おこもりレシピ_料理研究家・上田淳子さんのやり過ごしたい日のごはん

「毎日ごちそうである必要も、栄養満点である必要もない。夏は茹でた豚肉さえあればなんとかなる。」

テレビや雑誌で活躍する料理家の上田淳子さんは、双子の息子さんと、旦那さんの4人暮らし。子どもたちが幼い頃は家族みんなで食卓を囲んでいたそうですが、大きくなった今は家族揃って食事をする機会は減ってきたそう。
「子どもたちももう大学生。食べたいものがあったら自分でなんとでもできるはずなので、子どもたちのおかずを準備して帰宅を待つ生活からは卒業しました。でも、〝さくっと晩ごはんを済ませたい〟〝お酒の肴になにかをつまみたい〟といった私を含め、家族たちのいろんなニーズに応えてくれる茹で豚を常備しておくのが、習慣になっています」
上田家の茹で豚は、500g 程度の肩ロースの肉のかたまりを横半分に切り、塩(肉の重量の1.5%程度)をすりこんで一晩おき、かぶるくらいの水を入れた鍋で25分程度茹でるというもの。和洋中、ジャンルを問わずアレンジできるよう、ハーブやねぎなどは一緒に茹でず、あえてごくシンプルにするのがポイント。朝はトーストにのっけたり、夜はラーメンにのっけて食べたり、茹で汁をスープとして楽しんだり。家族それぞれ好き勝手に食べているそうです。すぐに茹でられなくても、塩をすりこんでおけば3〜4日は保つので、「帰ったら肉を茹でなきゃ」なんてプレッシャーとは無縁です。
「これさえ冷蔵庫に置いておけば、疲れて何もしたくない日も大丈夫。うすく切って葉野菜と一緒に食べるだけでも満足できます。夏は野菜が美味しい時期だから、野菜を口にする機会が多いはず。だからこそ、肉を一口でも食べるように意識してたんぱく質を摂って夏バテを防いでいます」
上田家の食生活は、このシンプルな茹で豚が支えているといっても過言ではありません。

香味野菜と一緒にそうめんにのっけて
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そうめんに薄くそぎ切りにした茹で豚と、バジルやみょうがなどの香味野菜をのせて。麺つゆには、レモン汁を少し加えてすっきりと。

甘じょっぱいタレで焼きつけて、丼に
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息子さんたちに人気の豚丼。さっと焼いた茹で豚に醤油、みりん、はちみつを合わせたタレをからめます。

お米を食べたくない日は、葉野菜で軽めに
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サニーレタスや大葉で茹で豚を巻いていただきます。コチュジャンをきかせた韓国風ダレだけでなく、マヨネーズとマスタードを2:1の割合で合わせた洋風ソースも添えるのが上田さん流。

上田淳子さん
料理研究家。神戸生まれ。ヨーロッパのホテルなどで修業を積み、独立。雑誌やテレビで活躍するほか、食育についての活動も。著書に『おかずチャートで迷わない! 即決! 晩ごはん』(学習研究社刊)『バターは調味料。ほんの少し使うだけでおいしくなる』(グラフィック社刊)『子どもはレシピ10個で育つ。』(光文社刊)

写真/松村隆史 取材・文/高田真莉絵 構成/松本朋子

※2019年8月号掲載の内容になります。