「子なしVS子あり」の分断って本当?30代ポッドキャスト配信者が語るリアル
ともに30代の会社員女性二人が、働き方や夫婦関係、育児などさまざまな「女の選択」をテーマに配信を行う人気ポッドキャスト番組『となりの芝生はソーブルー』。番組には、リスナーからの悩み相談もたくさん届くそう。既婚・子どもあり、なしの二人で話し合うからこそ見えてきた問題解決の方法を伺いました。
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「子なしと子ありの対立」って現実にあるの?
──ポッドキャストの番組タイトルは『となりの芝生はソーブルー』。なんとも絶妙なネーミングです。
月岡ツキさん(以下、月岡) 30代前後は、仕事、結婚、出産など、多くの人がいろいろな選択をする世代だからこそ、選ばなかった、選べなかった「となりの芝生」がめちゃくちゃ青く見える年代だと思います。そこであえて隣の芝生にお邪魔して、属性が違うもの同士で会話する実験的な試みができないかなと。となりの芝生って横から見ているだけだと青く見えるけど、よくよく見ると、お互いいろいろあることがわかるのではないか? という思いを込めました。
──既婚・絶賛子育て中のよしのさんと、既婚で現時点では出産の予定のない“DINKs(仮)”を自称する月岡ツキさん。これまでお二人が番組内で話してきたテーマで「同じ事象でも子どもの有無で見えている世界が違った」と気づかされるようなエピソードはありましたか?
月岡 私たちの番組はそもそも「子なし、子ありの二人が語るポッドキャスト」という立ち位置でスタートしたので、そういったエピソードがたくさん出てくるんじゃないかと思っていたのですが、意外と私とよしのちゃんの見ている世界は同じ景色だったんだよね。
よしのさん(以下、よしの) そうなんです。もちろん、子どもがいるかどうかで普段のライフスタイルは変わるので「へぇ、そうなんだ」という気づきはお互いにありましたが、「意見の断絶」みたいなことはほとんどないのが意外な発見でした。私自身も子どもを産んだら、子なしの友達とは話が合わなくなってしまうのかな?なんて思っていたので。意外とそうでもない現実に驚いています。
月岡 女性は30代になると「子ありと子なしで話が合わなくなる」とか「同じ属性の友達だけで集まるようになる」と、世間でよく言われていることにおびえる反面、一方で「本当にそうなんだっけ?」との懐疑的な思いもあって。話が合うからと、同じ属性の人とばかり話していると、やはり世間のイメージ通りの分断が進む気がします。それにはあらがっていこうとレジスタンス的意味も込めて始めた番組でもあります。
よしの 「ポッドキャストをやっていたから、お互いのことを理解できた」というのは大きかった気がします。「遠慮なく意見をぶつけてみたら、意外と悩みの根幹は一緒だった」「個人や私たち夫婦の問題だと思っていたけれど、実は社会全体の問題だったかも」ということに、配信を通して気が付くことができたんです。
月岡 それは絶対にあるよね。街中で、どうにも気持ちの収拾がつかなくなったようで、イスを蹴ったり泣きわめいたりする子を見かけても、「よしのちゃんもこの前話していたし、大人がどうにもできない事情もあるよね」という心境で見守れるようになったのは、間違いなく番組をやっていたおかげ。「外食中に子どもに動画を見せるのって今は普通なの?」なんて、気になっていたことも、実情をよしのちゃんに聞いてみてはじめて、育児中の親の「大変!」ポイントがわかったことも。今では子育て中のリスナーさんから、「なんでそんなに子育て中の女性の気持ちがわかるんですか?」言ってもらえるくらいには、となりの芝生の解像度が上がってきた気がします。もちろんすべてが理解できているというわけではないですが。
よしの それはつっきーの著書を読んでいても伝わってくるよね。『産む気もないのに生理かよ!』なんてタイトルは衝撃的だけれど、中身は、今の世の中で生きること、子どもを育てることへの迷いと葛藤と、優しさであふれているから。
「義母」より「実母」問題に悩むという声が多くて…
──番組を続けるなかで、リスナーに人気のテーマはどんなものですか?
月岡 私自身の「実母とそりの合わない問題」について、これまで何度も話してきたせいもあってか、「実は私も実母との関係に悩んでいます」という相談も多いんです。
よしの 義母の愚痴なんかよりもずっと実母との悩みのほうが多いのが意外だったよね。家族として大切だし、リスペクトもあるのだけれど、実母とは価値観が何もかもが合わない……と悩んでいる女性が、世の中には意外と多いんだなって驚きました。
月岡 義理の両親だったら悪者にしやすいけれど、実の親はそうも簡単に割り切れないから厄介なんだろうね。「年老いた親に優しくしなきゃいけない」「大事にしなきゃいけない」ことは頭ではわかってはいても、「旦那さんのご飯はきちんと作っているの?」「一人くらい子どもを産んでおけばいいのに」と言われるたびに、やはりどうにも腹が立つ。実母問題は反響も大きいですし、熱量の高いお便りをたくさんいただきます。
実はVERYの愛読者です。思い入れがありすぎる!
