東原亜希さん「起業&双子出産の思い出。VERY児童館に込める想いとは?」
VERYモデル東原亜希さんのこれまでを振り返るインタビュー連載の第5回(最終回)。今回はロンドンからの帰国、そして自身の会社を立ち上げるまでのお話です。(前回はこちら)
駐在中に続けていたブログが帰国後も仕事のステップに
「イギリスに住んでいた頃も、育児を綴る日記程度に続けていたブログを通じて仕事が舞い込んだり、ママとしてのアンケート取材が増えたりしていました。ところが、帰国したら仕事のオファーがびっくりするぐらい急増したんです。当時は結婚したら仕事を辞めるつもりだったので、驚きましたね 」
イギリスで初めての子育ての心細さを解消するために続けていたブログが、期せずして更なるステージへの種まきになっていたのです。
「少しずつママとしての仕事をこなしていくうちに、気づいたんですよね。仕事に対する意欲がなかったのは、ずっと自分の立ち位置が中途半端だったのがイヤだったのかもしれないと。でもママという明確な立ち位置ができて、だからこそいただける仕事があって。やっと、自分に自信が持てるようになったんです」
以前なら予定を全力で調整して受けていたであろうゴールデン帯のテレビ番組も、収録時間が遅ければ断る。子育てという優先順位ができたことで、自信がついただけでなく、潔く決断することができるようになったという東原さん。とはいえ手強い仕事が舞い込んでくる現実もあり……。
「○○プロデュースとか、コラボブームが到来したときに、私にもありがたくお声がかかりました。でも思いつきで行動する割に、小心者の私。〝売れなかったら、私のせいで誰かクビ になるのでは〟とか、自分だけの責任では済まないような見えない部分がすごく気になって。とはいえ名前だけ貸します、というようなことも性格的に無理で。ならば自分で作りたいものを作ろう!と立ち上げたのが『Mother』なんです」
30歳で、自身の会社を立ち上げるという大きな挑戦を決意した東原さん。しかしこのときは4歳の長女、2歳の長男の育児の真っ最中。そんな大変なときに会社を立ち上げるなんて、と心配になりますが、そこには理由がありました。
「子どもが小学生ぐらいになると反抗期がきたり、そのときこそ親子のコミュニケーションが大切だと先輩ママから話を聞きました。自分を振り返ると確かにそうだな、と。我が家は康生さんが不在のことも多いので、私が〝家にいる〟ことが大切。 このまま仕事を続けるなら、自分の時間をコントロールできる環境があったほうがいいのかもしれないと思いました。子どもが小さいうちのほうが、(保育園など)周りの協力も得やすいし 、頑張るなら今だ!と」
そして、『Mother』が手掛ける第1弾の商品として誕生したのが、青汁です。なぜ青汁?と今更ながらの疑問をぶつけてみると、
「子どもが生まれてから、子どもに野菜を食べさせるのに、すごく苦労してたんです。こんなに時間かけて作ったのに、食べてくれない。あなたの健康を考えて作ったご飯なのに!と私はイライラ、子どもは私のプレッシャーを感じて楽しく食べられない。そんな食事、よくないですよね。なんかいい方法はないのかと考えたとき、ひらめいたんです。青汁だ!って。康生さんの栄養管理もあって、夫婦でずっと青汁を愛飲していたので、なら子どもが飲めることを前提に、青汁を作ればいいんじゃないかと 」。
しかし、ものづくりはまったくの初心者。紹介を受けた工場に挨拶に行っても、なかなか信用してもらえないという現実が待っていました。
「それはそうですよね。名刺もなければ、会社もこれから作りますという状況。『東原です、青汁を作りたいのでよろしくおねがいします!』なんて言っても、怪しすぎるだろうなと」
それでも地道に努力する東原さんは、何度も工場に足を運んで信頼関係をしっかりと築いたそう。そして試作に試作を重ね、約1年の歳月を経て『HAPPY AOJIRU』が完成。
「大人も子どもも美味しい味のバランスや、妊婦さんに必要な栄養素などとにかくこだわった自信作。でも、万全を期しているはずでも食品関連のトラブルのニュースを聞くたびに、覚悟がなければできない仕事だなと。今でもその辺りは肝に銘じています」
青汁の次なるアイテムとして登場したカレーは、息子さんが牛肉アレルギーだったことがきっかけになり作ったもの。でも意外なところからの反響が、彼女の“寮母魂”を刺激しました。
「カレーの販売を開始してから数年後に、熊本で震災があったんです。そのときに息子と同じアレルギーのある方やベジタリアンの方から〝このカレーがあって助かった〟と、コメントをいただいて……。誰かが喜んでくれている、それこそが私の原動力なんだと改めて強く感じました」
会社は順調に滑り出しました。一方、その後すぐに双子の妊娠・ 出産があったり、急に家を建てることになったり、東原さんの“ドンマイ人生”には休む間がありません。
「私だって平気ではなかったですよ。自分でもビックリするくらい詰め込みすぎでしょって。でもタイミングってやっぱりあると思うんです。双子の妊娠は想定外でしたけど、おかげで“一人で頑張らない”ことができるようになりました。
双子が生まれたとき、『もう一人じゃ無理!』 って、自分自身に一度ギブアップしたんです。遠慮とかしている場合ではなく、親や兄妹や協力してくれる人たちには素直に助けを求めようと。だからこそ今、私はママをしながら仕事ができていると思います。姉の子どもはもう中学生で、うちの子どもたちをとても可愛がってくれるんです。小さい頃は姉とは険悪な関係のときもありましたが、今では猛烈に姉に感謝しています」
4児の母で、モデルの仕事をしつつ、経営者でもある東原さん。ただ社員は自身一人。「人の人生まで背負えないから、社員は一人なんですよ! 」とのこと。
そんな東原さんの今の生活はというと、毎朝5時に起きて朝ご飯を作り、子どもたちが登校・登園した後、仕事に取り掛かります。
子どもたちが帰る頃までに仕事を終わらせて、そこから習い事の送迎、夕飯、お風呂を済ませれば気絶したように眠るという目まぐるしい生活だそうです。
「朝ご飯も夕飯も、インスタに載せられるようなものは 一切作れません(笑)。楽しみは?ってよく聞かれますけど、結局は子どもに関わることになっちゃうかなぁ。やりたいことは何でもやらせてあげたいけど、仕事もしているから時間的にもむずかしい。そこはフラストレーションではあります。でも、いつか子どもは巣立っちゃう。そのときに、今していることが〝良かったな〟って思えるような気がしているんです。多分ですけど」
ちなみに、子どもが巣立ったとき、やりたいことのひとつが井上さんとの二人旅だそう。最近では産後ママたちをつなぐVERY児童館の副館長に着任したり、ますます活躍の場が広がる東原亜希さんから、今後も目が離せません!
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取材/櫻井裕美 再構成・文/馨都
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。