【JJドラマ部】最後まで観たい2025年春ドラマBEST⑤【ネタバレあり】

『ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~』(テレ東)公式ホームページより

春ドラマがそろそろ中盤に差しかかる頃、ドラマオタクのコラムニスト小林久乃と元JJ編集長イマイズミが数ある作品の中からそれぞれ5本を厳選しました。前回の対談で予想しなかったドラマがいくつもランクインしましたが、皆さんのお気に入りはありますか?

【コラムニスト小林久乃が選んだ5本】
①続・続・最後から二番目の恋(月曜21時/フジテレビ系)
②対岸の家事~これが、私の生きる道!~(火曜22時/TBS系)
③ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~(金曜21時12分/テレ東系)
④しあわせは食べて寝て待て(火曜22時/NHK総合)
⑤波うららかに、めおと日和(木曜22時/フジテレビ系)

【元JJ編集長イマイズミが選んだ5本】
①続・続・最後から二番目の恋
②夫よ、死んでくれないか(土曜23時06分/テレ東系)
③ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~
④ダメマネ!-ダメなタレント、マネジメントします-(日曜22時30分/日本テレビ系)
⑤PJ ~航空救難団~(木曜21時/テレビ朝日系)

二人が選んだ1位は鎌倉を舞台にしたロマンチック&ホームコメディ

元JJ編集長イマイズミ(以下、イマ):2025年春ドラマもだいたい中盤になってきましたが、1位は二人とも『続・続・最後から二番目の恋』でしたね。テレビ局プロデューサー・吉野千明(小泉今日子)と鎌倉市役所で働く公務員・長倉和平(中井貴一)の二人が主役の、鎌倉を舞台にしたロマンチック&ホームコメディというお馴染みの内容ですが、やっぱり期待を超える面白さ!

コラムニスト小林久乃(以下、小林):私は、まずリアタイで一回観て、その後に録画したものを「このセリフ、いいなぁ」って堪能しながらもう一回観ています。

イマ:味わいつくしてますねー(笑)。前回の『続・最後から二番目の恋』(2014年/フジテレビ系)は豪華なフランスロケで始まりましたが、今回は予算の都合でしょうか、鎌倉ロケでスタート。

小林:海外なんか行かなくても、あの二人の掛け合いがあれば十分面白いってことですよ。

イマ:千明のメッシュっぽいグレイヘアが素敵ですよね。

小林:今シーズンから千明はビタミンカラーをファッションに取り入れてるんですよ。前回まではわりとベーシックカラーが中心だったので、ヘアスタイルに合わせているんだと思います。年を取ったからって地味にならないのがいい!

イマ:『続・最後から』では管理職研修を受けていましたが、今回はセカンドライフのセミナー。定年退職後のキャリア形成や年金の支給開始時期など、50代後半の会社員ならリアルに考えなきゃいけないことです。最近、会社の定年退職のお知らせを見ると、ほとんどが知ってる人なんですよね…。昔は「誰このおっさん?」って思ってたのに、もうすぐ自分がその「誰このおっさん?」になるのかって(笑)。

小林:千明が「アホ部長」って呼んでた上司も亡くなってましたが、お葬式も増えていく年代です。そういえば、「くーらちゃん」でおなじみの一条さんを演じていた織本順吉さんは2019年にお亡くなりになっているんですよね。(享年92歳)

イマ:その一条さんの一人娘・早田律子を石田ひかりが演じています。和平に天然っぽくアプローチしていくんですが、その困り顔がまた面白い。

小林:和平には「困りごと」が似合いますよね。そして、鎌倉市長の伊佐山良子(柴田理恵)から「鎌倉のために困ってほしい」と次期市長の立候補の打診をされてしまいます。

イマ:新キャストとしてもう一人、三浦友和が愛妻家の町医者・成瀬千次を演じています。役と同じ年齢の73歳なんですけど、びっくりするくらい若くないですか? 中井貴一より10歳も上ですよ。そんな吉野千明&成瀬千次、長倉和平&早田律子に加えて、和平の娘・えりなにも恋愛の気配が。

小林:あんなに幼かったえりながね…。それぞれの恋愛模様も見どころですが、家族の関係性、老いのこと、仕事をどう続けるかなど、リアルな問題に直面したときに登場人物からさらっと出てくるセリフに毎回心を打たれます。

イマ:第1話で和平が千明に言った「どんな形であれ、ずっと一緒に生きていくんでしょ、私とあなたは」は沁みたー。

小林:二人はただの友人でもないし、かといって恋人でもない関係だからこそ出た言葉ですよね。ああ、こんないいドラマが終わっちゃうことを想像すると、今から悲しくなってきます…。

イマ:いやいや、まだ半分ありますよ(笑)。そのうち『続・続・続・最後から二番目の恋』があるかもしれないし!

