「閉経マネジメント」って?40代の早いうちからできること
女性の体は更年期(45〜55歳)に入って以降、50歳前後の閉経を境にめまぐるしく変わると同時にいろんな不調が顕在化。それが「更年期症状」となってあらわれたり、重い人は「更年期障害」まで行く人も。STORY読者なら「どうやったら最小限の不調にとどめられるんだろう」「更年期になっても過ぎてもキレイは諦めたくない」と考える人も多いはず。そこで今回、産婦人科医の吉形玲美先生が書かれた著書『40代から始めよう! 閉経マネジメント』で「女性ホルモンと骨密度が美を大きく左右する⁉」という衝撃的な事実を知ったライター・柏崎恵理は先生が婦人科専門医として診療する浜松町ハマサイトクリニックへ突撃取材!ご自身も40代で光り輝く白肌の持ち主である先生を目の前にしてクラクラしながらも、アンチエイジングの秘訣もなんとか探ろうと奮闘してきました。
今回お話をお聞きしたのは、『40代から始めよう!閉経マネジメント』の著者 吉形玲美先生
医学博士、日本産婦人科学会産婦人科専門医。現在浜松町ハマサイトクリニック婦人科専門医、東京女子医大病院産婦人科非常勤講師。『40代から始めよう!閉経マネジメント』(講談社)の著者。産婦人科医として医療の最前線に立つ傍ら、女性医療・更年期医療の臨床研究にも数多く携わる。2002年より東京女子医科大学病院婦人科の更年期専門外来を担当。更年期症状で悩む女性たちを20年にわたって診療し続けている。そして趣味の社交ダンスでエイジレスな美貌をキープ!
(先生、ご本に載っているお写真より実物の方が断然キレイ、と思いながら)STORYで長年更年期取材をしてきて、実際に会員の皆さんからも更年期になる前に気をつけなきゃいけないこと、準備することが知りたいという声をいただいています。
実は私STORYを長年愛読させていただいてるんですよ。クリニックの患者さんの中には「更年期のクスリ」に出演された方もいらっしゃって、「取材を受ける前に一度経過を復習したい」と言われて2人で診療内容を、おさらいしたこともあるんです(笑)。私たち、プロにとっても非常に興味深い連載内容で感心しています。
えっ、どなただろう?でも、もともとご縁があったということですね。今回先生が書かれた「閉経マネジメント」を拝読しまして、なんて画期的な著書なんだろうと感動しました。まず「閉経マネジメント」という言葉の分かりやすさと新しさ。今年の流行語大賞にノミネートされてもいいのでは?と思うくらいです。ここで改めて閉経マネジメント、というワードの解説をお願いできますか?
私は20年ほど更年期外来に携わってきて患者さんの不必要な恐怖心や足りない知識というものを診療の中でずっと感じていたんです。その上で更年期前の不調を訴える人が3割近くいらっしゃることも本を書くきっかけになりました。まだ30代後半、40歳そこそこなのにホルモンバランスの乱れを感じて不安になる方が多いことで、早いうちから閉経を見据えてマネジメントをしていくのが大事だなと思ったんです。
ズバリ、閉経マネジメントとは?
①女性ホルモンのコントロール
②骨の強度の維持
この2つを意識することですね。①のホルモンコントロールに関しては色々な場面でよく言われていますね。20代~30代の性成熟期に活発だったエストロゲンが、40代に入ると量のアップダウンがはじまり、人によりまるでジェットコースターに乗ってガンガン振り回されているような状態になって心身ともに不調をきたすわけですが、実は②の骨密度・骨強度に関して触れているドクターが少なくて、これは私が世に訴えなければ!と奮起して本を書いたわけです。
へえ〜!女性ホルモンと骨強度って関係があるのですね!これは初めて知りました。40代以降は骨粗鬆症に注意しなければならないという知識はありましたが、まさか、エストロゲンがそこまで骨強度に深く関わっているなんて・・・。
なぜ、閉経マネジメントが必要なのか?
では閉経マネジメントすることによって、ホルモンコントロールができたり、骨強度を高めたりできるということでしょうか?
