子どもを取り巻く犯罪、知っておくべき3つのこと|未就学児から始める防犯対策
子どもを狙う犯罪者は、絵や漫画にあるような〝いかにも不審者〟な雰囲気とは限りません。それなのについ「変なおじさんについていったらダメ」などと教えていませんか?まず、今、子どもを取り巻く犯罪についてを教えてもらいました。
教えてくれたのは……
NPO法人日本こどもの安全教育総合研究所 理事長
宮田美恵子さん
順天堂大学研究員・放送大学非常勤講師として大学生への講義のほか、児童・生徒への安全体験学習プログラムを推進。著書に『うちの子、安全だいじょうぶ?新しい防犯教育』(¥1,500/新読書社)など。
〝とにかく明るい性教育〟「パンツの教室」代表理事
のじまなみさん
「家庭でできる性教育」を伝えるべく、全国を飛び回っている元ナースママ。著書に『お母さん! 学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!』(¥ 1,400/日本能率協会マネジメントセンター)などがある。
知っておきたい3つのこと!子どもをとりまく犯罪の「今」
➀「あやしいおじさん」「知らない人」という言葉が子どもに誤解を生む!?
「知らない人や不審者に気をつけて」「変なおじさんが声をかけてきたら逃げて」とよく言います。でも、不審かどうかは見た目ではわかりません。不審とはあやしいということですが、たとえば自分と違う身体的や精神的に障がいがある人も、子どもの中では範疇に入ってしまい、差別することにつながってしまうことも。また、顔見知りによる犯罪も起こりえます。さらに犯人は男性であることが多いですが、なかには女性もいます。犯罪者が子どもの知らない人・知っている人である割合は約半々。知っている人のなかにも悪い人がいると教えるのは防犯教育の難しいところですが、発達段階に応じて教えていきましょう。「人」ではなく、「行為」に着目することで、ある程度解決できます。「どんな人かは決まっていない」ということをむしろ教えないといけません。
②日本人特有!? 子どもは〝いい子〟でいたくて断れないことも
子どもは「大人の言うことを聞きなさい」「いい子でいなさい」と教えられているので、大人の誘いを断るのは苦手。とくに、日本人の謙遜文化もあいまって、「頭ではいけないとわかっているのにイヤと言えず、ついていってしまった」というケースも。大前提として、大人にNOと言うのは悪くないと伝えること、そして自分がとても愛されている存在であるということを伝えることが大切です。自分は大事な存在だから身を守ろうという原点があってこそ、いざというとき身を守る行動がとれます。
③犯罪者は、親が目を離した隙・一人になった隙を狙っています。ポイントは2つ!
1.トイレ
商業施設のトイレは、建物の端っこにあったり、必ずしも監視カメラが死角なくついているわけではありません。トイレの前にはベンチがあり、男の人が一人でスマホ片手に何時間も待っていても今時はおかしくないですね。そこで待っていれば、今子どもだけがトイレにいるとわかるし、悪意があれば、そこで事件が起こってしまうのです。
2.下校時一人になった時
学校にあがると一人になる時間ができます。集団下校で、一人になる最後の瞬間を犯罪者は狙います。16:00ごろの犯罪発生率が高いというデータも。多くは行き当たりばったりではなく、好みの子を見つけた上で必ず下見をして、逃げ道まで考えています。
今、子どもを狙った犯罪は増加傾向にあります
2000年以降、犯罪の認知件数自体は減っていますが、子どもの事案は2013年以降増加に転じ、性犯罪自体は減っていません。13歳未満の子どもに対する性犯罪の検挙件数は全国で約900件以上ですが、検挙されていないケースや子ども自身が気づかない場合を含めると実数はその5倍や10倍ともいわれます。また被害に遭うのは男児3:女児7で(※1)、性犯罪の場合約8割は身近な大人や顔見知りが加害者(※2)というデータも。犯罪の前兆的な被害に遭っている小学生は13%という調査(※3)もあり、男女とも決して人ごととは言えない状況です。
出典※1=埼玉県警察署「子供に対する声かけ事案(平成31年1月~令和元年11月)」/
出典※2=内閣府男女共同参画局「男女間における暴力に関する調査(平成29年度)」/出典※3=NPO法人日本こどもの安全教育総合研究所調べ
取材・文/有馬美穂 編集/羽城麻子 イラスト/なおこちゃん
*VERY2020年3月号「”知らない人についていったらダメ”という言葉じゃだめ? 未就学児からはじめたい・防犯、子どもにどう伝える?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。