小林:続いて、二人がかぶったのは『ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~』です。自分が育てた女優に裏切られて、絶望のどん底にいたベテランマネージャーが街で偶然見つけた青年を芸能界へといざなうというストーリーですが、主役の松下由樹(吉川恵子役)の暴走っぷりが見どころです。

イマ:よくある深夜のドロドロ系ドラマかと思ってたんですけど、主演次第でこんなに面白くなるのかと。

小林:松下由樹の演技が毎回想像を超えてきますよね。「ばぶちゃーーーん!」って半狂乱になって拓人(野村康太)を探したり、練習と称してねっとりとしたキスをしたり…。

イマ:あまりにも怖いと、つい笑っちゃうことがこのドラマを観てわかりました(笑)。

小林『想い出にかわるまで』(1990年/TBS系)では姉の恋人を略奪する憎たらしい役を演じてたのに、最近は『G線上のあなたと私』(2019年/TBS系)の姑問題に悩む平凡な主婦みたいな「いい人役」が多かった松下由樹がついに本領発揮!

イマ:演技力が凄いから何でもできるんでしょうけど、こういうヒール役はハマりますよね。今後の展開で楽しみなのは、拓人の母親役にこれまたヒールが似合う山口紗弥加がキャスティングされていること。虎と竜の激突に期待してます!

高橋光臣の怪演が話題の夫婦サスペンスと今どきの育児ドラマがランクイン

小林:イマイズミさんは、前回のJJドラマ部連載では挙げていなかった『夫よ、死んでくれないか』が2位に入ってますね。

イマ:始まる前からタイトルでSNSがザワザワしていましたが、大学時代の同級生・甲本麻矢(安達祐実)、加賀美璃子(相武紗季)、榊友里香(磯山さやか)の3人が結婚によって奪われた幸せを取り戻すために奮闘するという内容で、観てみたらただのドロドロ系ドラマではないクオリティーの高さ。原作が、巧妙な仕掛けと圧倒的な筆力で定評のある丸山正樹の小説だから納得です。

小林:テレ東が「全夫が震えるシリーズ第三弾」と銘打ってますが、イマイズミさんはどんな気持ちで観てるんですか?

イマ:モラハラ夫・榊哲也役に塚本高史、束縛夫・加賀美弘毅役に高橋光臣、不倫夫・甲本光博役に竹財輝之助と全種類のイヤな夫が出てきますが、妻には「あなたは哲也に一番近い」と言われ、震えながら観ています(笑)。

小林:今クールのドラマで、松下由樹と張るぐらい暴走してるのが高橋光臣。この人もいい夫役が多かったからギャップが凄いですよね。

イマ:絶叫しながら頭を壁に打ちつけたり、妻の下着を床に並べてクローゼットに潜んでたりと、絶対にウッキウキで演じてますよね。

小林:麻矢の夫・光博は浮気発覚後に失踪したままなので、竹財輝之助の見せ場はまだ来てません。それにしても、竹財さん、テレ東ドラマで何回浮気してるんだろうか(笑)。

イマ:オファー来るたびに「またクズ男役か…」とか思ってるはず!

小林:でも、クズ男俳優として確固たる地位を築いたんだからそれはそれで凄いことですよ。グイグイ積極的に浮気するっていうより、流されてついしちゃったって感じがうまくハマってます。

イマ:璃子は浮気相手の子供を身ごもり、哲也の脅迫によって妻たち3人が仲間割れを始め、いよいよ袋小路に陥る展開に目が離せません。

小林:春ドラマの傾向だけど、『ジョフウ~女性に××××って必要ですか?』(火曜24時30分/テレ東系)、『子宮恋愛』(木曜24時59分/読売テレビ)、『年下童貞くんに翻弄されています』(木曜24時59分/MBS系)など、女性の欲望をストレートに出した内容が多いですね。

イマ:中でも『夫よ、死んでくれないか』はタイトルの破壊力がダントツです…。

小林:別れるのも面倒くさいし、殺すのも大変だし、『死んでくれないかなー』って思ってる妻たちの気持ちを代弁した名タイトルですね(笑)。

イマ:さて、小林さんが2位に挙げたのが『対岸の家事~これが、私の生きる道!』ですが、ある出来事から専業主婦になることを選んだ村上詩穂(多部未華子)が、働くママ・長野礼子(江口のりこ)や育休中のエリート官僚・中谷達也(ディーン・フジオカ)と出会い、交流していくというストーリー。

