女優・北原佐和子さん「すきま時間を価値あるものに」と選んだ【准看護師】との二足のわらじ

多様性の時代において、ひとつの職業に限らず複数の職業を両立させることは珍しくなくなっています。今回は、自分らしく輝くため、どちらの仕事も欠かすことなく全力で取り組む、二足のわらじを履きこなす女性たちに注目し、取材してきました。

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准看護師+女優
北原佐和子さん 60歳・東京都在住

隙間時間を価値あるものへ。
その思いから始まった女優と福祉の両立

現在、准看護師として認知医療に携わる北原佐和子さん。女優を続けながら介護の道に進まれたきっかけ、それは隙間時間へのストレスからでした。

「女優という仕事は不規則で、忙しい時期とそうでない時期が極端に分かれています。その空いた期間が嫌で、その時間を活用したいという気持ちが常にあったんです」。

そこで、自分磨きに繋がることができればと考え様々な習い事をしてみたものの、心の穴が塞がることはありませんでした。

「そんな状態のまま時はすぎていき、30代半ばで、ふと思い出した人がいました。それは大雨の中で偶然出会った四肢麻痺の男性のこと。どんな状況下でも自らの足で立ち、生きていくという覚悟を感じた逞しい姿が脳裏に蘇り、『今、私は自分の足で立てている?』と疑問が湧いてきたんです。16歳で芸能界に入りましたが、これまでの成功は多くのサポートによるもの。自分の力で何かを成し遂げたい! そう考えるようになったんです」。

そうして辿り着いた「福祉に携わりたい」という思いから、43歳でヘルパー2級の資格を取得。女優と介護の二足のわらじを履いた歩みが始まったのです。

取得後、最初に勤務した高齢者施設では、知識も経験もない中で利用者さんとの接し方に戸惑った北原さん。「何をすればいいか分からず、横に座りお喋りする日々。でも、時間の経過と共に積極的に会話することで、その人のしたいことが見えてくるようになってきたんです。散歩に行きたがらない人が外に興味を持つことを会話の中から探し、それにトライして成功した時…すごく嬉しかった! こういうことが介護の醍醐味なんじゃないかって思えるようになってきたんです」。

50代で介護福祉士とケアマネージャーの資格を取得。その後、研修で「多職種連携」を学んだ北原さん。「それぞれの専門職が情報共有し、治療やケアの方向性を確認し、協力する。重要性は理解できるものの、医療についての連携イメージがわかず…そこで実際の現場を見るため、訪問診療に同行させてもらうことに。その時、医師から『医療を知るため准看護学校に行ってみては?』と助言をもらい、受験を決意。なんと合格したんです!」。

53歳から准看護学校に通い、2年後に卒業。看護師として勤務を開始したのです。「女優と介護の仕事。両立が大変な時期もありました。それでもどちらも辞めたくなかった。私にとって介護の仕事も、今は女優同様に生きがいなんです」。医療現場には勉強しなければいけないことがたくさん転がっていると話す北原さん。年齢を重ねた今、モットーは「とにかく考えるよりも行動!」。来年には三足目のわらじを履かれているかもしれません。

<編集後記>介護施設イベントに初参加のカメラマンと私。感想は?

取材・撮影当日、北原さんが参加する行事に私とカメラマンも参加させていただきました。こういったイベントは初参加の2人の、終了後の感想は、「楽しかったね〜」でした! クイズも参加者の興味をひく題材がピックアップされ、歌詞に関する問題では北原さんの美声が響き渡りました。利用者さんたちの笑顔も満開でした!(ライター上原亜希子)

撮影/西 あかり ヘア・メーク/小川幸美 取材/上原亜希子 ※情報は2024年10月号掲載時のものです。

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