平野紫耀と道枝駿佑のいる学校なら人生をやり直して入りたい|辛酸なめ子の「おうちで楽しむ」イケメン2020 vol.26
旅行も花火も行けない2度目の夏に、感動と癒しを与えてくれたのが「24時間テレビ」のメインパーソナリティを務めたKing & Prince。さまざまな企画でキラキラを振りまいていましたが、平野紫耀さんが教師役を演じたことも話題のスペシャルドラマ「生徒が人生をやり直せる学校」を中心に辛酸なめ子さんに振り返っていただきました。
あわせて読みたい
まぶしすぎた朝ドラの〝りょーちん〟|辛酸なめ子の「おうちで楽しむ」イケメン2020 vol.24
免疫力が高まった「24時間“キンプリ祭”テレビ」
先日放送された「24時間テレビ」(日本テレビ)のメインパーソナリティーをつとめたKing & Prince。24時間がキンプリ祭りのようで目の保養になり、免疫力が高まります。番組内で、フライングディスクを投げて1往復するタイムでギネス世界記録に挑戦したり、「笑点」で浴衣姿で大喜利に挑戦したり、綱引きや「タガフープ回し」で健闘したり、感動的な「神動画」を制作したり。「花」をテーマにしたメドレーや、脱退した岩橋玄樹への思いを込めて「シンデレラガール」を歌ったり……。あらゆる企画にKing & Princeが絡んでいて、心の保存容量がいくらあっても足りませんでした。
中でも印象的だった企画は平野紫耀と永瀬廉が出演した「日本列島ダーツの旅的 全国1億人インタビュー」。茨城県の女子高生と交流した時に「ツンデレ彼氏」の芝居をリクエストされます。平野紫耀は「リナ、いっつも鈍臭くしてるよね。電車に遅れたりとかさ。でも、俺そういうところが好きなんだよね」と告白し、悲鳴を上げる女子高生。続いて永瀬廉は「優しい感じのツンデレ」というリクエストを受け、「いや…カワイイと思うよイズミちゃん。やっぱ好きだわ」と告白し、また悲鳴が。国宝級イケメンたちに下の名前で呼ばれ、こんな最高のツンデレ彼氏体験をしたら、もう一般人の男性と付き合えなくなってしまいそうです。「想い~世界は、きっと変わる。」というのが今回の「24時間テレビ」のメインテーマですが、1日中、ポテンシャルにあふれたイケメンたちを見続けて、男性に対する価値観が変わってしまいそうです。
スペシャルドラマで教師役を演じた平野紫耀
そして今回要注目だったのが「24時間テレビ」ドラマスペシャル「生徒が人生をやり直せる学校」。実在の高校への取材をもとに書かれた本がモチーフとなっています。こちらで新米の体育教師役を演じるのが平野紫耀。ちょうど同じ時期の映画「かぐや様は告らせたい」では高校生役を演じています。先生にも生徒にもなれる、若さと成熟を兼ね備えた存在なのでしょう。
「生徒が人生をやり直せる学校」の舞台、槙尾高校は生徒がタバコを吸ったり、校長先生からおにぎりを奪ったり、体育館にバイクで乗り付ける生徒がいたりと、ファンキーな環境です。新任として赴任したのは、体育教師・樹山蒼一(平野紫耀)と英語教師・岡部薫子(浜辺美波)。フリーダムな空気に戸惑いながらも、他の教師の生徒を見つめる眼差しの温かさに少しずつ感化されていく樹山と岡部。「困った生徒は、本当は困っている生徒」という名言が心に刺さります。妊娠や貧困、家族からの暴力など問題を抱えた生徒たちも多く、価値観の違いに戸惑う2人。樹山先生は持ち前の元気さで生徒に笑顔で挨拶するところから始めますが、生徒には名前も覚えてもらえません。あまりにもハードな現場に対応するだけでいっぱいいっぱいで、当分、樹山先生と岡部先生の間に恋は生まれない、というファンとしては安心な予感がありました。
もしも道枝駿佑が息子だったら…
教頭・原田憲也役の伊藤英明は、荒んだ高校になじんだフランクな兄貴感がいい味出していましたが、生徒役もイケメンが多いです。3人の弟妹たちの世話で心身ともに消耗している乃木翔を演じる板垣李光人、そしてバイクで乗り付けた木の葉陸也を演じる道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)。こんな男子生徒がいたら女生徒は非行に走る暇もなくなりそうなものですが……。