小林:「専業主婦」と「ワーキングママ」と「育休中のパパ」という三者三様の子育て事情は、独身の私が見てもわかりやすい。そして、どの生き方にも正解があるわけじゃなくて、それぞれが悩んだり困ったりしてることが並列で描かれているのがいいですね。

イマ:第3話で礼子が詩穂に子供を預けた対価としてお金を払おうとするんだけど、詩穂は受け取らない。払いたいって気持ちと受け取りたくないって気持ち、どっちもわかりますよね。うちだったら、そもそも怖くて預からないなーとか、家庭で話すきっかけにもなりました。

小林:礼子の会社での立場を見てると、身につまされる人は多いと思います。仕事できる人ほどモヤモヤが増えていくっていう矛盾が辛いですね…。イマイズミさんの会社はどうですか?

イマ:女性誌で働くママ社員も増えてきたので、お迎えがある人は17時まで働いてパッと帰ったり、撮影がなければ在宅勤務したりと、昔と比べてかなり柔軟な働き方ができるようになってきましたよ。制度はもちろん必要ですが、職場内の「慣れ」の部分が大切な気がします。

小林:夕方、撮影が終わって編集部に帰ってきて、そこから写真チェックやらなんやら始めて、気が付いたら翌日のロケに集合する時間が迫ってきて…みたいな働き方は難しくなってきてるんでしょうね。

イマ:今なら確実にブラック企業認定されます(笑)。

芸能界を舞台にしたお仕事ドラマと美味しそうな料理が魅力の癒し系ドラマに注目

イマ:私が4位に選んだのは『ダメマネ!-ダメなタレント、マネジメントします-』です。元・天才子役の神田川美和(川栄李奈)が冷徹ドS部長の無茶ぶりに翻弄されながら、崖っぷちタレントたちのために芸能界を駆け回るという内容ですが、最初はどう観ればいいのかわかりませんでした。

小林:ただのドタバタ系のお仕事ドラマでは終わらない感じが出てきましたね。

イマ:美和には子役を辞めざるを得ない過去があって、それが徐々に明らかになっていくミステリー要素が重要な軸になっているんですが、サプライズのキャストがなんとHey! Say! JUMPの山田涼介! スーパースター真田祐士という役ですが、SNSでは山田くんそのまんまという評判でした。

小林:4月にソロアルバムをリリースして全国ツアー真っ只中なのにドラマ出演って、まさにスーパースターの働きっぷりですね。

イマ:その真田には、美和と子役時代に何かあったっぽい伏線が張られています。同僚マネージャーの木村三太(千葉雄大)と美和の小競り合いや、第4部所属のタレントたちのコメディパートなど、お約束の部分もクセになってきました。

小林:美和をはじめ、『対岸の家事』の礼子や『なんで私が神説教』(土曜21時/日本テレビ系)の麗美静(広瀬アリス)など、今クールのドラマにはブチギレする女性が多いのが特徴ですね。

イマ:そんな中、小林さんは癒し系の『しあわせは食べて寝て待て』を4位にセレクト。膠原病を患った主人公が、引っ越した先の団地で「薬膳」と出会い、心身の健康を取り戻していくというストーリーですが、主演の桜井ユキ(麦巻さとこ役)がいいですよね。

小林:顔の印象から強めの性格の役が多いけど、今回は病弱な主人公を好演しています。私も最近体調を崩して実感したんですけど、パッと見だけでは病人ってわからない苦悩も伝ってきました。

イマ:大家の鈴さんを演じる加賀まりこさんも素敵ですよね。

小林:御年81歳とは思えないほど美しい! 『あさイチ』(月曜~金曜8時/NHK総合)でゲスト出演した時、進行をやってた副島(淳)くんがドギマギしてましたもん。

イマ:美しさに貫禄が加わってますからねー。「薬膳」って聞くとあまり食欲がわかなそうな印象だけど、このドラマの料理はどれも美味しそうです。

小林:フードスタイリストは飯島奈美さんが担当してるので、そこは抜かりないですね。『ディアマイベイビー』みたいなカロリーを消費するドラマを観た後に、これで養生したくなります(笑)。

5位は若者たちの熱血成長ストーリーと少女漫画みたいな昭和の純愛夫婦物語

イマ:私が5位に入れたのは『PJ ~航空救難団~』。航空自衛隊航空救難団に所属する救難員を育てる救難教育隊を舞台にした、教官と訓練生たちが織りなす感動の青春ストーリーですが、なんといっても主任教官・宇佐美誠司を演じる内野聖陽が素晴らしい!

