Mart読者世代である30~40代が人に言いづらい体のお悩みについて、産婦人科医の高尾美穂先生が優しくアドバイス!第9回の前半は、子宮脱についてです。
教えてくれたのは
高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案す る一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っている。
【相談テーマ】
相談者:Fさん(42歳)
神奈川県在住
11歳・7歳の母
歯科医
子宮脱は放っておかず、腟運動や手術を検討してみて
Fさん:5年前、当時2歳だった次女を抱っこしながら重い荷物を持って階段を駆け上ったことをきっかけに、子宮脱を起こしてしまいました。以来、違和感があるときは入浴時に自分で押し込んだりしている状況です。
高尾先生:受診はしましたか?
Fさん:はい。産婦人科で腟運動をするように言われましたが、面倒でなかなかできていません。重い荷物を持つことも避けるように言われましたが、主婦をしていて重い荷物を持たない暮らしも難しくて……。
高尾先生:放っておいても改善はしないので、まずは骨盤底筋の運動、あまり改善しないようであれば手術のどちらかでの対応が必要ですね。手術といっても体の外側から子宮をつり上げるという表面的なものなので、体への負担はそれほど重くはありません。すぐに何とかしたいということであれば、選択肢に入れていいと思いますよ。
Fさん:手術をすれば完治すると考えてよいのでしょうか?
高尾先生:場合によっては再発することもあるので、その際は再手術になることもあります。
Fさん:実は祖母も子宮脱で、昔「歩いていると下着がすれて痛い」と言っていたのを覚えています。私の子宮脱は遺伝なのでしょうか?
高尾先生:子宮脱の最大のリスク要因は経腟分娩であり、遺伝ではありません。いきみの時間が長い、鉗子(かんし)分娩・吸引分娩などといった器具を使った分娩、赤ちゃんが大きいなどの理由で、骨盤底筋が脆弱になることが原因です。
後々困らないよう、日常生活で取り入れられる腟の運動を
Fさん:骨盤底筋が弱ると尿漏れの原因になると聞いたことがあります。今のところ尿漏れはないのですが、今後そういったリスクもあるのでしょうか?
高尾先生:骨盤底筋が弱ったら必ず子宮脱と尿漏れになるとは限りませんが、年齢が高くなってから発症するリスクはあります。そういう意味で、Fさんもできる範囲で腟のトレーニングをしておくといいですよ。
Fさん:やっぱりやったほうがいいんですね……。
高尾先生:トレーニングが面倒だということでしたが、わざわざそのための時間をとらなくても大丈夫。例えば、電車に乗っているときにお尻をキュッと締めるとか、座っているときも背筋を正してお腹を引っ込めて骨盤前傾姿勢をとること、さらに膝頭を寄せて座り内転筋を鍛えるなどといったことを意識しておくだけでも違いますよ。
Fさん:「ながら」でもできるならば手軽ですね。生活に取り入れていきたいと思います。
【高尾先生のお悩み処方箋】子宮脱対策のためにできること
1:放っておくと悪化するので、腟運動か手術を
2:尿漏れ予防のためには腟運動をして
3:日常生活でできる「ながらトレーニング」もおすすめ
・電車に乗っているときにお尻をキュッとしめる
・座っているときも背筋をただしてお尻を出すような骨盤前傾姿勢をとる
・膝頭を寄せて座り内転筋を鍛える
後編は、「老化の坂を転げ落ちるのを食い止めるには?」です。ぜひご覧ください!
撮影/中林 香 取材・文/須賀華子