家が貧しい乃木は、体育が好きなのにお腹が空くから、という不憫な理由で授業を見学しています。そのことに気付いた樹山は焼きそばパンを買ってきて乃木に渡し、最初は突っぱねた乃木も空腹に耐えかねてありがたくいただきます。しかし窓から鋭い視線でその様子を見ていた木の葉が……。その後、各教室の黒板に「声をかけたらパンをあげます」と、樹山についての落書きが。その犯人は木の葉だと判明しますが、「腹減った生徒にパン与えて満足? 恵んでもらう生徒の気持ちなんてわかんねえだろ。偽善だよ。あんたみたいな偽善者一番むかつくんたよ」と木の葉に責められて、落ち込む樹山。
そんな木の葉も度々顔に傷を作っていて、本人は「転んだんだよ」と言い訳していましたが、部屋を訪ねたら結構な汚部屋で母親が木の葉に暴力を振るっている疑惑が浮上。いろいろな事情があると拝察しますが、息子が道枝駿佑ですよ? 荒れている場合ではないのでは……。こんなかわいい息子さんがいたら普通なら、毎日幸せだと思われます。現に「まだアプデしてないの?」(テレビ朝日系)という番組で母との関係についてトークした時は、道枝駿佑はお母さんと仲が良くて普通に一緒に出かけていて、さらに家族の予定の段取りのために母からGPS情報をチェックされているそうですが「全然イヤじゃない」と語っていました。そのくらい、良好な親子関係になってもいいところですが……もったいないです。
樹山(平野)と木の葉(道枝)の関係が熱い
ドラマの中の木の葉の母(酒井若菜)は「どうしようもないひどい母親だけど、あなたのこと、大好きだった。ごめんなさい」というメッセージを残して、自ら死を選んでしまいます。木の葉が頼りにしたのは、徐々に心を開いていた樹山の存在でした。一緒にラーメンを食べた楽しいひと時も。
母が亡くなって病院で泣く木の葉の背中を優しくさすり、ポンポンする樹山。木の葉はその後、転校することになってしまいます。それから樹山の心の中のモノローグが木の葉への手紙みたいになっていました。「木の葉くん、君はどうしているかい」と、随時テレパシーで語りかけています。妄想が入りますが、もしかしたら2人の間に何かが芽生えかけていたのでは? 木の葉が、樹山が乃木に焼きそばパンをあげたのをあんなに責めていたのは、実は嫉妬していたのかもしれません。樹山にラーメンをおごってもらい、焼きそばパンよりもラーメンのほうが高いので自分のほうが大切に思われていると確信した木の葉は心が満たされたのでしょうか。樹山も明るい自分と対照的な、木の葉の陰の部分に惹かれていたのではと推察します。転校する時も去っていく木の葉の後ろ姿に向かって「木の葉~! 陸也~!! 陸也~!!」と、全身全霊で叫んでいた樹山。ガチな熱量を感じました。木の葉がいなくなった後、学校に赴任してきた図書館司書の立花久美子(篠原涼子)に「お茶しよう!」などと誘われるもなびく気配はなく、岡部とも距離感がありました。
でも、整備工場で働く木の葉に会いに行ったときの樹山は満面の笑顔でした。「樹山よく来たな」「おー、来たよ」「腹減ったからラーメン食いに行くか」2人は見つめ合い、一緒にラーメン屋に……この後の展開に妄想がふくらみます。ハッピーエンドの余韻で終わった「生徒が人生をやり直せる学校」。平野紫耀と道枝駿佑がいる学校があったら、人生をやり直す、というより生まれ変わってぜひ入学したくなるドラマでした。
辛酸なめ子
イケメンや海外セレブから政治ネタ、スピリチュアル系まで、幅広いジャンルについてのユニークな批評とイラストが支持を集め、著書も多数。近著は「辛酸なめ子の世界恋愛文学全集」(祥伝社文庫)、「女子校礼賛」(中公新書ラクレ)、「電車のおじさん」(小学館)、「新・人間関係のルール」(光文社新書)など。