『糸』『64-ロクヨン-』の瀬々敬久監督が阿部 寛を主演に迎え、重松清のベストセラー小説「とんび」の初映画化が実現。昭和、平成、令和と時代を経て何度途切れそうになっても深く結びついている親子の絆、家族の物語を真正面から描いた感動作をご紹介します。

『とんび』あらすじ紹介

＜STORY＞

昭和37年、瀬戸内海に面する備後市。運送会社に勤めるヤスこと市川安男（安部 寛）は、豪快な性格で町の名物男。妻の美佐子（麻生久美子）との間に息子が誕生し、旭（アキラ）と名付けた。「とんびが鷹を生んだ」と周囲の人々に言われるほど愛らしく育つアキラが3歳になったある日、美佐子が突然の事故で亡くなってしまう。

悲しみが癒えぬまま2人暮らしを始めるヤスとアキラ。ヤスの姉代わりで小料理屋の女将・たえ子（薬師丸ひろ子）や、ヤスの幼なじみの照雲（安田 顕）と妻の幸恵（大島優子）、照雲の父で寺の住職でもある海雲（麿 赤兒）らが2人を優しく、時に厳しく見守る。だが、母の死の真相を知りたがるアキラに、ヤスは一度だけ大きな嘘をついてしまう。（公式サイト参照）

【見どころ①】演技力抜群の魅力的なキャスティング

原作小説が書かれたのは2003年～2004年。その後、NHKとTBSで二度ドラマ化されており、主人公ヤスを演じたのはNHK版が堤真一さん、TBS版が内野聖陽さんでした。ドラマ化から約10年後の今回、初の映画化にあたって主演となったのは阿部 寛さん。不器用で喧嘩っ早いけど、心の底から家族を愛しているヤスを今の時代に演じるならこの人しかいない！　という説得力で物語の中心に存在していました。

息子のアキラ役を演じたのは北村匠海さん。愛らしく聡明ながら、父親譲りの頑固さも持ち合わせている青年役がぴったりでした。ヤスとアキラ親子を見守る町の人々として、薬師丸ひろ子さん、安田 顕さん、大島優子さん、麿 赤兒さん、宇梶剛士さんらがしっかり脇を固めています。

また、濱田 岳さん、田中哲司さん、豊原功補さん、嶋田久作さん、村上 淳さんらベテラン俳優が、出演時間は短いながら、存在感を放っているのも見逃せません。

【見どころ②】いくつもの“親子”の物語に何度も涙する

病院でソワソワしながら息子の誕生を待つヤス。その後幸せに暮らす家族3人の姿があり、妻を亡くしてからは男手一つで保育園、小学校、中学・高校とアキラを育てていく様子が描かれ、子育て中の親世代は我が子の成長を思って感情移入してしまいます。

物語の中心はヤスとアキラの親子の話ですが、ヤスの親友・照雲とその父・海雲の関係、生き別れていた親子の再会、そして成長したアキラが自分の家族を持つ姿など、年代の違ういくつもの親子が登場し、それぞれの絆を感じることができます。

筆者は鑑賞しながら、親の立場になってみたり、子どもだった頃を思い出したり、年老いてゆく親のことを考えたり、祖父母との交流を思い出したり……とめまぐるしく感情が動いて、その度に涙があふれてくるのを止められませんでした。きっと観る人それぞれの視点で、自分の家族に思いをはせる2時間15分になるのではないでしょうか。

【見どころ③】小説、TVドラマとは違う令和時代ならではのエンディング

昭和～平成へと時代が移り変わる中での親子関係を描いた「とんび」ですが、令和のこの時代に映画化されるにあたり映画版のオリジナルシーンもあります。時代が変わり、家族の形態や暮らしが変化しても、親子の絆、人と人との心の結びつきは変わらない。そのことが一層際立ち、見終わった後はじんわりあたたかい気持ちになれる物語になっています。ひとり時間に思いっきり泣きたいときにおすすめの作品です！

キャスト・スタッフ・作品情報

＜Information＞

『とんび』　4月 8日（金）全国公開

■監督：瀬々敬久
■脚本：港 岳彦
■音楽：村松崇継
■原作：重松清「とんび」 （角川文庫刊）
■主題歌：ゆず「風信子」

■出演：阿部 寛、北村匠海、杏、安田 顕、大島優子、濱田 岳、宇梶剛士、尾美としのり、吉岡睦雄、宇野祥平、木竜麻生、井之脇海 、田辺桃子、田中哲司、豊原功補、嶋田久作、村上 淳、麿 赤兒、麻生久美子、薬師丸ひろ子

■配給：KADOKAWAイオンエンターテイメント
■公式HP：https://movies.kadokawa.co.jp/tonbi/2022
©2022『とんび』製作委員会

取材・文／富田夏子