”世界平和”への道は、すぐ近くにいる外国人への支援から始まる

「平和とは何ですか?」。日本だけでなく、世界に目を開き、さまざまな課題と向き合い、行動を起こしている女性たちがいます。小さな活動が、一歩ずつ着実に広がりを見せています。そして、その先にこそ「真の平和」を実現するための手がかりがありそうです。

吉水慈豊(よしみずじほう)さん(51歳・東京都在住) NPO法人「日越ともいき支援会」代表理事/浄土宗僧侶

海外から来た留学生を人として、まともに扱えないような国が国際平和を目指せると思いますか?

吉水慈豊さんは浄土宗の僧侶のかたわら、日本にいる在留ベトナム人技能実習生や留学生、研修生の支援を行っているNPO法人「日越ともいき支援会」の代表理事でもあります。

「コロナ禍により、助けを求めてくるベトナム人が増えました。以前は、住居の提供は一時的なもので、現在のような大人数を預かることはありませんでした。しかし、コロナ禍によって、職を失い、収入がなくなり、住居がなくなってしまったのです」。

このベトナム支援活動は、前住職の吉水大智がベトナム戦争の悲惨さを現地で目の当たりにした1963年ごろから始めています。

「父がベトナム人僧侶を日本で学問を学ばせようという支援活動がきっかけでした。その後、2011年の東日本大震災のときには、被災した在留ベトナム人を多く受け入れ、支援の輪が広がるようになりました」。

2013年から『日越ともいき支援会』として活動し始め、相談だけでなく、住居の確保、帰国できない人たちの保護、労使交渉までに及んでおり、2020年には、NPO法人となりました。

「活動は多岐にわたります。職を失い、頼る当てがなく困っているときに、私達の支援会を見つけて連絡してくれた子達が安心できるように、少しでも早く対処してあげたいです」。先日、嬉しいこともありました。支援していた留学生が結婚し、子どもが生まれました。

「彼女は子どもを産むことに不安を感じていました。産んだら、働けなくなるのではないか、母国へ帰されるのではないかと。労働法で守られていることを彼女達は知らないのです。彼女達の心配を取り除くことが私の仕事だと思っています」。

これまで、来日した20、30代のベトナム人が労働環境に耐えきれず失踪して生活できなくなったり、自ら命を絶つことも少なくありませんでした。

彼らの遺書を読むと、だれにも相談できなかった辛さが書かれていたそうです。実習生達に対して、『支援している私がここにいるよ』ともっと早く伝えればよかったと感じ、Facebookなどでの発信に力を入れているそうです。支援を考えているが、何をしていいかわからないという人たちには、まず身近にできることから始めてほしい、と話す吉水さん。

「私はこれからも、国が彼らをきちんと救済していけるよう、困窮したベトナムの若者たちに寄り添って、活動していきたいと思います」。

    「コロナ禍は見えない災害です。コロナ禍で生活に困っている留学生達に、国として手を差し伸べてほしいと思います」。
    取材の合間にも、吉水さんの携帯には困窮しているベトナム人からのSOSが多数送られてきます。
    現在、約20名ものベトナム人達が共同生活を送っています。
    日本語のレベル別に分かれ、日越ともいき支援会の一室で、一日3回の日本語学習。
    食品メーカーからの支援で届いたカップ麺。「母国で売られているものなので、慣れ親しんだ味です。このように支援を名乗り出てくれる会社がもっと増えれば嬉しい」。
    吉水さんも関わっている2021年5月より公開されている映画『海辺の彼女たち』。在日アジア人の実態をテーマとし、外国人技能実習生として来日した若い女性達の置かれた現実を描いています。

撮影/BOCO 取材/加藤景子 ※情報は2021年9月号掲載時のものです。

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