おもしろ防災アドバイザーが、災害を自分事にしてもらうために心がけていること
東日本大震災から10年以上経った今も、地震や台風、豪雨、豪雪、噴火などによる自然災害は絶えません。「備えあれば憂いなし」とは言いますが、何をどう備えればいいのか、どのように意識を高めていけばいいのか。防災・減災の使命感にあふれる女性たちを取材してきました。
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南あきこさん(50歳・滋賀県在住) おもしろ防災アドバイザー
いつ起こるかわからない災害を
〝他人事〟から〝自分事〟へと興味をもって
もらうことが私の役目です
〝他人事〟から〝自分事〟へと興味をもって
もらうことが私の役目です
「このヘッドライトは釣り用品なんです。防災って構えなくても、防災に役立つものは身近なところにたくさんあるんですよ」
明るく元気な語り口で防災を語ってくれたのは、おもしろ防災アドバイザーの南あきこさんです。活動の幅は広く、ペット防災や女性消防団の活動にも取り組まれています。活動を始めたのは、今から4年前のこと。整理収納アドバイザーの資格取得後、その一環として防災を勉強した際に「これだ!」と防災に目覚めたそうです。
防災に関するさまざまな資格をとった南さんは、自治体で話をする機会が増えていきました。「当時は、人命にかかわる防災の話を自分がしてもいいのかと不安になりました。そんなとき『非常時には誰も命の責任はもてない』と友人から言われ、肩の荷がおりたんです。それで防災の知識を知ってもらうことに目線を変え、とにかく楽しく伝えていくことにしました」。
おもしろ防災アドバイザーとして新たな一歩を踏み出した南さんは、防災を身近な自分事にしてもらうために、“楽しい! 面白い!”を心掛けています。防災に興味をもち、伝えたことを一つでも実践してくれたらそれでいいと話します。「簡易トイレをつくる講習会をしたとき、最初は見向きもしなかった小学生の女の子が、一緒につくり終えると『災害時にはこれを10個つくって、近所に配る!』と笑顔で話してくれたんです。すごく嬉しかったですね」。
楽しく学ぶ姿勢は、大人にも共通します。「受講者からの質問は大歓迎です。興味をもってくれた証しだからです。例えば『簡易トイレで用を足した後のビニールは1回ごとに変えるの?』という質問には、『自分だったらどう?』『1回ごとに交換するなら、4人家族でビニール袋を何枚用意しておくべき?』と問いかけながら、自分事になってもらうようにしています」。
南さんは、ペット防災にも力を入れています。「避難所で周囲に迷惑をかけないためにも吠えないなどのマナー訓練は必須です。“ペットは家族”は、被災時には通用しません。でも一番大切なことは、飼い主が生き延びることですね。飼い主がいなければ、ペットたちは生きていけないから」。
3つ目の活動である女性消防団では地域の防災に取り組んでいます。「この活動で公的な目線が備わりました。例えば、避難所では市の職員や消防団が“何か”をしてくれると思われがちですが、避難所の運営は自分たちでするのが基本です。それに彼らも被災者の一人。自分の身は、やっぱり自分で守らないといけないんです」。
最後にこんな夢を語ってくれました。「滋賀県で防災に取り組んでいる人たちとタッグを組み、小学校で防災を教えるプログラムをやりたいんです。実現には、もう少し時間がかかるかな」。
撮影/前川政明 取材/髙谷麻夕 ※情報は2022年4月号掲載時のものです。
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