三吉彩花さん「作品を通して“家族”というコンプレックスに向き合いました」【映画『本心』インタビュー】
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近年、数々の話題作に出演し注目を集めている、女優・モデルの三吉彩花さん。11月8日に公開を迎えた映画『本心』では、過去のトラウマから人に触れられないというコンプレックスを抱える三好彩花役を好演しています。歳を重ねるごとにさらに魅力が増している彼女に、映画についてお話をお伺いしました。
平野啓一郎氏の傑作小説を映画化!映画『本心』
石井裕也さんが監督・脚本を務め、主演の池松壮亮さんとタッグを組んだ本作品。
「大事な話があるの」――そう言い残して急逝した母(田中裕子さん)が、実は“自由死”を選んでいた。幸せそうに見えた母は、なぜ自ら死を望んでいたのか…。どうしても母の本心が知りたい息子の朔也(池松壮亮さん)は、最先端のAI技術を駆使して仮想空間に亡くなった人を蘇らせるVF(ヴァーチャル・フィギュア)を開発した野崎(妻夫木聡さん)に「母を作ってほしい」と依頼する。テクノロジーは、人の心を再現できるのか――。ただ、母の本当の心を知りたかっただけなのに、朔也は自分の心や尊厳さえも見失っていく。
三吉さんが演じるのは、朔也の母が生前親しかった友人。過去のトラウマから他人に触れられないというコンプレックスを持っている。
「三好彩花という役に出逢えたのは、まさに運命そのもの」
――役名が本名と1文字違いというところで、初めて配役の話をいただいたときのお気持ちはいかがでしたか?
まず、どういうこと?と驚きました(笑)。お話をいただいてから台本と一緒に原作も読んだのですが、名前のインパクトもそうですけど、運命を感じざるを得ないような役だなと。キャラクター自体もすごい魅力的ですし、映画の内容も私にとって今とても必要な役だなとご縁を感じました。
当時、私自身「自分の本心ってなんだっけ」と考える時期だったんです。今思えば迷子になっていたところがあったのかな。だからこそ、この撮影を通して自分の本心を知りたいという想いもありました。役だけではなく自分自身に向き合うタイミングなんじゃないかなと。
この映画は、急逝したお母さんをAIで蘇らせて、その本心を探求していく主人公の葛藤が描かれています。家族に対してコンプレックスや難しさを感じているという点では、私と通ずるものがあるなと思いました。
撮影に入る前、家族と深く向き合う機会があったのですが、それを経てとてもポジティブになったというか。自分が取った行動がとても意味のあるものだったなと、一種の転機になりました。自分がどういう風に今後の人生を生きていきたいか、という道が少しは開けた気がしますね。
「役を演じながら、自分自身と向き合うのは苦しかった」
――実際に三好彩花を演じてみていかがでしたか?
三好は、人に触れられないというコンプレックスを抱えながら、過去の自分の人生と向き合っているキャラクター。触れられないぶん、演技をするにも行動に制限が多かったので、どうやって彼女の想いや本心を表現するのか、という部分がとても難しかったですね。
そんな彼女の役と並行して私自身の本心を探求する作業でもあったので、ある種苦しさもありました。決してすごく楽しかった!といえるような時間ではなかったように思いますが、それでも無駄ではなかった。やっぱり、成し遂げられてよかった、という感覚が強いです。
とはいえ、撮影が終わっても作品を実際に見るまではどこか不安もあったのですが、試写会で完成品を見て、すごく素晴らしい作品になったなって少しだけ安心したというか。自分がやってきたことが無駄じゃなかったんだなとそこで思えました。
「乗り越えた先にはきっと意味がある。だから壁からは逃げたくない」
――三好がコンプレックスを抱えているように、ご自身にとって乗り越えるのに苦労したことはありますか。
そうですね。やっぱり幼少期の記憶や環境ってその人を形成する上では本当に大きい影響を与えていると思うので、そういう意味ではいちばん高い壁なんじゃないかな、というぐらい私にとって家族との向き合いというのは難しい問題でした。
もちろん家族だけじゃなく、ラクに超えられる壁って用意されていないんだな、というのはいつも感じています。常に大きい苦労から小さい苦労までいろいろとつきまとってきますけど、それを放棄して逃げることってとても簡単なことじゃないですか。でも、そこに当たって砕けろくらいの気持ちで向き合ってみることに意味があると思うんです。たとえそれがいい結果にならなかったとしても。
だから、常に何に意味があるのか考えながら試練を乗り越えていきたいと思っていますね。
映画『本心』公開情報
全国公開中
出演:池松壮亮
三吉彩花 水上恒司 仲野太賀 / 田中 泯 綾野 剛 / 妻夫木 聡 田中裕子
原作:平野啓一郎「本心」(文春文庫 / コルク)
監督・脚本:石井裕也
音楽:Inyoung Park 河野丈洋
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
制作プロダクション:RIKIプロジェクト
©2024 映画『本心』製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/honshin/
公式X・Instagram:@honshin_movie
撮影/木村敦(Ajoite) 取材/所優里 編集・文/平賀鈴菜(CLASSY.編集部)