逆コナンのようなギャップに戸惑う「50代の本音」のリアルさ|大久保佳代子のあけすけ書評
体は十分すぎる大人、でも心は――。 人生100年時代、 戸惑う50代の本音のリアルさに共感したり予習したり
私、いよいよ今年で50歳になります。でも子供の頃に思い描いていた50歳には程遠いです。もっと大人だと思っていたし、なんならもっと枯れていると思っていました。
この一冊は、人生100年となった現在、50代女性はどうなっていくのかを教えてくれます。
1966年生まれの著者・酒井順子さんがWEBマガジン「ミモレ」で連載していたエッセイをまとめたもので、「若見せバブルが弾けつつある」「勝負事に負けても悔しくないのは感受性が鈍くなって、感情が摩耗しているから」「幸せだから安心して老けることができる」など随所で共感できます。
これから始まる50代に向けての予習のような形でも読めました。
酒井さんによると人生には三度の成人式があると。20歳で成人式を迎えたものの全くもって大人になった実感はなく、諸々の「不」の事態を経験した30歳を過ぎた頃、ようやく実感を伴う二度目の成人式を迎えることに。
これで終わりかと思っていたら、なんと50歳過ぎで三度目の成人式がやってくるらしいです。確かに、私も親が用意した振袖を着て20歳で成人式を迎えたものの、気持ち的には全く子供のまま。その後、仕事で大失敗をしたり大失恋をしてもがき苦しんだ後、30歳半ばあたりで大人になったような実感を。
そして、間もなく三度目の成人式が。まさに50代は変化のお年頃。多くの女性が更年期へ突入し閉経を迎えます。子供が庇護下から離れていくと同時に親が庇護下に入って来ることも。仕事は、ゴールを見据えた上での立ち位置をぼちぼち考えるようになってきて。
さすがに、多かれ少なかれ残っている若者気分から卒業せざるを得ないです。もう女としてチヤホヤなんてしてくれないし、甘えさせてくれる人もいないでしょうから。本当は、灰になるまで誰かにすがって生きていきたいのですが、50代のおばさんには難しそうです。
ここから先も間違いなく「老い」は進んでいきます。「いつまでも若い外見で」というプレッシャーからは解放されつつも「中身はずっと若いままで」という思考には囚われていきそうで。
とは言え、三度目の成人式を終えた真の大人だからこそ、自分で考えて好きなように動けばいいんです。アンチエイジング技術を頼って見た目の老いと闘い続けるのもよし、諦めてグレイヘアにするのもアリです。
酒井さんのように心身の老化を素直に受け入れ、その中でできることを模索するのだって素敵だと思います。私は、とりあえず「老い」に抗えるところまで抗いたいです。諦めたら、とことんまで落ちて行きそうな気がするので。見た目に自信を持ちポジティブに生きていくためにも可能な限りの若作りをしていきます。
あとエッセイとは別に付録としてある読者アンケートは、なかなかトリッキーな回答ばかりでリアル50代の可能性を感じられます。10代からトップギアで走り抜けて来た今の50代のパワーに圧倒されつつ「これでいいのかもね」とちょっと安心させてもらいました。
「性人生の晩年を生きる」という項目では、「人生であと何回セックスできるのだろう?」と改めて考えさせられましたし勉強にもなりました。なんでも50代の熟女に期待されている役割は『痴女』だそうで。いつまでも「愛されたい、求められたい」という受動的な欲求は、熟女が抱いても満たされず、相手をリードするくらいの気概が必要とのこと。
確かに、待っていても何も訪れないでしょうから、50代は攻めの姿勢で。まだまだそのくらいのパワーはありますからね。
おおくぼかよこ / ’71年、愛知県生まれ。千葉大学文学部文学科卒。’92年、幼なじみの光浦靖子と大学のお笑いサークルでコンビ「オアシズ」を結成。現在は「ゴゴスマ」(TBS系)をはじめ、数多くのバラエティ番組、情報番組などで活躍中。女性の本音や赤裸々トークで、女性たちから絶大な支持を得ている。
撮影/田頭拓人 取材/柏崎恵理 ※情報は2021年4月号掲載時のものです