──月岡さんの著書のなかでは『VERY』についても言及されていて驚きました。以前から読んでくださっていたとか?
月岡 20代前半の独身のころからずっと愛読していました。今は変わりましたが、以前の雑誌コンセプトは、たしか「基盤のある女性は、強く、優しく、美しい」。当時の私は、悩みが多く、自分の基盤が地盤沈下したグラグラ状態だと感じていて、当時の『VERY』の世界観からはあまりにかけ離れた生活を送っていたのですが、とにかく誌面から目が離せない「となりの芝生」的な存在でした。育児中の家族の24時間を公開する巻頭連載『私の新しい時間割り』が毎月気になって、昨年出版した著書のなかでも熱く語ってしまったほど……。
──番組のリスナーはVERY世代と重なりますが、お便りで届く相談には、どんなテーマのものが多いのでしょう?
よしの 「夫に私の不満を伝えられない」「話し合いができない」といった夫婦関係や家庭運営についての相談が多いですね。「夫が資格の勉強をしているのですがその間、子どもの世話をするのは私。家族のためだと言うけれど、私にはそんな時間はないので不平等を感じています」といった思いを吐露してくれた方もいました。
月岡 そのときは、「うーん。『家族のため』と言っているけれど、妻に負担を押し付けている時点ですでにその論理は破綻しているのでは?」とお答えしました。二人の間に子どもが生まれた時点で、「理由をつけて育児をしない」という選択肢はそもそもないので、そこを自分だけで自由に選べるものとして捉えるのがそもそも間違っている、今からでも話し合いが必要、と話しました。
よしの ちなみに、わが家の場合は「ワンオペ時給」という制度を取り入れています。夫婦のどちらかが一時的に育児できず、相手がワンオペになる場合、対価を支払う仕組みです。たとえば、夫が私に子どもを託して飲みに行ったり仕事をしたりするときには、私に時給1,000円を払うんです。逆の場合は、もちろん私が夫に払います。
月岡 時給を払っているから遊びに行く罪悪感も軽減されるし、時給をもらっているほうもお小遣いになるからモヤモヤが少ない。お金の単位で負担を可視化できるのはよい方法かも。
よしの これは収入や勤務時間がほぼ同じくらいの私たち夫婦だからうまくいっている話かもしれなくて、すべての家庭に応用できるとは思えないけれど、こういうやり方もあるよと伝えられたらいいなと。私は疑問や不満があったとき黙って飲み込むのは苦手なタイプ。夫とは仲がいいですが、これまでの結婚生活のなかで何度もぶつかり合い、一緒に倒れては起き上がって、今のスタイルに落ち着きました。夫婦のことや育児のことで悩んで、それでもがまんしている人に、「この悩み、私のワガママじゃないかも」と気付いてもらえたらうれしいです。
PROFILE
月岡ツキさん(写真・右)
1993年生まれ、長野県出身。現在は長野県で夫と二人暮らし。都内のIT関連会社で週に3日、正社員として働きつつ、ライターやコラムニストとしても活躍。2024年12月には初の著書『産む気もないのに生理かよ!』を出版。
よしのさん(写真・左)
1993年生まれ、埼玉県出身。都内のIT関連会社でデザイナーとして週5日、時短勤務中。会社員の夫と2歳の長男との3人暮らし。月岡ツキさんと二人でポッドキャスト番組『となりの芝生はソーブルー』をほぼ毎週水曜に配信中。ポッドキャストはApplePodcastやSpotifyなど、主要リスニングサービスで配信。
単行本『産む気もないのに生理かよ!』(飛鳥新社)
「母になりたい」とは思えない。でも、「母にならない」とファイナルアンサーもできない……。令和に「母」をやる難しさ、「母は強し」の呪い、「子どもを産まない選択」への不安・ゆらぎ・憤り。ポッドキャスト『となりの芝生はソーブルー』で人気のエッセイスト・月岡ツキさんがさまざまな側面から「産む産まない問題」を綴る、子どもが今いる人もいない人も共感必至のエッセイ。作中には“VERYと「ゴリラ」の時間割り”として本誌も登場!
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取材・文/小嶋美樹 撮影/古本麻由未