【漢字】「扁桃=へんとう」じゃありません!実は読めない漢字3選|CLASSY.

前回に引き続き、「フルーツ」を

前回に引き続き、「フルーツ」を表す漢字の特集です。ただし、果実と野菜の分類は曖昧な部分があります。たとえば「メロン」は農林水産省の定義では野菜ですので、このような「果実的野菜」まで広く「フルーツ」とします。

 

1.「甘蕉」

最初は、「甘蕉」です。何と読む

最初は、「甘蕉」です。何と読むか分かりますか? もちろん、当て字です。「甘」の字が付いていますから、「あまい」のはわかりますね(たいていのフルーツは甘いものですが)。 後ろに付いている「蕉」は「焦(あせ)る」の字に似ていますが、「くさかんむり」が付いています。そうだ、江戸時代の俳人「松尾芭蕉」の「蕉」だ、と気がついた方は、これがヒントにもなっています。辞書には「熱帯地方で栽培されるバショウ科の多年草。また、その果実。葉はバショウに似る。房状になる果実は湾曲した紡錘(ボウスイ)形で、多くは黄色に熟す

後半の「房状になる」以降で、分かったでしょうか。正解は「バナナ」でした。松尾芭蕉の俳号「芭蕉」の由来は、江戸深川の彼の家に植えられた植物の「芭蕉(バショウ)」から来ていることはよく知られていると思いますが、上の語釈にあるように、「バショウ」と「バナナ」は形状がよく似ているのも道理で、同じ「バショウ科」の仲間なんですね。因みに、「バナナ」は農林水産省の定義では、「果実的野菜」に該当します。

2.「扁桃」

次は、「扁桃」です。何と読むか

次は、「扁桃」です。何と読むかおわかりですか? そのままの音読みではなく、ここでは当て字のフルーツ名として、読んでみてください。辞書には「葉・花・実がモモに似るバラ科の落葉高木。その種子の仁を食用・薬用にする」とあります。

正解は「アーモンド」でした。実はナッツ類もフルーツです。中国から日本に伝わったこの「アーモンド」は、中国で「扁桃」の字があてられていました。「扁」(平べったい)、「桃」(果実)でしょうか。ですから、そのまま「扁桃(ヘントウ)」と読んでも、決して間違いではありません。また、のどの奥の「扁桃腺」の「扁桃」も、その形状から考えて、ここから来ているのでしょう。

3.「酪梨」

最後は、一番の難問「酪梨」です

最後は、一番の難問「酪梨」です。おなじみの「梨」の字が含まれていますが、とらわれると正解に行き着かないかもしれません。こちらも当て字ですので、辞書の語釈から想像してください。「果樹として栽培するウルシ科の常緑高果樹として熱帯各地で栽培されるクスノキ科の常緑高木。また、その果実。洋梨形・楕円(ダエン)形などの濃緑色の果実は脂肪に富み、『森のバター』と言われる」

最後の「森のバター」で分かったと思います。正解は「アボカド」です(実は私は、どうしても「アボガド」と言ってしまいます)。「酪梨」の「酪」は「牛や羊の乳から作った食品や飲料」つまり「乳製品」を表します。「梨」は上の語釈にあったように「洋梨」に似た形を意味しているわけですね。なお、「アボカド」は「鰐梨」と書くこともあります。こちらは、「鰐(ワニ)の皮」のように見えないこともない果皮の形状から来ています。また、この「アボカド」、野菜と考えていた方も多いでしょうが、農林水産省の定義では、「野菜的果実」に分類されます。

いかがでしたか? 前回は、太宰治の「桜桃忌(オウトウキ)」の話題を書きましたが、偶然にも同じ週に「桜桃(さくらんぼ)」のいただきものがありました。まさに、「ルビーの輝き!」。「さくらんぼ狩り」のシーズンにも入りましたので、早速ご賞味になった方も多いことでしょう。というわけで今回はフルーツに関する漢字を取り上げました。では、今回はこのへんで。

《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新字源」(角川書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「難読漢字辞典」(三省堂)

文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)