小籔千豊さん 「親子で一緒にゲームをやると、めちゃくちゃええ面があったんやな!」
STORYライターの東 理恵です。
4月号の「『ゲーム禁止の子育て』だなんて、もったいなすぎる!」(P.230~)では、
誌面では書ききれなかった“ためになる話”がたくさんありました!
そこで前後編、2回に分けてお伝えします。
まず前編は、めっちゃ面白かった小籔千豊さんの話。〈ゲーム反対派だった僕が、ゲームにハマって変わった価値観〉からご紹介します。
小籔千豊さん(49歳)
1973年生まれ。大阪府出身。「ビリジアン」解散後、2006年より吉本新喜劇の座長を16年務めた。現在はMCや俳優業の傍ら、ジェニーハイのドラマー、「フォートナイト下手くそおじさん」YouTuberとしても幅広く活躍中。娘19歳と息子12歳の父。
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お母さん方は「ゲームで子どもの言葉遣いが悪くなる」とよく言います。
子どもが友達とオンラインゲームに熱中していると「オラオラ~!」とか「やっちまえ!」とか、興奮して言ってしまう。それがいけないと。
でも僕に言わせれば「いや、ゲームやなかっても、あなたのお子さんは外で見えへんとこで同じこと、言うてるで」と。
家でオンラインでゲームをしていると、子どもたちの会話の様子がよくわかります。そこで汚い言葉を言うてへん子は、外でも言わへんし、言うてる子は、例えば教室の隅で友達と集まっている時にも言うとる。親が見えへんところでは言うとる。だからゲームのせいにせんといてほしいと思います。
家で上流階級の人が話すような言葉を使っている子が、ゲームの時だけ「オラ!」言うてんのは想像つかないですよね。でも子どもたちの成長は、お互いに地域の友達に影響されている部分もあることを理解してほしいです。僕も子どもの頃はそうでしたし、親の前での言葉遣いと、友達同士でドッジボールをやっている時では言葉遣いは違います。
オンラインゲームには、ネットリテラシーも重要ですよね。もちろん危険な部分はあります。
ですが、ゲームをしなくても、この先、メタバースをはじめネットでのいろいろなつながりは、僕らが予測もしない方向にどんどん進んでゆくと思います。
今、子どもと一緒にオンラインゲームをしていると、
「この前、こんな悪いこと言ってくる人おってん」
「こんなことやってくる人おってん、知らん人なんやけど……」
などと子どもから教えてくれることがあるんです。
そんな時に親として、即座にネットリテラシーを伝えることができます。
「顔見えへんからいうて、悪いことしてくる人は、現実社会でもおかしなことをするで。ゲームの中で悪いヤツは、表社会でいい人に見せようとしても絶対バレる。仕事でもうまいこといかへんし、人間関係もギクシャクするから、あげく運も悪くなるねん。だからネットの中でも、いい人じゃないと損するで」。
ゲームをやりながら、そうやって子どもに教えることができます。
以前、ゲームをしていなかった頃は、オンラインの相手のことで子どもと話し合うことはなかったわけですから。もし、子どもたちだけでオンラインゲームをやらせっぱなしにしておいたら、良くない方向に行ってしまうことがあるのかもしれません。
だからといって、うちの子がええ人になるのが確定しているわけではないのですが、自分がその一言を添えられたか添えられてないか、で将来的に後悔したくないと感じています。一緒にゲームをやっているからこそ言えることです。
また、たまに僕の主催でゲームの「親子大会」を行っているのですが、ゲームが良いか悪いかは別として、親子でやると「めちゃくちゃええ面があったんやな!」と改めて実感しました。
親子が同じ目標に向かって大会に出ること自体、他の競技ではあまりないですよね。ただ、ゲームならそれができるんです。しかも子どものほうが上手い。いつもは親のほうが立場が上なのに、ゲームなら子どもが優位で、一緒に目指すことができる。
大会に出場してくださる方々からも、うれしい話が届きます。
「普段は何も一緒にしてくれない息子と、〈親子大会のために一緒に練習しよう!〉といって取り組むことができて、大会までの過程がいい思い出になりました」
仕事の事情で親子離れ離れに暮らすシングルファーザーのお子さんからは、
「週6日、夜には絶対一緒に『フォートナイト』をやるんです。遠く離れていても、会話しながらすることで、少し寂しくなくなりました」
といった感想もいただきました。
そこでは毎回、試合中に親子の助け合いが見られるんですよね。親にアイテムを譲ったり、倒れている親のアバターを子どものアバターが背負って走ったり……。僕のYouTubeチャンネルではその大会の模様を配信しているのですが、一生懸命試合に取り組んでいる親子の様子を見て、めっちゃ泣いているお母さんたちもいます。解説をしている僕たちも熱が入ります。
こんな親子愛の姿を見られるのは、ゲームならではでないでしょうか。それをみんなで共有し、感動していますね。
僕も今では、自分のe-スポーツチーム【チームヒメーン】を持ち、YouTubeでは“フォートナイト下手くそおじさん”としてゲーム配信をするまでになりました。
ゲームをしてから、〈今まではいろんなことを大人の感覚だけで決めていたな〉と反省しました。子どもの目線に立たず、一方的に何もわからんまま「あかん」と言っていました。
ちなみに、妻は一切ゲームをしません。「ゲーム、やってみ」と勧めたこともありますが、
「せなあかんこと、いっぱいあるからええわ」
断られました……。
“ゲーム育児”を実践中の3児のママが語る「ゲームで子どもに教えられること」
取材/東 理恵
STORYライター・東 理恵
47歳。大阪府出身。3人姉妹の末っ子に生まれる。高校時代はソフトボール部。関西のテレビ局やラジオ局で構成作家→ISETANを経て、ライターに。STORYでは主に【JuniorSTORY】のページを担当する。マンガとアイスクリームが大好き。小6の双子(娘と息子)のママ。
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