【性教育ワーク連載vol.10】「やせたね」とほめることは危険!? 体型を気にしている子どもは結構多い!
親子の15分性教育ワーク。前回は「見た目についてのコメントで気を付けたいこと」でした。今回のテーマは体型の話についてです。
「うちの子は体型とか気にしてなさそうだから、関係ないな」と思う方もいるかもしれませんが、実は「やせたい」と思っている思春期の子はかなり多いです。2021年の調査では小学4-6年生の36%、中学生・高校生の64%が「やせたい」と思っている結果でした(コロナ×こどもアンケート、第5回調査報告書、国立成育医療センター)。
こんなに多くの子がやせたがっていることに驚きますが、よくよく考えてみれば、テレビ、ネット、雑誌に出てくる「アイドル」「モデル」といった肩書の人はやせている体型の人がほとんど。SNSやYou Tubeでも、やせていることへの称賛のコメントをしょっちゅう見かけます。
しかも、やせていることは単純に「かわいい」「かっこいい」と見た目を評価されるだけではありません。「ちゃんとしている」「自己管理ができている」「努力家」など、内面のことまでほめられがち。多くの子ども達が「やせたい」と思うようになっても不思議ではないですね。
やせていることがほめられる風潮の中、他人から体型についてアレコレ言われて、カラダに自信を無くしたり、やせることにこだわりを持つようになる子がいます。
たとえば、
・「顔がまるい!」「足が太い」と親や親戚から指摘され、体型を気にするようになった。
・「ほんと太ってるよねw」と学校でからかわれ、落ち込み、カラダへの自信を失った。
・付き合っている相手から、やせることを勧められて、「やせていないとダメだ」と思い込むようになった。
・部活や習い事で、グラム単位の厳しい体重管理を受け、太ることへの恐怖感を植え付けられた。
など。
そして、「やせているね」「やせたね」とほめられることで、「自分はやせていないとダメなんだ」と思う人もいます。
やせることに強くこだわるようになり、食事の量を極端に減らしたり、食べては吐いてを繰り返したりと、うまく食べられなくなった状態のことを摂食障害といいます。
摂食障害は思春期以降になるイメージがあるかもしれませんが、小中学生も摂食障害になる人はいて、年々増加傾向にあります。また、摂食障害は女性だけでなく、男性もなります。
体型のことや、摂食障害について知っておくことは、思春期の子にとって大切なことです。
ワークを通して親子で一緒に考えてみてください。
今回は最後に摂食障害について知ることができる、おすすめ本やサイト、相談先ものせてあります。
それではワークを始めましょう!
今回の15分ワークのお題
①「やせた?」とほめているけど、大丈夫?
②「かわいい」「かっこいい」ってどんなこと?
③参考になる本、サイト、相談先のまとめ
①「やせた?」とほめているけど、大丈夫?
まずはマンガを子どもと一緒に見ながら質問します。
「みんなから、『やせた?』『かわいくなったね』とほめられている子がいるね。ほめられている子は、これから先はどうすると思う?もっとやせようとするかな?」と聞いてみてください。
「みんなにほめられて、満足してそうだからこのまま」もしくは、「もっとほめられたくなって、どんどんやせようとするかも」などのこたえが返ってくると思います。その答えを受け止めつつ、やせつづけたいと思ってしまうことがあることの危険について、一緒に考えていきましょう。
「みんなにほめられて、嬉しくなって満足する人もいるし、『もっとやせなきゃ』『やせていないとほめてもらえない』と考えて、食事の量をほんの少しにしたり、食事してすぐに吐いたりする人もいるよ」と、どんどんやせたいと思ってしまうことがあることを伝えます。
そして、それがなぜ危険なのかも考えてみましょう。
「やせるために食事の量を少しだけにしたり、一日中運動したり、ダイエットをやり過ぎたらどうなると思う?」と聞いてみてください。
子どもから「カラダがやせたら、見た目が変わるだけでしょ」と、カラダやココロの変化についてあまり答えが思いつかないようなら、「食事は何のために取るんだっけ?」と話すといいと思います。
子どもから「栄養を取るため」「からだを大きくする」「動くため」などの答えが出てきたら、先へ進みます。
「ものすごくやせたことは、カラダの中に栄養が足りなくなってきた証拠。背が伸びなくなったり、骨や歯がぼろぼろになったりするよ。あと、ココロの調子を悪くする人もいて、気持ちが落ち込んだり、動けなくなったりする人もいるよ」
子どもが生理について知っているのなら、「生理が止まることもある」と付け加えてみてください。
ここまできたら、「やせた?」とほめることの危険性についてまとめます。
「周りの人が、『やせた?』とほめるつもりで言っても、今話したみたく、どんどんやせていこうとして、カラダやココロの調子が悪くなってしまう人がいるよ。だから、『やせた?』とか『やせてるね』と言うのはやめておこうね」と伝えてみてください。
「かわいい」「かっこいい」ってどんなこと?
