止まらない汗を何とかしたい!【高尾美穂先生のお悩み処方箋】

産婦人科医の高尾美穂先生が、Mart読者世代である30~40代女性の人には言いづらいお悩みに優しくアドバイス!第6回の前編は、首から上の汗が止まらないというお悩みです。


教えてくれたのは
高尾美穂先生
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター・ ヨガ講師。産婦人科専門医として、女性の健 康をサポートしつつ、それぞれのライフステージ・ライフスタイルに合った治療を提案す る一方、スポーツドクターとして、女性のプロアスリートへのサポートも行っている。

【相談テーマ】季節を問わず顔が汗だくに……止める方法はある?

Kさん

相談者:Kさん(46歳)
大阪府在住
自営業

ほてりや汗は更年期症状の可能性が

Kさん:40歳くらいから、季節を問わず顔から上だけ汗をかくようになりました。真冬でも少し動くと頭や顔から汗をかき、髪がうねったり、顔が汗だくになってお化粧がとれてしまったりします。

高尾先生:真冬でもそうなるとは大変ですね。

Kさん:当時はまだ会社員だったので、朝セットした髪もボサボサ、化粧もぐちゃぐちゃという状況が恥ずかしくて……。次第に人前に出たくなくなってしまい、会社をやめて独立しました。どうしたらこの汗を止めることができるでしょうか?

高尾先生:まず、ほてりや汗というのは更年期症状の一つではないかと考えられます。特にほてりや汗には、ホルモン補充療法が、とてもよく効きますよ。

Kさん:ホルモン補充療法……。あまりお金をかけたくないこともあり、できたら漢方で治したいのですが……。

高尾先生:漢方の成分となる生薬はほとんどが体を温めるもので、今回のKさんのようにほてりや汗を取りたくて、体を冷やしたいとなると、そもそも使える漢方の種類がとても少ないんです。

Kさん:そうだったんですね!

高尾美穂先生

ホルモンの変化で自律神経失調症の状態にも

高尾先生:さらに、運動しているわけでもないのに汗が出るというのは体温と発汗のコントロールがうまくいっていない、自律神経失調状態。自律神経の失調はホルモンバランスの乱れでも起きてしまうので、体のめぐりをよくするための漢方を使うよりも、ホルモン補充療法でホルモンバランスを整えるのがおすすめです。保険適応になるので、医療費はそれほど高額にはなりませんよ。

Kさん:ホルモン補充療法をした場合、どのくらいで症状が改善するのでしょうか?

高尾先生:とてもよく効くので、2カ月くらいで効果が出ると考えてください。

Kさん:すごいですね。でもそんなに効くとなると逆に怖い気もしてしまいますが……。

高尾先生:極端に怖がる必要はないです。ホルモン補充療法で補うホルモン量は、生理が順調に来ている年代の私たちの身体が分泌しているホルモン量の約1/3、ピルの1/5~1/6程度とごく少量です。さらに今は飲み薬ではなく、皮膚から吸収するシールタイプやジェルタイプのものが普及しているので、とても手軽です。

Kさん:ピルよりもそんなに少ないとは意外です。副作用はどうなのでしょうか?

高尾先生:乳がんや心筋梗塞などのリスクについて心配する声をよく聞きますが、どちらも健康診断などの定期的なチェックを受けることをおすすめします。ただ、飲み薬よりも皮膚から吸収させるシールタイプやジェルタイプの方が、どちらのリスクも下げることがわかっており、おすすめです。治療前に婦人科で健康状態のチェックをしてもらい、特に問題ないということならば、副作用のリスクを懸念して我慢するよりもホルモン補充療法を受けて症状を改善するベネフィットの方が高いと思います。

Kさん:少し安心しました。

高尾先生:さらにホルモン補充療法を受けることになれば、月に1度婦人科を受診することになります。定期的に医師の診察を受ける機会があれば、ちょっとでも気になったことはすぐに相談することができ、医師からアドバイスを得られる点もメリットです。

Kさん:確かにそうですね。婦人科に相談しに行ってみようと思います。

高尾先生:ちなみに、更年期の不調と診断するためには、汗やほてりを引き起こす甲状腺の病気ではないか、など、似た症状を起こす他の病気を否定する必要があります。健康診断などを上手に使って、ご自身の健康状態を把握しておくのも大切です。

【高尾先生の処方箋】汗やほてりを取るためにできること

1:ホルモン治療療法を受ける。2カ月くらいで症状が改善するはず。

後編は、「怒りっぽい」「寝付けない」というお悩みについてです。ぜひご覧ください。

撮影/中林 香 取材・文/須賀華子 編集/倉澤真由美