 高橋克実 浅野和之ほか 東京公演:3月8日(金)~31日(日)東京芸術劇場 プレイハウス/4月より新潟、愛知、大阪、福岡、長野の5都市でも上演。
上白石萌歌
‘00年鹿児島県出身。’11年に史上最年少で第7回「東宝シンデレラ」グランプリを受賞。12歳でドラマ『分身』で俳優デビュー。以降、ドラマ、映画を中心に多数の作品で活躍。最近の主な出演作はドラマ『ちむどんどん』『ペンディングトレイン-8時23分、明日君と』『パリピ孔明』、映画『アキラとあきら』『KAPPEIカッペイ』『ゆとりですがなにかインターナショナル』、舞台『ゲルニカ』など。
上白石さん着用衣装/ベスト¥140,800中に着たジャケット¥269,500スカート¥660,000リング<人差し指>¥84,700<中指>¥50,600(すべて ボッテガ・ヴェネタ/ボッテガ・ヴェネタ ジャパン 0120-60-1966)イヤリング¥12,100(イリスフォーセブン/フーブス 03-6447-1395)
撮影/木村 敦(Ajoite) ヘアメーク/渋沢知美 スタイリング/道端亜未 取材/よしだなお 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)