そうなんです。女性ホルモンのコントロールは更年期症状の軽減、うつ病の予防になりますし、骨の強度は今後の人生に影響します。実は骨って外見にすごく影響を与えるんです。骨密度の低下が始まるのは概ね40代半ば以降です。それが最初に可視化されるのは、常に露出している顔。皮膚の下の土台、骨、特に頬骨、顎骨に如実に表れ、顔の印象が大きく異なっていきます。
えっ!顔が?こ、怖い!でもたしかに、肌を支える骨が崩れたら、骨に乗っている肌だけ一生懸命お手入れしてもダメですよね。加齢を感じるのは皮膚のたるみが原因かと思ってましたが、それも顔の土台、内側の骨の劣化が根本的な原因だったとは。ショックです。
そうなんですよ。うわべだけがんばっても意味がないんです(笑)。肌の土台である骨が縮めばその努力も水の泡。顔全体の印象は「骨密度が決めている」と言っても過言ではないでしょう。
ガーン!そんなのリフトアップや整形以前の問題じゃないですか・・・。骨がそんなに顔の劣化に影響あるなんて。もっと早く知りたかったです。
骨密度の低下はまず顔に表れるそう…
閉経マネジメントには「いつ」「何を」するかが大事!
では、具体的にはどうはじめていけばいいんでしょうか?また、もう〇歳だから手遅れ、なんてこともありますか?
早すぎることも遅すぎることもありませんよ。年齢や症状によって「いつ」「何を」するかステージに分けて適切に対処することが大切ですから、まずは自分の年齢に対して月経がどのような状態できているか、把握することからはじめましょう。
こちらのチャートは吉形先生の著書『40代からはじめよう!閉経マネジメント』のチャートを参照し、STORY編集部で作成したものです。この記事ではSTORY世代に関わってきそうな「プレマネジメント」、「ライトマネジメント」、「アクティブマネジメント」について触れています。
更年期に備えて準備開始!プレマネジメント期
プレマネジメント期は40代前半、月経が順調にきている人が対象になります。とくに更年期症状に悩まされているわけではなくても、早めのケアが今後の健康に大きな影響を与えます。
実はクリニックに見える患者さんの中でかなり多くて、更年期症状と思って受診する全体の1/3の方が更年期に入る前の不調を感じている方々なんです。ホルモン的に閉経を迎える間際の人とは違う環境にあるので、違うアプローチをしてあげないと良くなりません。しかも、1回の採血や画像診断で原因がハッキリするわけではないのでとても診療が難しい段階です。でも、この段階でホルモンバランスの乱れによって自分のどの部分に症状が出やすいかを知って早めにケアし始めることでその後の対策にも生きてきます。
【プレ期のマネジメント①】まずは基礎体温をつけ、月経周期・排卵タイミングを知ろう
プレマネジメント期に限った話ではなく、20代30代のうちから自分の基礎体温、月経状況をきちんと知っておくことは大事。最近はアプリなど便利なものも増えましたが、吉形先生曰く、それでもやっぱり紙のノートに記録するのがおススメだそう。そうすると長いスパンで揺らぎ度合いをチェックすることができます。例えば月経周期に合わせて不調があるならホルモンマネジメント的なアプローチをするべきだし、周期に関係なく不調が出るのであればメンタル的な問題が主体だと考えられます。基礎体温表と、そこにあわせ体調メモをつけることで患者さんの意識も高まるとのこと。先生ご自身も、20代の頃から毎日基礎体温を測っていて、定期的に卵巣機能検査(ホルモン検査)も行っているそうです。「基礎体温表」と検索すればpdfでダウンロードできるものも出てきますね。
【プレ期のマネジメント②】サプリで更年期症状の予防
プレマネジメント期はまだ本格的な更年期症状は出てこない時期なので、まずは植物性女性ホルモンとも言われるエクオールのサプリメントを飲むことでエストロゲンの急激な減少に備えましょう。大豆イソフラボンから作られるエクオールは化学構造式がエストロゲンによく似ていることから、摂取すると女性ホルモンの代替作用があると言われています。飲むことで40代以降の体の土壌を豊かに耕してくれるイメージですね。
〈商品写真〉吉形先生監修のエクオールサプリメント。エクオールの腸内での吸収を助ける成分・ラクトビオン酸も日本ではじめて配合。エクオールN +ラクトビオン酸 90粒入り(1日3粒/約30日分)6,480円(株式会社アドバンスト・メディカル・ケア)
