矢井田瞳さん「手を抜くことに罪悪感を持っていたのも今は懐かしい」
子育てに家事と、目まぐるしい忙しさの毎日の中でふと訪れるひとときに、救われたことはありませんか。いつも笑顔で頑張る素敵な人たちにも大切にしている大人時間がありました。今回はアーティストの矢井田瞳さんです。
何かに没頭できる時間があれば
疲れやモヤモヤもスッキリ
娘はもう小学5年生、成長にともなって、私のひとり時間も徐々に増えてきました。最近のお気に入りは、子どもが食べないスパイシーなエスニック料理を作ったり、夜に家族が寝静まって家事も片付けた後に、お酒を飲みながらキャンドルをたいてゆっくりする時間。酔ってテンションが上がると、自分の作業部屋で毛布を被って、マイクを通して熱唱しちゃうことも。モヤモヤや疲れが飛んで、すごくスッキリするんです。もともと何かに没頭する時間が好きで、子どもの頃に習っていた水泳や趣味の編み物でも、やり続けると無我夢中、ゾーンに入ってスッキリするというサイクルが自分にとって必要なのかな。子どもが小さいと時間が細切れになりがちで没頭するのが難しくて、ストレスが溜まったこともありました。ほんの小さなこと、ひたすらキャベツを切るのでもいいから、没頭する時間って大事です。
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一人で頑張りすぎた日々も
今となっては懐かしい
娘が小学校高学年になり、子育ては随分ラクになったと同時に、寂しさもあります。小さい頃は夫婦+子どもだったのが、今は3人チームという感じ。そう感じるようになったのはここ1年ほどで、仕事を以前のペースに戻せるようになったのも同じ頃からです。子どもとゆったり向き合いたくて、乳幼児期は在宅でできる仕事を中心にして、低学年の頃も昼間で終わるように調整していました。自分が望んだ形だし、娘は可愛くて仕方なかったけど、それでもストレスが溜まることはあって、特に1、2歳の頃はボサボサのおっぱいマシーンで、鏡に映る顔のシミにがっかりしたことも。少しラクになったのは、お喋りが上手になった4歳くらい。赤ちゃん時代は喋りかけても会話にならなかったので、「会話できてる! 人と喋ってる!」と思ったら、どれだけ荒らされようが邪魔されようが嬉しかったですね。
大変さは年齢ごとに変わるし、子育てって何かの修行かな?と思ったこともありました。でも、自分への反省も含めて、一人で全部頑張ろうとやりすぎたかなって。仕事じゃなくてもリフレッシュのために半日保育園に預けるとか、預かるよと声をかけてくれた先輩ママに、たまには「よろしく!」とお願いすればよかったなと思うんです。手を抜くことにどこか罪悪感を持っていたけど、そんな気持ちも今となっては懐かしいですね。
子どもに興味を持ってもらうには
親が楽しむことが大事
娘にも音楽をやってほしいという考えはないのですが、私が楽しそう
にやっていることに興味があるのか、ピアノをやりたいと言い出して続けています。習い事や教育は、子どもの意思に寄り添うだけ。勉強も大切だけど、好きなものを見つけて頑張る姿勢を後押しできればと思います。私はギターを始めたのが19歳と遅かったですが、鳴らした瞬間「一生やれる!」と運命を感じました。上手になることよりも、楽しむ気持ちのほうが大事だよと伝えています。
仕事、好きなこと、生活、家族、友達が繫がっている今のバランスが、すごく心地いい。それをこれからも大事にしていけたらなと思います。
撮影/谷口大輔 ヘア・メーク/板倉タクマ〈.nude〉 スタイリング/野見山唯 取材・文/宇野安紀子 編集/城田繭子
*VERY2020年6/7月号「自分を大切にできてる? わたしの、たまには大人時間」より。
*掲載中の情報は、誌面掲載時のものです。