ラノベだけ読んでたら読解力は育ちませんか?【子供の読解力のためにできること】
外出自粛やリモート授業などで子どもが家にいる時間が長い今。動画の視聴時間の長さや、本の選び方・ 読み方を見て「これでいいのかな」と思う機会が増えたのは逆にチャンスかも? 子どもと「本」「動画」との付き合い方をじっくりお聞きしました。
◯教えてくれたのは…
◯ 犬塚美輪さん 東京学芸大学准教授
東京大学教育学部・同大学院で教育心理学を学ぶ。読み書きの心理プロセスと指導法研究が専門。紙やネットなど様々な媒体の真偽が不確かな情報をどのように読むかも研究している。著書『14歳からの読解力教室』も話題。
★ Q.「ラノベだけ読んでたら読解力は育ちませんか?」
1.読解力にも種類があります
読解力といっても実はいろいろ。大きく2種類に分けると一つは〝生きるうえで必要となる読解力〟です。役所に提出する書類や契約書、説明書など、生活に重要なものはほぼすべて文字で書かれており、きちんと読めないと生死に関わります。また仕事をする中で新しい知識や情報を獲得するためにも、読む作業は必須です。そして二つ目が〝人生をより豊かにするための読解力〟です。名作と呼ばれる小説や詩、STORYのようなファッション誌は、読まなくても死にはしませんが(笑)、読めば価値観が広がり世界の解像度が上がるかもしれない。そういった読解力も人生には必要では。
2.「ラノベだけでOK」なのか「ダメ」なのか
ラノベにも種類があるので一概にダメとは言い難いですが、どんなに読んでも、語彙力がラノベで使われるボキャブラリーのレベルを超えることはありません。そもそも言語能力は生活環境で育まれる部分が大きく、個人差があります。たとえば同じものを見せても「やべー」しか言えない子と、適切に感情を表現できる子がいますよね。必ずしも長編小説だけが語彙力をつけることに繋がるわけではないですが、「ラノベが好きだからラノベだけでいい」と食わず嫌いをせず、様々な本に触れてほしいと思います。
3.読書量と読解力は比例する? しない?
語彙力と読書量は(ものすごくざっくりまとめると)比例します。読書量が多いことは読解力の高さに繋がっていると考えられるのですが、断言はできない。読解力をどう定義するかによっても変わりますし、読書への取り組み方は人によって違うからです。確かに本をまったく読まない子の読 解力は低いですが、それ以外は明らかな差が出なかったり、調査によって結果がまちまちだったり。なので、「読解力をつけるために読書を推奨すべき」ではありますが、読んですぐに結果が出ることは期待しないほうがいいかと思います。
>> 子供の読解力のためにできること
1.子どもが読んでいるもの、好きなものを否定しない!
書店や図書館で子どもが選んだ本に「同じような本ばかり」などとケチをつけるのは禁物です。そうすると親の前で本を読まなくなったり、読むこと自体が嫌になることも。子どもは自分で選んだものに対してはやる気を出しますし、「面白そう」などの大人からの共感はやる気を高めます。プラスの働きかけで、読みたい気持ちを育てましょう。
2.読んだ本や興味のあることについて話してもらう
短い話でも、子どもは内容を説明するのが苦手なもの。 「〜して、次に〜して」と読み上げるだけで、うまく要約できないことがあります。内容の説明=重要な情報を読みながら抜き出すスキルなのですが、意識しないとただ読み上げるだけでポイントがつかめないままということも。最初はラノベでも構わないので「それでどうなったの?」などと親が途中で質問をしながら練習すると楽しいですよ!
3.そもそもお母さんもスマホばっかり見ていませんか?
「子どもの読解力が心配」「子どもにたくさん本を読ませたい」と話す親に限って、本をあまり読まないケースも (笑)。子どもは親の真似をします。スマホばかり触っているのではなく、暇な時間に読書をして「本を読むのは楽しい」と無言のアピールをするのは効果的。暇な時間=本を読む時間、という身近な例をつくってあげましょう。
イラスト/大原沙弥香 取材/伊藤綾香 ※情報は2021年11月号掲載時のものです。