「徒となる」=ととなる?読み間違えやすい慣用句5つ
日常的に見聞きする慣用句。普段は平仮名表記されることも多いため、いざ漢字表記になると意外と読めない……なんてことも。
この記事では、そんな“間違えがちな慣用句”をピックアップして出題します。あなたは全問正しく読めますか?
1.「徒となる」
「準備していたものが、かえって徒となった」など、「無駄になること」を「徒となる」と言います。ぱっと見て「ととなる」と読んでしまいがちですが、「ととなる」ではありませんよ。
ちなみに、漢字の「徒」には「無駄」「無益なさま」といった意味があります。そんな「徒となる」の正しい読み方は……
「あだとなる」です。
「あだ」と読む漢字と言えば「仇」を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、「仇」の意味は「仕返しをする相手」や「仕返しをすること」を意味します。同じ読み方でも「徒」とは意味が異なるため、混同しないよう気を付けましょう。
2.「噯にも出さない」
どんなに仕事が忙しくても、決して疲れた様子を見せない。そんな人のことを「仕事の疲れを噯にも出さない」ということがあります。
「噯にも出さない」の「噯」とは、「胃の中に溜まった空気やガスが口から排出されること」、すなわち「ゲップ」のことを意味する言葉です。そんな「噯にも出さない」の正しい読み方は……
「おくびにもださない」です。「あいにも出さない」ではありませんよ。
3.「梲が上がらない」
「出世できず、ぱっとしないこと」を「梲が上がらない」と言います。
「梲」とは「棟木(むなぎ/屋根の最も高い部分に取り付ける部材)を支える重要な柱」のことで、裕福な家でないと梲を上げられなかったことからきているそうです。
いったい、何が上がらないのでしょうか? 「梲が上がらない」の正しい読み方は……
「うだつがあがらない」です。ちなみに「梲」と書いて元々は「うだち」と読んでいましたが、「うだち」が音変化して現在のように「うだつ」と読まれるようになりました。
4.「雁字搦め」
「雁字搦め」とは元々、「縄などを縦横に厳重に縛ること」を意味する言葉です。
現在では、本来の意味よりも「厳しいルールで雁字搦めにされる」といったように「束縛がきつくて自由がまったくない」といった意味合いで用いられることが多くあります。
そんな「雁字搦め」の正しい読み方は……
「がんじがらめ」です。ちなみに「雁字」とは鳥の雁(がん)が一列に並んで飛んでいる様子を文字にした言葉ですよ。
5.「黒白を争う」
「“くろしろ”を争う? オセロの話?」などと勘違いしてしまう人もいるかもしれませんね。「黒白を争う」とは「物事の是非をはっきりさせること」という意味の言葉です。
同じ意味でも、現代においては「黒白を争う」より「白黒つける」の方がよく耳にすることでしょう。そんな「黒白を争う」の正しい読み方は……
「こくびゃくをあらそう」と読みます。「白黒」の場合は「しろくろ」と読んでも「黒白」は「くろしろ」と読まないのがポイントです。
いかがでしたか? 「黒白を争う」などは、普段「白黒つける」といった言い方をすることも多く、あまり聞き慣れない言葉だったかもしれません。
もし今回読めなかった漢字があれば、慣用句の意味とともに正しい読み方を覚えておきましょうね。
参考文献日本語倶楽部〔編〕『読めないと恥ずかしい漢字完全制覇本』河出書房新社
文/大内千明 画像/Shutterstock(Atsushi Hirao、Ollyy、fizkes、DarkBird、Body Stock)