女優・松本若菜さん「同世代に対する妬みのような感情があった20代を、抜けたきっかけを告白」
「ミステリと言う勿れ」、「やんごとなき一族」…話題のドラマに印象的な役柄で出演し、30代からのブレイクと話題になっている松本若菜さん。20代の頃のこと、様々な現場で心がけていること、今の気持ち…上の世代から教えてもらって助けられたことを、今度は下の世代に伝えたい――そんな想いで、インタビューに真摯に答えてくれました。
同世代に対する妬みのような感情があった20代
上京して1年間は事務所主宰のワークショップで芝居の基礎を学びながら、バイト生活を送っていました。初オーディションもバイト帰りに受けたので、周りは服装もヘアメークもきちんとしているなか、私は素の状態で参加(笑)。でも、その飾らない部分を面白がってくださって合格し、デビューが決定しました。とはいえその後のオーディションにはなかなか受からず、不合格が続くと緊張してまた不合格…という負のスパイラルに…。
20代を振り返ると、コンスタントにお仕事はいただいてきたけれど、こんなはずじゃなかったなと現実を突きつけられることもあって。活躍する同世代を羨ましく見たり、妬みに近い想いは心にありましたね。経験を重ねるうちに、そう簡単には理想の俳優像になれない現実が見えてきたし、自分の芝居の未熟さを思い知ることも増えて…。20代後半は現実と理想の差のバランスが上手く取れずに思い悩む日々が続きました。
32.3歳からやっと、感情のコントロールができるように
自分が思い描いたものと現実がかけ離れ、どんどん荒んでいった20代後半。転機が訪れたのは27歳のとき。所属していた事務所の解散が決まり、今の事務所に移籍したことで、デビュー以来経験してこなかった役柄や作品に挑戦するようになり、より目指す女優像が明確になったんです。羨ましく見ていた人たちへの考え方がガラリと変わったのもこの頃。それまでは自分が落ちたオーディションに受かった役者に対して悔しい気持ちしかなかったのですが、この表情上手いな、とか、私だったらこうするかもな、と嫌味なく思えるようになったのは大きな変化でした。年齢からなのか、仕事の幅が広がったからなのか未だに分からないけれど、そう捉えられるようになり気持ちも楽になったし、30歳を過ぎたあたりからようやく、自分の感情をコントロールしながら芝居に真っ直ぐに向き合えるようになってきました。もやもやしていた20代の頃、共演していた椎名桔平さんに、自分がこのままこの世界で上手く生きていけるのか心配で、と相談したことがあるんです。そのときに椎名さんから「10年頑張ってごらん」とアドバイスをいただいて。椎名さんご自身もちょうど10年目に出演した作品でキャリアアップできたと教えてくださって、以来〝10年続けること〞も目標のひとつになっていました。だから、10年の節目に第39回ヨコハマ映画祭助演女優賞をいただいたときは心から嬉しかった!キレイ事じゃなく、ひとりでは受賞できなかったなと実感したんです。賞を取りたくて芝居をしてきたわけではなかったけれど、自分の芝居を評価してもらえたという事実は計り知れないパワーになり、その後のキャリアに大きな影響を与える出来事にもなりました。
松本さんのMY WELLBEING
リフレッシュになるのは愛猫・もずくとの時間
もずくと暮らすようになり、家にいる楽しみが倍増。とにかく家が大好きなので、インドアで完結できるものを趣味にしています。消しゴムハンコもそのひとつで、消しゴムはダース買い(笑)。最近はコーヒーメーカーも新調して、居心地のいい空間が着々と完成へ近づいています。
PROFILE・松本若菜さん
1984年生まれ。鳥取県出身。2007年俳優デビュー。2017年には、映画『愚行録』で第39回ヨコハマ映画祭助演女優賞を受賞した。以来、Netflix『金魚妻』、フジテレビ『ミステリと言う勿れ』など数多くの作品に出演。最近ではフジテレビ『やんごとなき一族』の深山美保子役がSNSでも話題になるなど老若男女に大人気。7月7日からは主演を務めるテレビ東京『復讐の未亡人』がスタート。待機作に映画『マリッジカウンセラー』(9月16日公開)がある。
撮影/YUJI TAKEUCHI(BALLPARK) ヘアメーク/木部明美〈PEACE MONKEY〉 スタイリング/後藤仁子 取材/坂本結香 再構成/Bravoworks.Inc