子どもにとって無作為な時間こそが一番大切な時間

こんにちは。圭美です。前回、子どもの夢中を引き出すためには、その子の観察、そして個性の見極めが大切で、私たち夫婦はマルチプルインテリジェンス理論に結びつけて考えるようにしているというお話をさせていただきました。

うちの子はどんな子かな？ なにが好きかな？ 観察するのに適している時間は、子どもの無意識の時間ともお話ししましたよね。この時間が実はとても大切ってことを、もう一度みなさんにお伝えしたいです。

子どもに限らず、人は受け取ったストレスを浄化したり、沸き起こる感情や思考を処理するために、目的のない時間が必ず必要なんですね。お子さんに時々ありませんか？ なにを考えているか分からないぼーっとしている時間や、集中している訳でもなく、ただなんとなくゲームをしているとき。

どうしても私たち親は、自分や子どもの意味のない行動に対しても目的を持たせようとしてしまうんですよね。だから、「そんなぼーっとしているなら宿題やっちゃいなさい！」とか言ってしまうんです。

でも本当は思考を休めている時間であったり、心に溜まったものをリリースしている時間であるのかもしれません。目的のない時間の中で、子どもがとっている無意識の行動こそに、その子の秘密が隠されているかもしれないので、“観察の時間がきた！”くらいの気持ちで、そっと見守ってみてほしいと思います。

最近の子どもは忙しい！

でも、親御さんからは、「うちの子、習い事や塾が忙しくて、無意識の時間がありません！」というお話もよく聞きます。ううーん、これは由々しきことです……。

なんども言ってしまいますが、子どもの才能を伸ばしたり、感情をコントロールさせてあげるためには、絶対に思考や感情を自由に遊ばせる時間が必要なんです。でも、我が家も引っ越す前は、なんだかんだ時間に追われていたかも……なんて思い出しました。

そうですね、もし無作為な時間を取れていないと思われるのでしたら、１日のうちに帰宅してから３０分〜１時間だけ、とか、子どもがなにをしていても、絶対に口出しをしない時間を親自身に課す！と、するのもいいかもしれません。

親にとっては、無作為な時間を過ごす子どもを観察する時間となります。もしかしたら、なにも言われない時間になにをしていいかわからないって子どももいるかもしれませんが、ひたすらなにも言わずに待っていれば、いずれは自分のやりたいことを見つけるはずなので、親はなにも言わずに我慢我慢です。それは結果的に親にとっても子どもにとっても、有意義な時間になるのかもしれません。

子どもにとって主体的な時間を過ごすために

都市部に住まう親御さんからは、もうひとつ。

親も子どもも忙しすぎて、なにを好きか見極める時間もないんです……という話。

確かに……、朝起きて登校して、学校でもやることが決まっていて、学童に行って、塾に行って、宿題をして、お夕飯お風呂、そして寝る。分刻みにやることが決まっているお子さん、多いかもしれません。また親御さんもフルタイムで朝から晩まで忙しくされていたら、じっくり観察する時間を確保するのは難しいですよね。先ほどの無意識の時間を作れないというお話ともリンクしますが、毎日は到底無理だ！という場合は、月に一回でも、半年に一回でもいいです。子どもが行きたいところにいく旅行を企画するのもいいかもしれません。

子どもの好きを見極めるために、子どもが主体的に生きる時間を確保すること。これぞ子どもの主体性を発揮する時間です！そしてそれが、子どもの好きや夢中を引き出すヒントになります。子どもにしてみれば、親が自分の考えたプランに乗ってくれた！という喜びとともに自己肯定感も得ることもできますし、いいことづくめですよね。この夏休みにでも、是非トライしてみてください。

〈次回へつづく〉

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宝槻泰伸（ほうつき・やすのぶ）

1981年東京都生まれ。京都大学経済学部卒業。探究学舎代表。幼少期から「探究心に火がつけば子どもは自ら学び始める」がモットーの型破りな父親の教育を受け、高校を中退し京大に進学。代表を務める探究学舎は子どもたちの“驚き”と“感動”の詰まった授業として、三鷹市を拠点とした教室のほか、オンラインでも世界的な人気を集める。’19年「情熱大陸」に出演、’21年「TEDX」に登壇。５児の父。

取材／竹永久美子