二階堂ふみさん・特別インタビュー「女だからこうなんだ、と思う必要なんてない」
公演中の舞台『鎌塚氏、羽を伸ばす』をはじめ、多方面で活躍しつつ、アクティビストとして自らの意見をしっかりと表明する――今の日本では稀有な存在とも言える、二階堂ふみさん。誰にでも分け隔てなく、丁寧で優しくて。本当に強い人はこういう人なんだな、と腹落ちした取材でした。
自分は危うい生き物であるということを、自覚していたい
“攻撃に攻撃は重ねない。自分の感情のたづなは、自分で取るようにしたい”
20代前半の頃は、自分と違う考えには線を引いていました。精神的にも年齢的にも未熟だったから、相手がそのつもりでなくても攻められていると感じて、攻撃的な姿勢で強く見せようとしたり。でも年齢を重ねるにつれて、人の考えはどんどん変わるし、大事なこともそれぞれ違うことが分かってきました。今は流したり、忘れたり、逃げる強さも必要だなと。自分と違う意見や差別などに直面したときの対応は一概にコレという答えがあるわけではないから難しいけれど、少なくとも自分が加害者にならないことを意識しています。以前本を読んで、人は環境やメンタル状態、余裕の有無によって考え方も人に対する行動も全く変わるものだと知りました。危うい生き物だと、まずは自覚することが大事だと思ったんです。自分は絶対に差別しないとか、加害者にならないという考えが怖い。空気を読んだり、統制のとれた行動ができるのは日本人の良さではあるけれど、日本にいると〝みんな違う〞ということに気付きにくいですよね。先日、初めて海外の作品に参加したのですが、言葉も文化も異なる環境ではまず、お互いを認めるところから始まるんです。そんな経験もあり、違うことに腹を立てるのではなくそれを認めてどう交わるか、感情のたづなを自分で持って人とどう向き合うのか、と考えることは増えました。まだ模索中ですが、攻撃ではない方向で人と人が交わっていけるといいなと思っています。
「女だからこうなんだ」と思う必要なんてない
社会の在り方も変わってきて、女性が活躍する機会が増え、これまで声を挙げられなかった人たちが声を挙げやすくなるのはいいことだと思っています。でも女性と男性を分けたいわけではなくて。逆差別も性差別以外の差別もあるから、今まで見ないようにしていたものにきちんと向き合い、物事を多角的に見られる柔軟性は備えておきたい。身体的に女性であることは、自分が選んだわけではなく持って生まれたもの。女性であることで不条理な出来事に出くわしても、「自分が女だから」と卑下する必要はないと思います。相手と同じ土俵に立たず、むしろもっと上から俯瞰で捉えていきたいと考えています。
PROFILE
1994年生まれ。沖縄県出身。2009年、映画『ガマの油』でスクリーンデビュー。以来、映画『ヒミズ』、『翔んで埼玉』、『人間失格 太宰治と3人の女たち』NHK大河ドラマ『西郷どん』、TBS『プロミス・シンデレラ』など数多くの作品に出演。2020年には、NHK連続テレビ小説『エール』でヒロインを演じ、同年の「第71回NHK紅白歌合戦」では紅組司会を務めた。現在は、舞台『鎌塚氏、羽を伸ばす』に出演中。
舞台『鎌塚氏、羽を伸ばす』
ヒロインとして再登場、大好きなシリーズです
シリーズ2度目の出演となる、舞台『鎌塚氏、羽を伸ばす』。演じる〝綿小路チタル〟は、ミステリー好きのキャラクターなのですが、私自身も小学生の頃から探偵ものが好きで赤川次郎シリーズを愛読していたので共通点を感じています。『鎌塚氏、羽を伸ばす』8月は、富山、愛知、島根、岩手、新潟、大阪で公演予定。
【衣装】ジャケット¥115,500(forte_forte/コロネット)オーバーオール¥23,100(Lee/エドウイン・カスタマーサービス)タンクトップ¥7,700(ENOF/ZOZOカスタマーセンター)スムースブラ¥7,500(TW/LYDIA)〈左手人差し指〉ボールリング¥33,000シルバーリング¥27,500(ともにLORO)その他リング、ピアス、ネックレスはすべて二階堂さん私物
撮影/YUJI TAKEUCHI(BALLPARK) ヘアメーク/足立真利子 スタイリング/柳田真樹 取材/坂本結香 再構成/Bravoworks.Inc