「この女の子『やせていないとかわいくないのかな?』っていっているけど、『かわいい』ってどんなことかな?」と質問してみてください。「かわいい」は「かっこいい」に置き換えてもいいです。子どもが興味を引きそうな方を選んで。
子どもから「やっぱり、やせているほうがかわいいよ」「○○(アイドルなど)みたいな感じ」「目がぱっちり」など、結構色々な意見が出ると思います。
子どもがどんなメディアからの情報を気にしているのか、友達とどんなことを話題にしているのかなどが垣間見えるかもしれません。
「なるほどねー。かわいい(かっこいい)ってそんなイメージなんだね。」
「でも、かわいさって色々あると思う気がするな。だからやせてないとかわいくないなとか、目が細いとかわいくないな、と思うのはちょっともったいないな。その子なりのかわいさ(かっこよさ)があるよね。そもそも、かわいい、とかかっこいいとかって、見た目だけの話じゃないよね。その人の話すこととか、考え方とか、いろいろあるよね。」
何を「かわいい」とか「かっこいい」と思うのか、子どもの価値観を否定せず、また見た目だけではなく、「色々なかわいさ(かっこよさ)があるよね」と、伝えられるといいですね!
③参考になる本、サイト、相談先のまとめ
【参考になる本、サイト】
「10代のための もしかして摂食障害?と思ったときに読む本」
(著者 おちゃずけ、監修 作田亮一、合同出版)
摂食障害について、ストーリ仕立てのマンガと、詳しい解説が載っています。摂食障害についての本、というと子どもが読むには怖いイメージがあるかもしれませんが、この本は子どもも大人も安心して読める内容になっています。
「子ども情報ステーション byぷるすあるは」
https://kidsinfost.net/disorder/illust-study/eating_disorder/
摂食障害について知りたいとき、まずはこのサイトから見るのがいいと思います。
分かりやすい文章、やさしいイラストで解説しているサイトです。摂食障害の基本的なことや、よくある質問にも答えてくれています。
「摂食障害情報ポータルサイト」
https://www.edportal.jp/index.html
摂食障害全国支援センターが運営する、摂食障害についての情報を網羅しているサイト。情報量がとにかく豊富なので、摂食障害について詳しく知ることができます。
【相談先】
「摂食障害全国支援センター:相談ほっとライン」
https://sessyoku-hotline.jp/
受診する医療機関や相談先についてまとめられています。よくある質問集も分かりやすいので、心配なこと、不安なことがあった際に参考になります。
お疲れさまでした!
次回は、安心して暮らすことや、性加害・性被害にも通じている、「人のカラダとの境界線」についてです。
〈次回へつづく〉
イラスト/ばばめぐみ ※イラストは12月28日発売の書籍「10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック 変わるカラダのいろいろ編」(ほるぷ出版)から抜粋
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アクロストン
妻・夫であり、12歳、10歳の子を育てる親でもある、医師2人による性教育コンテンツ制作ユニット。
公立小の保健の授業や楽しく性について学べるワークショップを日本各地で開催。
家庭ではじめられる性教育のヒントや性に関する社会問題についてなどを発信している。
著書:「10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック 変わるカラダのいろいろ編」 (ほるぷ出版)、「3~9歳ではじめるアクロストン式 『赤ちゃんってどうやってできるの?』」、「いま、子どもに伝えたい性のQ&A 、思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!」(ともに主婦の友社)
監修:シールでぺたぺた「おうちせいきょういくえほん」(主婦の友社)