望月芹名さん「コンプレックスと出産が一般社団法人設立のきっかけに」
撮影/水野美隆
この春、一般社団法人「the GIFT」を立ち上げたVERYモデルの望月芹名さん。先日、初めてのチャリティイベントを無事に終えたタイミングでお話を聞きました。「熱意だけでスタートしたのでやってみたら支援をするにもお金がかかることに気づきました」と笑顔で語る彼女が大事にしてきた「きっかけ」とは?
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▼VERYモデル望月芹名さんが30歳で社団法人を立ち上げた理由
今年の4月、30歳になる今だ!と、かねてからの思いを形にするため、一般社団法人「the GIFT」を立ち上げました。虐待や貧困、児童養護施設退所後のサポートなど、さまざまな境遇により困難に立ち向かっている方々への支援事業をする法人です。そのきっかけは私自身の経験にありました。
今でこそ小さい悩みだったなと笑い話になっているのですが、中学時代は170cmを超える高身長なことが大きな悩みで、自分に自信が持てず塞ぎ込んでいました。その身長ゆえモデルにと街で声をかけられることもありましたが、ネガティブにしか聞こえなくて「また今日も目立ってしまった」と落ち込み、身長を削る手術を本気でリサーチする日々でした…(苦笑)。大学生になって周りに背の高い子が増えてきて前よりも目立たなくなってきたのと、どうにもならないことだなと諦めていたタイミングでファッションショーに出ないかとお誘いを頂いて、ふとやってみようかなと思ったんです。これが私にはすごく大きな出来事で、一歩踏み出せたら見える世界がガラッと変わりました。今の仕事にもつながり、私がコンプレックスを乗り越える“きっかけ”をもらったぶんをいつかお返したいとずっと考えていたんです。
撮影/遠藤優貴<MOUSTACHE>
母になって想いが加速!
でも、どういった形でのお返しにしたらいいのかわからず、思いだけはずっと持ち続けていました。結婚し子どもができたころ、いろいろな境遇で親を頼れない人たちと話す機会があって。自分自身が親になって、10代のころに悩んでいた時に支えてくれたのは親だったなと改めて思っていた時に、親を頼れないってどれほどのことだろうか、と。私の場合は、今考えたら本当に本当に小さな(背が高いという)悩みを自分で大きく大きくしていたのだけれど、客観的に見ても大変な境遇にいる子どもたちに何かできないか、きっかけを種まきすることなら私にできることもあるんじゃないかなと思うようになりました。そして、形にするのは30歳の節目の今だ!と動き出すことに。
動き出そうと決めたものの、モデルという仕事とは別世界なわけで本当にわからないことだらけ。熱量だけはあるので、わからないことはとにかく調べる!人に聞く! 一般社団法人を立ち上げるために法務局に行ったり、必要資料をまとめたりと初めてのことだらけ。頑張って企画書を作ってもボツになる経験をしたり。今までは用意された現場のなかで、最大限のパフォーマンスをするということが主な仕事だったので、現場を用意することってこんなに大変なんだと実感。モデルの仕事現場でのスタッフさんにも今まで以上に感謝と尊敬の気持ちを持つようになりました。
夢が持てない子たちに夢のきっかけを提供したい
現在、取り組んでいることのひとつが、自立援助ホームへの支援です。自立援助ホームとは児童養護施設を出た後や、なんらかの理由で家庭にいられなくなった15〜20歳の子どもたちが働きながら一つ屋根の下で暮らしている施設。話を聞くと、境遇や過去の経験、そして周りからの目によって、夢を持ちづらい環境にいる子が多くいるということでした。未来について考えられる時期のはずなのに、夢が持ちづらい環境にある10代後半の子をサポートしたい。私がきっかけをもらったように、きっかけを提供したりきっかけを作ることができないか。そこから夢につなげられるかどうかは自分次第だけど、きっかけがあるとないとじゃまるで違うと思ったんです。
ゲストを招いての無償セミナーや交流会では、感情の扱い方や、トラウマや境遇をどうやってパワーに変えるか、など生きやすくなるヒントを伝えています。私の周りには例えば過酷な境遇の中で俳優になった人もいるので、今後は境遇をパワーに変えた人をゲストに招いたりもしたいなと考えています。
新たに取り組んだチャリティプロジェクト
日頃の活動はセミナーなど内面向けの支援事業ですが、モデルの仕事でファッションとメークの力を体感してるからこそ、内面と外見とが合わさった企画をやりたいと、スタートしたのがウェディングドレスプロジェクト。生きづらさを抱えた人たちが人生のターニングポイントになる企画にしたかったので、自分が主役になれて、いちばん高揚するものと考えた時にウェディングドレスだと思ったんです。
私の結婚式でも着用したTHE TREAT DRESSINGや仕事仲間のカメラマンさんやヘアメークさんなどの協力のもとに、さまざまな境遇の方がこれからの未来へ一歩踏み出すきっかけの1日を提供しました。ドレスを着てフォトシュートするというだけでなく、大切な人に思いや感謝を伝えたり、決意表明をしたり。他薦や公募で選ばれたヒロインの方々とは3カ月のやりとりだったけれど、いろんな方の人生を知る機会を頂いて、サポートしているはずの私たちスタッフがパワーを頂き、これも貢献の魅力だなと思いました。
プロジェクトを終えると、物資や寄付という形の支援ももちろん大切で感謝しきれないのだけれど、こういう華やかな企画はなかなかないのでありがたいと福祉関係の方に言って頂けました。今後も私がモデルの仕事をしてきたからこそできること、つながった人たちといろんなことができたらいいなと思っています。仕事仲間からは「何かできることない?」と声をかけてくれたり、企業から「どういうコラボができるか?」など声をかけて頂くようになってきたので、私たちだからこそできる支援があるかもしれないと使命感もを感じています。
一方、問題は団体を大きくしていくにはしっかりとお金がかかること。貢献したい!と熱意だけで動き出した一般社団法人ですが、始めると人件費や会場費…、いろいろなところにお金がかかることに気づきました。遅いよって話なんですけど(笑)。私1人だったら貢献の熱量だけでやっていけるけれど、さらにスタッフを増やしていったり、また来年からは支援を受けていた青少年が今度はサポート側にまわれるようにチームに入ってもらったりしたいので、持続可能な事業にするためには来年からはスポンサー企業を集めたりしないとな、と思っています。
「何かできない?」って言ってくれる人たちを
巻き込めるほど大きくするのも目標です
「the GIFT」を立ち上げてから、ありがたいことに「何かできない?」と声をかけてくれる方が周りにもSNSでもたくさん。奮闘中の私たちには共感、応援してくれることがパワーになります。今はまだ何かをお願いできる規模ではないので、協力したいと思ってくださった方々の想いをできる限り多くのカタチにしていくことも目標です。今後は子どもたちの未来のために親向けのイベントも考えています。
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取材・文/栗生果奈