人気映画からアラサー女性の生き方のヒントを学ぶこの連載、今回は12/18公開に公開される作品『エミリー、パリへ行く』をご紹介します。
女子会には２種類ある。綿菓子みたいな見せかけの中身スカスカな女子会か、ぎっしり詰まったガトーショコラみたいな女子会か。女子の集まり。それは生まれては、消滅し、また生まれては、消滅する。どこかインスタのストーリーとも似た、その一瞬を全うするためだけに生まれた集合体。１対１の関係は長く続くこともありますが、女子会って…気付くと、秘かに消えている…！別に仲たがいしたわけでも、それぞれの暗黒面を覗きすぎたわけでもないのに…どうしてなのでしょうか。

同じ本の感想を語り合う“ブッククラブ”を40年以上続けてきた女性4人の物語。日本でもヒットして映画化した官能小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』を課題図書として読んだことをきっかけに、恋に、人生に、彼女たちの止まっていた秒針が動きだします。今回は、平均年齢70歳越えのキャストたちによる４人の女子（？）たちの集まりに学ぶ「友情が長続きする秘訣」を分析しました。

秘訣１：共通のトピックを持っている

女子会で疲れる時って、知らない話題や知らない人物の話で自分以外のメンバーが盛り上がりすぎている時だったりします。若い時は「自分だけ入れない会話をしている！」という嫉妬から生まれるものでしたが、大人になってからは単純に話についていくのが面倒で敬遠します。その間、徹底的にスマホをいじっていられたらよいのですが、大人なのでにこやかな表情と相槌が必要です。
だからこそ、育児でも仕事でも趣味でも、はたまた読んでいる雑誌でも、そこはなんでもよいです。集まった人物たちは“全員で”（ここポイント）、女子中学生のように「ワー！キャー！」と盛りがれるトピックがあることが好まれます。映画の中のブッククラブしかり、例えば「源氏物語を語る会」などが数十年、メンバーが変わらずに継続しているように、共通のトピックがあることって重要です。

秘訣２：アドバイスをする＆受け入れる覚悟を合わせ持っている

大事なのは、悩み相談がお互いにできる関係が築けているかいうことです。悩み相談をされた場合に、相手によい回答を提示してあげられるかを心配しがちですが、自分がアドバイスをもらった時に、それを受け入れる覚悟があるかも重要です。マウント取られたと誤解するわけでも、自分を傷つけようとしていると疑うわけでもなく。「この人に言われるのであれば！」ときちんとアドバイスを消化できる関係性が理想です。これは双方の信頼関係がないとなしえません。

秘訣３：集まる場所の金銭感覚が合っている

ブッククラブの開催地はお互いの家であることが多い面から垣間見えたのですが、集まる場所も女子会を永続させるには大事なようです。SNSを見ているとホテルアフタヌーンティーを女子会にしている集まりって多くないですか？あれは、５、６千円しますよね…。アフタヌーンティーの素晴らしさは知りつつも、アフタヌーンティーが基本の女子会だと私の場合、お金が続きそうにありません…。毎回ホテルランチのクオリティを求めらた女子会は、いつしか離脱しておりました。富士山の自販機を彷彿とさせる４桁のドリンクが私の懐事情にはどうも厳しくて…。でも、金欠ですとは言いたくありません。こんな人間もおりますので、集まる場所って案外大事かと。

秘訣４：いくつも人生の形を認めてる

自分と異なる人生観を持つ友人を、リスペクトしましょう。劇中の４人は「結婚した方がいいよ」「子供がいた方がいいよ」「あなたも仕事をした方がいいよ」などの自分の物差しで測った会話を一切しません。一般的に仲が深まるほどに、なんでも言い合える関係になりますが、やはり親しき中にも礼儀ありは世界共通です。自分と友人の人生を比較するといった、一線を越える発言は禁忌ですし、誰の人生からも学びを得ようとリスペクトする姿勢は、人間としての成熟度にも繋がっていくはずなので一石二鳥です。

秘訣５：定期的に会うことを無理に求めない

しばらく会っていないと大騒ぎする女子が、世の中には多すぎです。女子同士の友情において、男性ととくに違うと思うのは１度深く仲良くなったら定期的に会っていないと「私、嫌われた？」と勘違いする女子が世の中に多い点。筆者も女友達から「A子ちゃんと最近会っていなくて！」そういう相談も受けてきました。ブッククラブは定期的に集まっていますが、それはたまたま集まる理由がそこにあるからですし、会えなくなりそうなメンバーを深追いせず爽やかに送り出すシーンが印象的です。恋愛関係に「追いかけすぎ」問題は当てはまりますが、実は友情にも当てはまりそうです。

最後に作品の見所を、映画ソムリエのライターがさらに熱く解説！

つまるところ、本作は年齢だいぶ高めのSATCだと思ってくれてOKです。
全員おキレイ！おしゃれで下ネタも適量に盛り込まれ、価値観も人生もそれぞれ異なるという面白さがあります。主人公たちの年齢が年齢なので、それぞれの人生を振りかえるタイプの映画かと思いきや、さらなる未来が広がっていくタイプの物語にパワーをもらいました。そしてそれだけじゃなく、映画から受け取るメッセージもよいです。誰のためでもなく自分のための、そんな自分の人生を生きるというのは、言葉以上に難しいですよね。でも自分の心の持ち方次第で、何歳からでもスタート地点に立てるということを、この映画は教えてくれます。彼女たちから伝わってくるのは、年齢を重ねるほどに、責任も増えるけど、同時に経験が増えているので、自分が本当に求めているものが分かるようになるということです。歳上の女性たちからのメッセージはいつだって心強い。ダイアン・キートンを含めた圧倒的なキャストのアンサンブルも魅力です。４通りの人生の先輩に「自分は誰タイプ？」なんて妄想してみても良いでしょう。それでは今日、この地球上で生まれる女子会が長続きすることを祈って。

この記事を執筆したのは
東 紗友美（ひがし さゆみ）
’86年、東京都生まれ。映画ソムリエ。元広告代理店勤務。日経新聞電子版他連載多数。映画コラムの執筆他、テレビやラジオに出演。また不定期でTSUTAYAのコーナー展開。映画関連イベントにゲスト登壇するなど多岐に活躍。
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