【防災を考える】ちょっとした気象の知識が危機回避につながることも
東日本大震災から10年以上経った今も、地震や台風、豪雨、豪雪、噴火などによる自然災害は絶えません。「備えあれば憂いなし」とは言いますが、何をどう備えればいいのか、どのように意識を高めていけばいいのか。防災・減災の使命感にあふれる女性たちを取材してきました。
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水渡敬子さん(47歳・東京都在住)「日本気象予報士会サニーエンジェルス」代表
ちょっとした気象の知識が危険回避に
つながることも。 知って、実践することで
怖がりすぎないようにするのが重要
つながることも。 知って、実践することで
怖がりすぎないようにするのが重要
水渡敬子さんは、女性気象予報士を中心に活動する「サニーエンジェルス」の代表を務めています。「空を見上げる人を増やしたい」という思いで、ペットボトルで雲を作るなどの実験講座を子ども向けに開催。また、気象予報士の知識と、阪神・淡路大震災の被災体験を生かして、防災講座も開催しています。
「台風や豪雨などの気象災害は、ある程度予測できます。加えて、ちょっとした気象の知識があれば、危険を回避できることも。例えば、あたりが暗くなり、遠くで雷が聞こえ、ヒヤッと冷たい風を感じたら、ゲリラ豪雨を降らせる積乱雲が間近に存在している可能性が。すぐに建物に入れば、豪雨、落雷、突風や竜巻に備えることができます。また、開けた平地で、雷が鳴ったら、木陰に避難するのは危険。建物の中に入りましょう」。
予報を有効に使うためには、正しい知識も欠かせません。「例えば、『夕方から雨』という天気予報だと、17時くらいから雨と思う方もいるのでは? 気象予報で使われる『夕方』は15時から18時と定義されています。15時はもう、夕方なのです」。
さらに重要なのは実践です。「座学の知識では不十分。やってみることは非常に大切です」。講座の中で、親御さんたちにまずやってもらうのが、おんぶです。「避難の際は、両手が使えて、足元が見えるおんぶが、抱っこより安全です。でも、子どもも親も慣れていないので、これがなかなか難しい。一人でできなければ、周りの人に『手伝って』と声かけを。これは、助けを求める練習にもなります」。
逆に、災害を怖がりすぎるのもよくないと言います。「備蓄は大切ですが、いざとなれば、身一つで逃げても何とかなる、ということも知ってほしい」。そこで、タオルとビニール袋を使って簡易オムツを作る方法も学びます。
「世田谷区は、3年前に多摩川が氾濫したときに浸水被害があった地域です。当時、台風接近のニュースを聞いたり、スマホアプリの緊急速報が鳴ったりすると、『避難しなきゃ』と気が焦りました。私は、阪神・淡路大震災の際、避難所に指定された小学校に逃げたのですが、理科室から火災が起こり、避難所が一番安全とは限らないと知りました。そこで、講座内で、防災マップを見て、家と避難所の場所、避難経路を確認してもらっています。避難所より自宅のほうが高台にあったり、避難経路が危険な場合は、自宅で垂直避難するという選択肢もあるんです」。
水渡さんは、現在、自治体や民間団体などからの要請ベースで講座やイベントを開催しています。「このように地域の仲間や家族で防災を考える機会が増えるといいなと思っています」。
撮影/BOCO 取材/秋元恵美 ※情報は2022年4月号掲載時のものです。
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