【中国のいま】withコロナ生活を楽しむ方法を海外に学ぶ【上海編】

海外にも自由に行けなくなってしまった今、ほかの国ではwithコロナ生活をどんなふうに送っているのか? 日本以上に多くの制限がある国で生活している方に現地の様子をレポートしてもらいました。ものすごいスピードでコロナウイルス流行→抑え込みに至った中国本土。中国随一の大都市、上海もかなり早い段階でほぼ元通りの日常を取り戻してるようです。3月の流行ピーク時~現在の様子を伝えてもらいました。

3月に日本から上海に帰国→2週間の自宅隔離に

3月中旬に日本から帰国した際の上海虹橋空港の検疫ゲートの様子
日本に一時帰国しており3月初めに上海に戻るつもりだったのですが、中国本土でのコロナウイルスの流行により予定を変更。市内の感染者数の増加が収まって安定した3月中旬に上海に戻りました。羽田から約3時間半、広い機内には20人前後のみの乗客。着陸すると、機内に真白の防護服を着た衛生員が乗り込み、書類を渡されました。日本滞在中の行動記録と居住先などを詳しく記入した後、少人数のグループごとに移動。厳戒態勢の中、検疫所では医師から個人面談を受けて詳細な行動記録を報告。面談中はまっすぐ目を見つめられ、「虚偽の報告をした場合は法的に罰せられます。正直に答えてください」と何度も言われたのが印象に残っています。

検疫を済ませ入国した後は、住まいの地区ごとに用意された車で帰宅。自宅での2週間隔離中は毎日、地区の担当医師とボランティアスタッフが訪問し、午後はSNSのグループチャットによる検温報告と健康チェックを受けました。外出が一切禁止のため、ゴミ出し、宅配荷物の受け取り、買い物すべて、地域のボランティアスタッフが代行。たくさんの野菜の差し入れもあり、不安が和らぎました。帰宅してすぐ、隣人からはケーキが届いて御厚意が嬉しかったです。ちなみに自宅隔離期間中は「隔離中」であることがわかるように玄関に札が貼られていました。

withマスクながら日常を取り戻している現在

私の店のある安福路(アンフールー)は、4月には週末になると多くの人で賑わい始めました。現在もマスク着用ではありますが、すでに日常を取り戻しています。10月1〜8日の大型連休中、店のある旧フランス租界地エリアなどにはおしゃれなブティックやカフェ、歴史的建造物も多いため、どこへ行っても「人山人海」(レンシャンレンハイ:「ひとだかり」の意)が目立ちました。とはいえプラタナスの街路樹が日差しよけにもなって、散策するには最高の季節です。
上海では週末のフリーマーケットや夜市が大盛況。摆摊(バイタン)といって、露店での直接販売の意味で流行語にもなっています。ショッピングセンター近辺、古い集合住宅を改装しておしゃれな店や飲食店が集まる中庭、上海外灘の河沿いなども夜遅くまで賑わっています。中には日本のお祭りの縁日を再現したものまでありました。服飾品、アロマキャンドル、染物のワークショップや中国ならではのお香や翡翠などを扱う店のほか、輪投げや射的の店も。コロナで実店舗を閉め、ネット販売のみになった店もありますが、家の不用品を販売したり、臨時収入を得るために副業として摆摊などに参加する人もいるそう。青空のもと出歩くのもいいけれど、早めの夕食後に、白熱灯に照らされた出店を見てまわるのも楽しい。経済効果も期待されている摆摊は都市開発の影で街から消えた時期もありましたが、今年大復活しました。

withコロナ生活で癒しになっているもの

朝食やおやつの定番・万頭(マントウ)。整備されて新装オープンした野菜市場の入り口にある万頭屋さん「大包小包」(ダーバオシャオバオ)には、朝から行列が。店主はデザイン系の仕事もしていることもあり、店のロゴもおしゃれ。故郷の味を再現した特製の肉まんには、千切りした大根を軽く茹でて、しっかり絞って水切りしたものに少量の豚肉を混ぜて作った餡が。万頭の生地は酒酵母で発酵させているため柔らかいのに弾力もあり、噛めば噛むほどほのかに甘さが出てきます。上海市内のほかのどこにもないと言われるほど、さっぱりしているけれど香ばしい味と大人気。生地も餡も丁寧な手仕事が感じられる万頭。胃袋に染みる味は気持ちがほぐれて癒されます。

上海では最近、中国語のロゴデザインが人気。エコバッグとしてではなくメインのバッグとして流行っているトートバッグにプリントされた文字が中国語で「開心」(=Happyの意)だったり、近所のおしゃれなカフェの店名が「聚福」(=福が集まる)だったり。こちらのお店は中国のキッチュでおしゃれな絵柄の琺瑯や生地を使ったインテリアで、雑貨販売も。中国語をおしゃれなロゴとしてデザインするのが流行っていて、縁起のいい言葉を見かけると御利益がある気がしてほっこりします。
    上海市街中心地から車で1時間ほどいくと農村地帯が広がります。新型コロナウイルスの影響で上海市外へ就学児童が出ることが厳しいため、大自然を求めて、市内の農村での疑似体験「農家楽」(ノンジアルー)など体験学習が人気。私も農村に移り住んだ友人の古い農民民家に遊びに行って周辺を散策したり、野菜を収穫したり、薪で火をおこした釜で手作りの水餃子を炊いたりしました。竃で薪が燃えて弾ける音や大きな鉄鍋にかけた蒸篭から出る湯気など、ゆっくり流れる時間が心地いい。写真は友人宅前に植えられた大きな棗(なつめ)の木を揺らし、実を落として収穫しているところ。大人も子供も大興奮!

    フラワーアレンジメント教室が流行中。中国では少し前までは造花が主流で生花を飾る習慣がなかったけれど、家の中に少しでも癒しを取り入れたいと最近、人気です。自分の作った作品をSNSでお披露目するのが楽しみという理由で参加する人も。10月の国慶節(建国記念日)にちなんで、お祝いを意味する紅色の花をテーマにしたレッスンも。

上海の様子をレポートしてくれたのは…

石川リエさん

大学院在学中より、CLASSY.をはじめとする女性誌でライターとして活躍。’05年より結婚を機に上海に移住。’07年に上海の旧フランス租界地エリアにセミオーダーを中心としたブティック「COUTURIER Shanghai」をオープン。シルク素材を使った服や小物が人気を集め、AERA誌の「中国で活躍する日本人100人」に選ばれる。’14年より読売新聞夕刊で海外ファッション記事を連載中。ショップのHPはwww.couturiershanghai.com

構成/CLASSY.編集部