一人っ子じゃだめですか?「2人目は?」にモヤモヤしたら

「一人っ子ってかわいそう」そんなことは思っていないし、他人に言われることではない、と考えていても、いざ言われると気になる人は多いようです。状況は人それぞれですが「一人っ子家庭」が多い現状のなか、改めて、一人っ子のよさについて専門家にお話を伺いました。

 

こんな言葉に戸惑います

結婚前は「結婚は?」、結婚したら「子どもは?」、子どもを産んだら「2人目は?」と、質問ばかり。正直、ひとりでも良いかなと思っていたこともあり、放っておいてと思うことも多かったです。聞かれるたびに、一人っ子ってダメなのかな?かわいそうかな?と感じます。
(Kさん 32歳 女の子7歳)

 

私たち夫婦が他界した後も娘がまだ若かったら…と考えると2人目を産んで娘の肉親を作りたい。ただ、年齢的にも授かれるかどうかわからないこともあり、一人っ子だった場合、保険や教育面なども含め娘のために今何ができるかを考えています。
(Sさん 44歳 女の子4歳)

 

夫婦ともにきょうだいがいる環境だったので2人目という発想はお互い自然な流れでした。とはいえ私は今がキャリアにおいても頑張りどき。育休を長めに取得したこともあり、更に産休育休を取ると周りからキャリア面で置いていかれてしまうのでは?という不安を感じています。そのため、選択肢として、一人っ子でも良いかな?と考え始めていますが、子どもに寂しい思いをさせないか心配です。
(Nさん 35歳 男の子1歳)

 

学生時代の同級生や児童館で知り合った1〜2歳のお友達ママとは自然とそういう話になるし、親は少し気にしている様子。2人は産むよね?きょうだいはいた方がいいよね?という世間からの圧はそれとなく感じていました。とはいえ、仕事も復帰したばかりで、1人目がまだ1歳で可愛くて仕方がない時期。年齢的にもリスクが増えるので考えないとは思うけれど、競争心も育たないし絶対にひとりでいい!という確信があるわけでもありません。
(Nさん 35歳 男の子1歳)

 

 

「一人っ子は育つ上でマイナス?」の声に
保育者・柴田先生に
アドバイスをいただきました

何人いた方が良いというのは時代によっても変わっていくもの。働くママが増えている今、何人子どもがいた方が良いのかは家庭によっても様々です。きょうだいがいたほうが幸せだなど、はっきりとした資料やデータに基づく根拠のない話や得体の知れない常識に囚われて考える必要はありません。

一人っ子のいいところは、親の愛を疑わないこと。それから一人で集中して考えを深める環境や習慣に恵まれ、得意になっていくことです。

 

〝ワガママ〟は
自己表現の形と捉えて

子どもにとって、ワガママを言うのは一種の自己表現。ワガママという言葉自体、マイナスイメージを持たれますが「大人にとっての不都合」であるだけの場合も多いのです。子どもにとっては成長していく上で必要なプロセス。むしろ、小さい頃にワガママを言える方が、大人になるまで自分の感情を出せないよりもずっと良い。

子どもがワガママを言うのは、自分の中で大きな根っこを張っている時。自分の感情を知らずに相手の気持ちが先にわかるようになることなどあり得ないのです。ワガママを言いながら、相手の反応を見ることで人の気持ちに気づき少しずつワガママを言うことも減っていきます。

 

いまの時代に競争心が
必要と思いますか?

競争心というものが生きていく上で必須の感情なのかと問われると、必ずしも必要ではないというのが私の考えです。「数字に振り回される時代」から変わろうとしている現代において、他者との競争より自分自身を深めていく方が大切だと思う時もあります。

それに、子どもが将来目指す姿によっては競争心がなくても良い場合もあるでしょう。例えば研究者になりたいと思った場合、必要なのは探究心や好奇心。競争心は必ずしも必要な感情ではありません。もし、将来子どもがスポーツ選手など競争が必要な職種を目指したい時は自然と競争心が自分の中に芽生えるはずです。

 

子ども自身でもやもやを
解消する術を
小さいうちから見つけられる

きょうだいがいる場合、溜まったストレスをきょうだいと喧嘩をしたり相談したりすることで解消できますが、一人っ子はそれができません。ではどうするかというと、うちの園でこんな子(5歳男児)がいました。いつも遊んでいたお友達が遠くへ行ってしまった。その子は椅子でバリアを作りその中に入ってしまったのです。何日もその中で本を読んでいましたが、ある日、怪獣が好きなその子は「ガオー」と怪獣になり、バリアを破って出てきたのです。そんな風に感情を処理し、対処していくことで生きていく上で大切な能力が育めるのです。ただ、誰かに話すことで心を軽くする時のために、祖父母や習いごとの先生など、子どもが気軽に話をできる存在を親以外に作ると、子どもに安心を与えてあげることができます。

子ども本人は自分が一人っ子であることに親が思っているよりも寂しさを感じていません。大切なのは、ひとりひとりに個人として接してあげること。子育てという正解のない毎日に、頭を悩ませることも多いでしょう。でも、そんな時は自分の体験を参考に、自分の考えで決めていけば良いのではないでしょうか。

 

◉柴田愛子先生
認可外保育施設「りんごの木」代表。保育者や保護者向けの講演やセミナーを通じて、子どもの育ちのドラマを発信。「子どもの心に添う」を姿勢としNHKラジオやEテレ「すくすく子育て」などに出演。著書に日本絵本大賞受賞作『けんかのきもち』ほか。

 

一人っ子肯定派

初めから一人っ子と決めていました。それは大切な子どもに全力を尽くしたいと思ったから。実際、子どもには夢がありできる限り応援したいと思っています。そのためには一家揃っての海外暮らしも検討中。子どもが2人以上いる場合、どちらかの子どもに全力で向き合えないのではないかと感じていて、この決断で良かったと思っています。

(Rさん 35歳 男の子5歳)


子どもは欲しいけれど、ひとりで良いかな?となんとなく思っていました。夫も私もそれぞれの仕事やプライベートを楽しみたいという思いが強かったから。2人以上の子育てを考えた場合、どうしても子育てに占める時間が増えてしまうと考え、子どもはひとりという考えに至りました。自分たちの人生も楽しみつつ、ゆとりある子育てを楽しみたいと思います。

(Kさん 33歳 男の子6歳)

上から『ひとりっ子の育て方〜「友だちづくり力」「自分づくり力」「立ち直り力」。0〜15歳児の親が最低限しておくべきこと。』諸富祥彦著(WAVE出版)、『「ひとりっ子だから」なんて言わせない―ひとりっ子神話の嘘と育て方の秘訣』 パトリシア・ナックマン、アンドレア・トンプソン(著)池内 恵(翻訳)(主婦の友社)、『“生まれ順”でまるわかり! 一人っ子ってこんな性格。』(五百田達成の話し方シリーズ)五百田達成著(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、お話を伺った柴田愛子先生も執筆。子どもの数にかかわらず子育てする上でのヒントも詰まった一冊です。『どうしたらうまくいく? きょうだい子育て』(Como子育てBOOKS)Como編集部編(主婦の友社)

 

 

撮影/清藤直樹 取材・文/岡田朋子 編集/藤田摩吏子
*VERY2021年2月号「〝ひとりっこ〟じゃだめですか?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。