【柿澤勇人さんインタビュー】大河ドラマでの実朝役も話題、3月より名作ミュージカル『ジキル&ハイド』3代目に就任!
昨年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の源実朝役で注目を集めた柿澤勇人さん。3月からスタートするミュージカル『ジキル&ハイド』で石丸幹二さんとともにWキャストを務める、柿澤さんへのスペシャルインタビューが実現。前編では難役に挑む今回の作品についての話をメインにお伺いしました。
――初代は鹿賀丈史さん、2代目に石丸幹二さんというミュージカル界の大御所に次ぎ、3代目を務めることになった『ジキル&ハイド』。今回が最後となる石丸さんとWキャストを務めることが決まったときの率直な気持ちはいかがでしたか?
学生の頃に鹿賀さんの公演を、劇団四季を退団した後に石丸さんの公演を観ました。日本が誇る大スターたちが演じる役だと思って観ていましたし、まさかこんな若造の僕がやれるとは思っていなかったので正直、驚きました。若輩者なりに一生懸命がむしゃらに稽古をして、皆さんに刺激を受けながら石丸さんの素敵なところや良いところをたくさん盗ませてもらって、新しいジキルとハイドを作っていければと思っています。
――柿澤さんが感じている『ジキル&ハイド』の面白さや魅力はどんなところでしょう?
やはり二役できることですね。映像であれば特殊メークの技術も進化しているし、声も加工できるので別人になるのはそう難しくないと思うんですけど、舞台の上では一人の人間が瞬時に切り替えないといけない。おそらく声も変えなければいけなくて、普段とは違う声を出すので喉に負担もかかりますし、もしかしたらつぶれちゃうかもしれない。稽古ではある意味、極限までやってみて、そこから引き算していかなきゃいけないかなって予想しています。「善と悪」を描く話ですけど、善とは何なのか悪って何なのか…もしかしたら表裏一体でひっくり返るかもしれない。ハイドに関しては人も殺しますけど、猟奇的な殺人ではなく、自分が思い描く世界の邪魔をする人間を排除するためだったり、成敗することだったりする。それは果たして悪なのか。悪の部分に関しては何がいちばん嫌なやり方なのか、僕はとことんまでやるつもりです。ミュージカルだからといってキレイとかカッコいいということだけではないですし。どうしてもミュージカルっていうと男性のメインキャラクターは貴公子や王子なんて言われがちですけど、僕はまったく違うと思っているので。その一方で善の部分であるジキルのときは、いかに正義感を持って信念を持って演じられるか。その真逆なところも見どころになるんじゃないかな。
――『鎌倉殿の13人』の源実朝役で大注目されましたが、劇団四季出身でもあり、数多くのミュージカル作品に出演しています。そんな柿澤さんにとって、ミュージカルはどんな思いのあるお仕事でしょうか。
僕の人生を振り返ると、高校1年のときに劇団四季の『ライオンキング』を観たことで、それまでサッカーしかしてなかった人間が一幕で度肝を抜かれて。終演後には「これやりたい!」ってなったんです。人のすべてとは言えないけれど、何かを変える力を持っているのがミュージカルかなと思ってますね。芝居だけでなく、音楽の力が加わりうまく融合したときには何倍もの表現になることがある。すべての作品がそうなるとは限らないけれど、自分がやる限りはそんなふうにフィットさせたいなと常に思っています。
――サッカー少年だった柿澤さんをそこまで惹きつけた、ミュージカルの魅力って何だと思いますか?
ひとつは日常じゃない所に連れて行ってくれること。自分もお客様も。日常で歌い出すなんてことはあまりないですからね。普段生きていて嫌なことや逆に嬉しいことがあっても、外に出しづらいじゃないですか。たとえばすっごいムカつくことがあっても人前じゃ叫びたくても叫べないし、逆にすっごい嬉しくて狂喜乱舞したくても抑えるのが僕らの社会の日常なので。でもミュージカルだと感情移入して見てもらえて、普段いろんなことがあったしても劇場で一緒に発散できる。そういう魅力があると思います。
――ちなみに、プライベートでも歌うことは好きですか?
大好きですね。プライベートで歌うのがいちばん好きです(笑)。ミュージカルの曲は芝居のなかで役として歌うことですし、観にいらしていただく方への責任が伴いますし。ミュージカルの歌唱で楽しいと思ったことは一回もないかな。音程も外しちゃいけないとかね。だからプライベートで行くカラオケが一番好きです。こっちがお金を払って、好きなように歌ってますから(笑)。音を外そうが何しようが、どんな歌い方をしてもいいから楽しい(笑)。
――カラオケで歌う曲はなんですか?
何でも歌いますよ。アニソンから演歌、それこそミュージカルの『ライオンキング』まで。カラオケボックスにも行きますし、お立ち台があるようなスナックでも歌います。他のお客さんがいても平気ですね。なんなら巻き込んじゃいます(笑)。
――必ず歌う曲や十八番はなんですか?
『宇宙刑事ギャバン』。これを歌うと、他のお客さんも含めてみんなが一つになるんですよね(笑)。『宇宙刑事ギャバン』がどんな話なのかは全然わからないんですけどね(笑)。劇団四季にいる僕の親友の持ち歌なんですが、もともとカラオケが苦手だった僕に伝授してくれて引き継いだ感じです。その他は…「歌って」って言われると聴かせる系の曲も歌うんですけど、あまりウケないです(笑)。ラブソングとかバラード系のカッコいい曲は恥ずかしくなっちゃいますね。
――今回、『ジキル&ハイド』の公演で個人的に楽しみにしていることはありますか?
メインのキャストがWキャストなので、日々配役が変わるんです。何通りあるのかわからないけど同じフォーメーションでやることはそんなにないと思うので、その日によって空気感が変わるのは楽しみです。同じ劇団四季出身のキャストや『鎌倉殿の13人』で共演したキャストもいますし。笹本玲奈ちゃんは先日まで共演していましたが初めましての方も半分くらいいるので、どんな芝居になるのか。そんな出会いも楽しみですね。
柿澤勇人
‘87年10月12日生まれ 神奈川県出身 血液型B型●高1のときに観た劇団四季『ライオンキング』に衝撃を受け、俳優を志す。高校卒業後、劇団四季の養成所に入所、同年デビュー。’09年、同劇団を退団。最近の主なミュージカル主演作は、『フランケンシュタイン』『ブラッド・ブラザーズ』『東京ラブストーリー』など。映画やドラマでも活躍し、ドラマ『真犯人フラグ』『群青領域』、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』などに出演。
ミュージカル『ジキル&ハイド』
‘01年、鹿賀丈史主演によって日本初演され再演を繰り返し、’12年からは石丸幹二を迎え再々演を経た傑作ミュージカル。‘23年版では石丸ジキルが有終の美を飾り、W主演として新たに柿澤勇人が難役に挑戦。医師であり科学者であるヘンリー・ジキルが自ら人体実験に挑み、一つの体に宿った二つの魂、ジキルとハイドの死闘が始まる。出演/石丸幹二/柿澤勇人、笹本玲奈/真彩希帆、Dream Ami/桜井玲香、石井一孝/上川一哉(以上Wキャスト)、畠中 洋、佐藤 誓、栗原英雄 ほか。演出/山田和也 上演台本/髙平哲郎 【東京】3月11日(土)~28日(火)東京国際フォーラム ホールC。以降、愛知、山形、大阪にて公演。
撮影/平井敬冶 ヘアメーク/松田蓉子 スタイリング/杉浦 優 取材・文/駿河良美 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)