小林『きのう何食べた?』(2019年/テレ東系)のケンジとは正反対の熱血キャラですよね。昔、演じていた『とんび』(2013年/TBS系)のお父さん(市川安男)を思い出しました。

イマ:訓練生たちも相当体を鍛えて臨んだと思うんですが、一番バキバキに仕上がってるのが内野聖陽。

小林:とにかく訓練シーンが過酷ですよね。腕立てをしてるところに「線状降水帯が発生しましたー」って言いながらホース噴射したり(笑)。

イマ:一般社会だとコンプライアンス的にアウトだけど、どんな条件でも人命救助できる隊員の育成が目的だから全部OK。

小林:私なら3分で辞めます(笑)。

イマ:このドラマは航空自衛隊の全面協力で制作されているので、基地やヘリコプターが全部本物。やっぱり迫力がありますね。

小林:私の地元・浜松にも航空自衛隊の基地があって、ブルーインパルスがよく訓練していましたよ。同級生には「お父さんが自衛隊員」という子もいて、わりと身近な存在だったのを思い出しました。

イマ:ストーリー自体にひねったところはないんですが、そこがまた没入できるポイント。暑苦しいけど茶目っ気もある宇佐美教官の熱血指導のもと、さまざまな試練に立ち向かっていく訓練生たちが成長していく姿を見ていると、毎回涙腺が決壊しまくりです。

小林:そして、私の5位は『波うららかに、めおと日和』です。交際ゼロ日で結婚することになった江端(旧姓 関谷)なつ美(芳根京子)と江端瀧昌(本田響矢)が、戸惑いながらも夫婦としての愛を育んでいくというハートフルコメディ。これはね、まさに私が小学生の時に読んでいた少女漫画の世界なんですよ!

イマ:このドラマ、見てるこっちが照れくさくなるんですが(笑)。

小林:どっちも恋愛経験がないから、全然進展しないんですけど、それがまたいい! 手をつなぐだけでどんだけ引っ張るのかと。

イマ:親が勝手に決めた相手と結婚して、妻として夫に尽くす人生って、令和の今だと考えられない状況ですよね。

小林:私たちの時代は「30までに結婚しよう!」って膨大な時間とお金を費やして相手を探してたけど、誰かが見つけてくれるなんて楽でいいなーって思っちゃいました(笑)。

イマ:いやいや、でもどんなのがくるかわからないんですよ?

小林:本田響矢くんが来たらラッキーだよね(笑)。よくぞ、ああいう眉毛のきりっとした昭和顔イケメンをキャスティングしてくれました。

イマ:原作者も瀧昌には軍服が似合う人を望んでいたようですが、ぴったりでしたね。『虎に翼』(2024年/NHK総合)では梅子(平岩紙)の三男・光三郎役を演じて話題になっていました。

小林:本田くんもいいんですが、やっぱり主役を演じる芳根京子がいいんですよ。ちょっと抜けたところのある役がハマってると思います。

イマ:そういえば、最近彼女が主演した『まどか26歳、研修医やってます』(2025年/TBS系)も褒めてましたよね。

小林:番宣で『ぽかぽか』(月曜~金曜11時50分/フジテレビ系)に出ていた時に「もう一人の自分が芳根京子を見てるように意識したら演技が変わってきた」って言ってたんですよ。役選びも合ってるし、本当にいい演技だなと。

イマ:さて、今回選んだ5本ですが、小林さんは女性が主人公のドラマばっかりですね。

小林:そもそも今クールは男性が主役のドラマが少ないんですよね。でも、今回ランキングには入れませんでしたが、間宮祥太朗主演の『イグナイト -法の無法者-』(金曜22時/TBS系)はだんだん面白くなってきました。

イマ:日韓合作の『魔物』(金曜23時15分/テレビ朝日系)も源凍也(塩野瑛久)が本性を出してきてからぐっと引き込まれるように。

小林:最終回までにランキングが変わるかもしれませんね。

イマ:『続・続・最後から二番目の恋』は不動の1位です!

小林:ですね!

小林久乃(こばやし・ひさの)コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp

元JJ編集長イマイズミ 女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。1クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。

イラスト/lala nitta