疲れない「ローリングストック」でフードロスを防ごう

年に1度「防災の日」をきっかけに、防災準備を見直してみてはいかがでしょうか?
「防災用の食品は専用のものじゃないとダメなんでしょう?」とか「そのうち買おうと思ってる」と、腰が重たい人のために、気軽に始められて、日常使いしつつ備蓄にもなるローリングストック術を教えてもらいました。

教えてくれたのは
管理栄養士・防災士・ 災害食専門員 今泉マユ子さん


管理栄養士として大手企業の社員食堂や、病院、保育園に長年勤務。レシピ開発、商品開発に携わるほか、防災食アバイザーとして雑誌やテレビ、書籍など、多方面で活躍中。

「普段の食事に取り入れながら災害時の備えにもなるローリングストックには、さまざまなメリットがあります。一つは日常の習慣として、非常時の準備ができるということです。普段の買い物で、使ったものを買い足すだけで防災対策を習慣化できます。ストックを管理するなかで、家族と調理や食事をしながら防災の話をするなど、日頃から防災意識を高めることにもつ ながります。
次に『防災食(備蓄食品)』のフードロスを防ぐということ。 非常食=特別なものとして準備しておくと、出番がないまま賞味・消費期限が切れてしまい、 ときに廃棄せざるを得なくなる場合も。ローリングストックなら、普段使いするため、存在を忘れて無駄にしてしまうということもありませんし、そして何より非常時にさえも、いつも食べ慣れた食事がとれるということが安心材料になってくれます」

おさえておきたい
疲れないローリングストック 3カ条

1.家族の好きなものをストック
非常時だからこそ、好物があると心が落ち着き、頑張ろうという力の源になります。日持ちするけど食べたことがない、慣れない味の防災専用食より、好きな味のものを備えましょう。

2.一度にまとめて買わない
賞味期限が同時に来るのを防ぐためにも、いつものものを買い足しする感覚で。またいざというときに買い占め行為で必要な人が買えない事態を起こさないよう、普段の買い物で備えます。

3.普段の食事で「上手に食べる」
非常食というと〝備える〞ことに目が行きがちですが、〝上手に 食べる〞ことも大事。ローリングストックなら期限切れを見逃すリスクも少なく、普段の食事で消費できるから安心です。

“政府の推奨備蓄量は”
自然災害=1週間分  新型感染症=2週間分

「1週間分の非常食を備えておく」と聞くと大変そうに思えますが、ローリングストックにして食べた分だけ買い足すのなら、普段の生活に取り入れやすいのがポイント。災害時にも食べ慣れた美味しい食事ができることを目指しましょう。

備蓄品の収納テク!
1.分散しましょう

備蓄品は1カ所に収納していると、災害時に周囲が壊れて埋もれた際、取り出せなくなることも。数カ所に分散しておきましょう(画像:お水は押し入れの下と引き出しに分けて収納)。また、家族が場所を把握しておくことも大切です。

2.ペンも一緒に

賞味期限切れを防ぐため、見やすいところに賞味期限を書いて「見える化」するのがおすすめ。ペンを別の場所に置いておくと書き忘れてしまうので一緒に収納しておくと便利。

いつもの食事を思い浮かべて必要なものをストック!
《主食》


お米好きな家族なら、米類は欠かせません。パスタや粉ものはストックしやすく消費の回転もよし。グラノーラや、水を使わずに食べられる餅は即戦力になります。

《そのまま食べられるおかず》


瓶・缶・レトルト・ドライパックなどは、保存期間も長いうえ、そのまますぐに食べられます。好みのものを揃えておくことが大事。

《水やお湯を使うおかず》


即席めんやフリーズドライのスープや味噌汁のほか、ひじきや切り干し大根をはじめとする乾燥食材は栄養価も高く災害時にGood!

《常温で日持ちする野菜やフルーツ》


りんごやバナナなどのフルーツや、にんじん、玉ねぎ、じゃがいもといった定番根菜類は常温で保存ができるので日頃からストック。

《おやつ》


災害時には甘いものが癒しになることも。普段買っているドライフルーツ、ナッツ類、フルーツの缶詰や飴なども役立ちます。手を汚さずに食べられる食べきりサイズ羊羹もおすすめ。 (右上)えいようかん 5年長期保存 60g×5本入り¥550(井村屋)

《水分》


水は、1人1日あたり3l必要。少なくとも3 日分は備えたいところ。また、災害時に不足しがちな野菜や果物は、野菜ジュースで補えます。飲みきりサイズを備えておくと便利。

《美味しく食べるためのツール》


味つけをしたり温めることで食べ方も広がります。普段使っている調味料は切らす前にス トックを。ガスボンベにも消費期限があるので、使って回転させましょう。

Mart 2020年9月号 「ゆる備蓄で美味しいローリングストック」より
撮影/落合隆仁 監修/今泉マユ子 取材・文/加藤文惠