子どもに怒ってばかりは誰のせい!?【尾木ママ連載vol.15】
第15回は気づけばいつも息子に怒っているというママのお悩みについて伺いました。
前回はインスタのフォロワー数で友達を決めているという子どもについてのお悩み
S.Kさん(43歳 10歳男子、15歳女子)の悩み
先日、「そしてバトンは渡された」という映画を子ども達と一緒に観ていました。そこに出てくる母親は子どもの実の母親ではないのですが、いつも楽しそうな笑顔で接しています。その映画を観ながら、息子が「ママはぼくにこんな笑顔してくれないよね。」と言われ、とてもショックでした。確かに、最近は常に眉間にシワを寄せながら怒っていると自分でも思います。でもそれは息子が学校から帰ってきて、やることもやらずにテレビを見ているからです。私が仕事で疲れて帰ってきたらリビングは荒れ放題、宿題もやっていない、ランドセルも放置という状態。勉強もせずテストもいつもひどい点数です。そう言われた時にも「ママだって怒りたくて怒ってるわけじゃない!怒らせてるのはアナタでしょ!!」とまた怒ってしまいました。息子が幼い頃は私ももっと笑っていました。存在そのものが愛おしく何も求めていなかったので。でもその頃の記憶は息子にはあまりないとしたら、息子にとってママは「いつも怒っている人」になってしまいます。怒る前に数を数えるといいと聞いたことがありますが、いざとなると頭に血が上って数を数える余裕なんてありません。このままでは親子関係が悪化するのではとこの先が思いやられます。
尾木ママ’sAnswer
この言葉はショックだったことでしょうね。怒ってばかりというのも、とくに元気な男の子のお母さんたちは思い当たる節があるお悩みではないでしょうか。ショックを受けながらも、過去の自分と比べたり、今後の親子関係を心配されたりと、冷静に問題意識をもって考えておられるなんて、素敵なお母さんだと思います。
15歳のお姉ちゃんがいるという家族構成から想像すると、第一子が女の子ですから、同性としてわかりあえる部分もあって、お姉ちゃんの時にはそんなにガミガミ怒ったりするほどは苦労せずに通過できたのかもしれません。でも男の子って得体が知れない(笑)。「なんなのこの子は?」と戸惑うことも多い。このお母さんにとって初めての男の子の子育てという点も悩まれる要因かもしれませんね。個人差が大きいのはもちろんですが、異性では行動パターンも脳のはたらきも異なり、いわゆる“男性脳”は、“女性脳”に比べて共感力が弱いとも言われています。それで、お母さんにとってはショッキングなことを言ってきたりするのかもしれません。そしてもう一つは、お子さんは思春期に入ってきたということ。10歳というといわゆる「プレ思春期」と言って、思春期の入口にあたりますので、親に対するちょっとした反発心から、そのような言葉が出てきたのかもしれませんが、これも成長の証なのです。ですから、一番心配されている、「親子関係の悪化」まで心配する必要はありませんよ。
お仕事から疲れて帰宅して、この状況を見ると怒りたくなるのも当然ですけれど、子どもは色々なことを急に、大人が望む通りにできるようになるわけではないというのが大前提にあります。特に男の子は、もちろん個人差はありますが、親に何も言われなくても自分の身の回りのことをしっかりできるようになるのは中学生の終わりくらいの子が多いかもしれません。そして子どもの成長と共に親の子どもに対する要求や期待値もあがります。でも期待に反して子どもができていない状況を目の当たりにすると親は不満を感じ、それが高じると怒ってしまうんですよね。基本的に「怒る」というのは怒る側だけがすっきりする自己満足でしかありませんから、子どもにとっていい方法とは言えません。
解決策はひとつです。子どものタイプやタイミング、成長の段階に合わせて、少しずつできるように「ジリツ」を促すことです。「ジリツ」は「自立(他者の力を受けず自分で行動すること)」「自律(自分を律し自分でできるようになること)」の二つの意味合いを指します。
学校から帰宅したら、何をやればいいか、自分で考えさせてみましょう。例えば①宿題をやる。②親にプリントを渡すという事をできるようになることを目標にする場合、そのためにどんな工夫ができるか、親子で一緒に考えてみましょう。もし、宿題のスケジュールを作ることにしたのなら、親は「好きな教科からやるとエンジンがかかりやすく効率的にできるらしいよ」などとアドバイスしてみる。また、親に渡すプリントを置く場所を決めることにしたのであれば、「寝る前に次の日の準備をすれば、プリントをランドセルから出し忘れないよね」と伝える―というように、子どもが自分でできるように環境を整え、手助けをしてあげる。少しでもできたら声に出して褒める。そうして一歩ずつステップアップできるように応援してあげてください。できなかった時にも感情的に「怒る」のではなく、今後どうすればできるようになるのか、まず子ども自身で考えさせ、それから一緒に考えるといいと思います。
中学校の教師時代、整理整頓について口うるさく指導していましたら、「そこにはどんな意味があるんですか?ぼくは散らかっていても何がどこにあるかわかってます。」と言う生徒がいました。なかなか手強い生徒が現われたなと思って今でも記憶に残っています。成績優秀な生徒でしたから、彼には理論的に「昔の人は真夜中に襲われてもすぐに武器がさっと取れるように常に整えていた。それが生きる術でもある。」という歴史的背景から話をしたら、彼は整理整頓をするようになったのです。このように、その子に合ったアプローチの仕方を工夫するというのも方法のひとつです。
子どもは成長と共にできることも増えていきますが、その分、親の要求も高まっていきますから、できていないことに対する親の苛立ちというのも増えていきます。それが自分の怒りに直結しているということをお母さん自身が自覚しておくことも大切です。「怒らせているのはアナタでしょ!」と言いたくなる気持ちもよくわかりますが、「アナタのせいだけではなく、ここまでできるでしょと勝手に期待している私のせいでもあるよね。」くらいに思っていた方がお母さんも気持ちが楽になると思いますよ。子どもは親の期待に合わせて成長してくれるわけではありません。成長は形として見えにくいですから、長い目で、待つ姿勢で見守ってあげてほしいです。お父さんの子どもの頃の話を聞いてみるのもいいかもしれませんね。こんなショッキングな言葉を言っていても高校生くらいになると「お袋」なんて言って、いたわる気持ちが強くなるのも男の子。頼もしく成長してくれるので楽しみですよ。
取材/小仲志帆
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