「ZOOM飲みが盛り上がりませんでした」Over40こじらせ男子の婚活奮闘記|『サバイバル・ウェディング』著者が婚活【第6回】
連続ドラマの原作となった小説『サバイバル・ウエディング』の著者が、婚活してみたら…。
Over40こじらせ男子の奮闘記をお届けします。
こんなご時世なのでZOOM飲み会をしました
世間はコロナの影響で自粛ムードです。お店は開いてませんし、この時期に知らない人と会って話すことは避けたいものです。
そこで今回は、いま流行りのZOOM飲み会をすることにしました。
ちなみに僕は、30代前半まで、東京で働く普通のサラリーマンでした。よく飲み会をセッティングしたり、誘われたりして、受付嬢、銀行員、航空会社などなど、様々な業種の女性たちと、あほみたいに飲み会していた時期がありました(食べログがない時代だったので、表参道や銀座の高級そうに見えて安い店を「ぐるなび」で予約していました)。
しかし、42歳になったいま、すっかりそういうものから縁遠くなってしまい、いきなり初対面の女性と話す。しかも、ZOOMとかいう最新ツールを使うとなると、全く気軽さはありません。開催は困難を極めました。まず、飲み会を頼む女性がいないのです。そこで、仕方ないので出版社で営業をやっているAさん(20代後半)に頼むことにしました。最初は「まあ、いいですよ」と、受け入れてくれたのですが、「じゃあ、3対3くらいでいいですか?」と聞かれて、大切なことを思いだします。未婚の男友達がいないのです。
30代と違って、42にもなると、こじらせてるやつですら結婚していて、結婚していないのは、離婚したか、変態か、怪しい宗教に片足をつっこんでいるガチ勢しか残ってないのです。そこで、僕はAさんに言います。
「友達を誘ったんですけど、みんな結婚しちゃってて…。よかったら既婚者も呼んでいいかな。それで、ワイワイ飲む感じにしない?」
「どうしてわたしが42歳や既婚者と飲まなきゃいけないんですか!?」と、Aさんに「わたしのことナメてます?」というテンションで正論を言われます。
あ、しまったAさんを怒らせてしまった。どうしようと迷ったあげく、僕の強みは「本の印税」だけなので、「じゃあさ、ウーバーイーツのチケットをプレゼントするからさ、さくっと2時間くらいお願いできないかな…」
これで手を打ってくれと、自分より15歳も下の子に頭を下げます。
「まあいいですけど…。私にメリットないんですよね…」と、「ち、しかたねぇなあ」という顔でした。彼女には「年上を敬う」という儒教の教えが抜けています。
さて、次はZOOM映りという問題があります。というのも、画面越しの自分って映りが悪いんですね。もうすぐ43歳ですから、しみやたるみが気になります。そこで、どうやったら映りがよくなるのかネットで調べました。そしたら、ライトを当てるといいって書いてあったんです。さっそく、アマゾンで撮影用ライトと三脚を購入しました。そうすると、くすみが消えて、少しキレイに映るんです。なんだか、キレイになりたい美容男子の気持ちがわかってしまいます。
そんなこんなで、なんとか、男性3人、女性3人のZOOM飲み会が始まります。それは僕がいままでやってきた「飲み会」とはまったく違うものでした。
女性のひとりは「ちょっと仕事で抜けます☆」と突然、別のパソコンを開きます。どうやら仕事でトラブルがあったらしく、イヤホンマイクで何かを話しながら一生懸命パソコンを叩いています。まるでコールセンターの人のようでした。
あと、僕の男友達は、家だと何やらまずいことがあるらしく、一人でカラオケボックスから参加したんです。そのせいで、ちょくちょくプルルル♪とフロントから電話がなって、そのたびに「30分延長で」を繰り返し、会話の流れが途切れます。
ZOOM飲み会は、なんだか、まとまりなく盛り上がりません。それでも何か爪痕を残したい僕は、2時間くらいたったところで、勇気を出して連絡先を交換しようと「じゃあそろそろ…」と切り出そうとしました。でもその瞬間、女性陣は何かを察知したのか「そうだね、そろそろ終わろうか」と切断してしまいました。
画面には、ライトで照らされたヘッドセットをつけた僕と、「退出しました」のメッセージだけが表示されていました。
この記事を書いたのは「大橋弘祐」
大橋弘祐(おおはしこうすけ)
作家、編集者。 立教大学理学部卒業後、大手通信会社を経て現職に転身。初小説『サバイバル・ウェディング』が連続ドラマ化。
『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』はシリーズ40万部を超えるベストセラーに。
撮影/小田駿一