【プレ期のマネジメント③】骨の強さを調べてみよう
意外と知られていなけいけれど、女性ホルモンと同じ急カーブを描いて低下していくのが骨密度です。閉経の平均年齢51~52歳を境に急低下!その前のプレマネジメント期から定期的な骨密度の検査をはじめることはオススメです。骨粗しょう症の検査としてDXA法、MD法、超音波法、などがあります。自分の骨の状況を知って日常生活から意識を高めておくことが大事です。
プレの段階で準備したほうがいいことがてんこ盛りなんですね。早め早めのケア、初動が肝心ということでしょうか。
そうなんです!閉経マネジメントには「ファーストステップ」が大事なんです。転ばぬ先の杖、じゃないですけど、まだ本格的な不調が訪れる前、心にも体にも余裕があるうちにできることはやっておく、それが更年期症状をソフトランディングさせる決め手になります。
美しさにかげりが出てきたらライトマネジメント
ライトマネジメントは40代後半~50代前半になり月経不順が始まってきた人が対象です。この時期は、美の守り神であるエストロゲンの減少によって、美容系のトラブルも続々と発生し、自律神経も乱れ始め、なんだかモヤモヤする時期です。実際に、ホルモン検査を定期的に受けると、体に起こる不調を客観的に見ることができるかもしれません。
【ライト期のマネジメント①】自律神経を整える
閉経前後は自律神経が乱れやすい時期。というのも、どんな女性もだいたい50歳で使命を終える卵巣が機能の限界を迎えますが、その一方でそれを感知していない脳(視床下部)は「エストロゲンが出ないのは卵巣への刺激が足りないからだ」と誤って判断し、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促すホルモンをさらに大量に投下。このドタバタによって自律神経が混乱してしまうというわけです。その解消にはヨガやマッサージなど自分にあったリラックス法を見つけていくのがおススメです。また鍼灸も有効と言われています。
また、更年期症状が出たら、なるべく自然の中、例えば芝生の上や土の上をウォーキングするのがオススメ。交感神経と副交感神経のスイッチの切り替えをうまく出来るようにご自分で切り替えスイッチを見つけて習慣化してください。
先生、ちなみに更年期症状の重い軽いっていうのは結局のところ、何が関連してくるんですか?
一概には言えないんですが、その人の置かれている環境と気質ですね。神経質で真面目な人は症状を気にしやすいから更年期症状に気づきやすいと言うことはあります。また同じような状況でも2タイプあって、仕事がきつすぎて鬱っぽくなったり職場でイライラする人もいれば逆に仕事の忙しさが充実感となり体調の悪さを感じなかった人もいます。 あまり気にならないように仕事の他にも趣味や打ち込めるものを好きなものをいくつか作って仕事、家庭以外の居場所をもち紛らわすと言うのも1つの手ですね。
【ライト期のマネジメント②】ホルモン検査を受けてみる
自分の不調を客観的に捉えたい方には、ホルモン検査を受けることをおススメします。このホルモン検査というのは、女性ホルモン(エストロゲン)とあわせFSHと言われる卵胞刺激ホルモン値を測るものなのですが、更年期になり女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減ると、視床下部がもっとエストロゲンを出そうとし、卵胞刺激ホルモンが大量に分泌されます。その状態になるとFSH値がぐっと上昇するので、自分の不調を客観的に捉えられるようになります。ただ、ホルモンの値は閉経をむかえるまで揺らいでいるのでたった1回の検査では判断するのは避けた方がいいとのこと。
【ライト期のマネジメント③】骨強度の維持に注力を
まずは現状の骨密度を維持するために、食べ物から補ってみましょう。カルシウム(例・干しエビ大さじ1杯分)、ビタミンD(例・サケ一切れ)、ビタミンK(例・ほうれん草1/4束、納豆1パック)が豊富な食事を意識することがおススメです。特にビタミンDが骨密度のカギ。サプリの併用も有効です。
また、プレマネジメント期で紹介した、エクオールサプリはライト時期も継続して飲み続けることがおススメ。美肌効果、抜け毛予防、髪質改善に効果が確認されています。
心身への重い不調が続くならアクティブマネジメント
アクティブマネジメントは40代後半~50代前半で、閉経後5年未満、且つ、更年期症状がある方が対象です。閉経は月経が来なくなって1年が経過し、結果的に月経を卒業したと確認できたところで、その1年前からカウントします。
【アクティブ期のマネジメント①】不調に合わせてホルモン補充療法(HRT)も
皮膚に貼るパッチや、塗るタイプのジェル、錠剤、様々なホルモン補充療法(HRT)があります。あまり使用している人はいないのかもしれませんが、実施した人は「調子が良くなった!」という人が多い印象。更年期障害が産婦人科で認められると、保険が適用されるので、更年期症状にお困りの方は是非、一度検討されることをおススメします。
【アクティブ期のマネジメント②】骨の強度を維持
プレ、ライト同様に適度な運動、適切な食事、サプリに加えて、ホルモン補充治療法(HRT)などを活用しながら、骨が壊れるスピードを抑える(骨吸収の抑制)薬などを投与することも視野に入れて。また、定期的に骨密度検査や骨代謝マーカーなどを調べておくのもオススメ。更年期の終わりと共に揺らぎは卒業するけど、血管の老化、骨の老化現象と言うのはずっと続くからずっと意識してケアするべきですね。
骨はケアしがいがあります。骨は常に新陳代謝を繰り返し新しく作りかえられるため食事や運動、ケアによってちゃんと育ってくれるのでいつスタートしても育てがいがあるんです。骨年齢=美容年齢、と言ってもいいくらいなんですよ。
そうなんですね!骨は刺激を与えると育つと聞きますし、とりあえず駅でもエスカレーターではなく階段を使います! ところで先生、アクティブマネジメント期にはホルモン補充療(HRT)も有効だということでしたが、ホルモン補充を美容目的で行ってもいいんでしょうか?また、そういう患者さんはいらっしゃいますか?
美容目的で行う方はうちのクリニックにはあんまりいらっしゃらないですし、更年期症状が全くないと保険診療外になってしまうんですが、何らかの更年期症状があるようなら治療の範囲に入ります。40代前半でも月経不順があったり、夜中に目が覚める、やる気がない、汗が出てきたなどのお話があったりして、医師の診療にて更年期症状の診断がつけば治療ができます。ただ安全なスタート時点には決まりがあって、閉経から10年程度経っていると血管炎症を起こす可能性が高いのでおすすめできません。
何事も早く知っておくことが大事
最近は高校生にも女性ホルモンセミナーを開いています。月経のメカニズムやピルの活用法を知り、骨密度も、早くから意識してケアすることが大事。卵子は生まれた時から数が決まっていて毎月どんどん減っていく一方だと言うことや、エストロゲンの低下に伴って骨密度も減るとことは若いうちから知って生活していくか否かは、40代以降大きな差が出ますから。
もっと早くに知っておけばよかった!それに、STORY世代的には更年期、閉経と聞くと「女として終わる」と言うイメージですごく不安になる人が多いんです。
閉経は卵巣の働きが終了すると言うことなので、確かに妊娠はできなくなりますが、妊娠出産=女である証というわけではありませんよね。むしろ更年期後、ホルモンのアップダウンに左右されなくなった時期こそすがすがしく、モヤモヤや月経痛など、いろんなことから解放されて女性としても人としても人生を謳歌できるはず。旅行に行ってもいつでも温泉やプールに入れたり(笑)、おしゃれを楽しめたり好きなように運動もできます。60代70代の女性は生き生きと元気でしょう?人生100年時代そこからが本番と言っても過言ではありません。更年期の不調でいらっしゃる患者さんが最初はものすごくお話が長いんです(笑)。それが診療を続けていくうちに皆さん調子が良くなるとお話がどんどん短くなる。短くなっていくとそろそろ卒業なんだなぁと思います。 それに実際更年期が来る前のプレ時期にちゃんとマネジメントをしておくと更年期時代もらくちんに過ごせます。転ばぬ先の杖として初動が肝心!そうすれば穏やかな更年期とその後の楽しい人生後半が待ってますよ。45歳から55歳の10年間を「失われた10年」にしないためにもプレマネジメントをしっかりしてくださいね。
撮影/杉本大希 取材/柏崎恵理
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