綾瀬はるかさん(40)「最初は全然楽しくなかった」芸能生活25年で変化した仕事の向き合い方

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NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』ではナレーションを担当。その透明感のある声が、物語にやさしい余韻を添えている綾瀬はるかさん。6月スタートのNHKドラマ『ひとりでしにたい』で、終活について考え始める30代後半の独身女性を演じます。よりよく死ぬためによりよく生きる方法を懸命に模索していく女性をどう表現するのか──。作品への思いや、“推し活”トークで見せた飾らない素顔まで、綾瀬さんの“今”に迫ります。

Profile

1985年3月24日生まれ。広島県出身。2000年にデビュー後、ドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』『JIN -仁-』『義母と娘のブルース』などで国民的女優に。映画では、『リボルバー・リリー』で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。演技力と存在感を兼ね備えた日本を代表する実力派女優のひとり。

30代後半女性の漠然とした不安が、すごくリアルで自分と重なった

――このドラマに出演を決めた理由を教えてください。

漫画を読んでいて、すごく共感できることが多かったんです。あと、“人は誰しも死に向かっていく”っていうテーマもすごく考えさせられて。不安になることもあるけど、それ以上に勉強になることがたくさんありました。また、主人公の鳴海が、オタ活でキラキラしていたかと思えば、鬼の形相になったり、もう感情がジェットコースターみたいで。そこがすごく魅力的だなって思ったんですよね。脚本を読ませていただいて、「これ、やってみたいかも」って思えたんです。

――鳴海というキャラクターに、どんな部分で共感しましたか?

30代後半の女性の漠然とした不安とか、「自分はこう思っているけど、世間とはズレてるのかも」っていう感覚。そういう心のモヤモヤを鳴海も抱えていて、それがすごくリアルで、自分とも重なりました。

――「若いころ自由と思っていたものは、年を取ると孤独と不安に変わってしまうんだ」という鳴海のセリフが印象的でした。ご自身でもそういう変化を感じたことはありますか?

ありますね、すごく。35歳くらいになって初めて“死”っていうものを意識した気がします。「みんな、いつかは本当に死ぬんだ」ってふと感じた瞬間があって。それまでは、将来に対する希望もあって、“可能性は無限大!”みたいに思っていました。そのときどきでいろいろ自分で選択しているようで、実は、決まっていることが多いなあって。鳴海のセリフは、私の中でモヤモヤしている感情を、ちゃんと具現化してくれた言葉で、「やっぱりそうだよね」と共感しました。

笑いながら人生を締めくくれたら最高

――死を意識するようになったきっかけはあったんですか?

身近な人が亡くなったことが、一番大きかったです。それまでにも、祖父が小さいころに亡くなったりはしていたのですが、あまり実感がなかったというか、20代ってそういう現実がまだ遠くて。でも、その出来事で「そうか、人って本当に死ぬんだ」ってガツンと感じました。

――そんな経験を経て、ご自身の理想の人生の締めくくり方って、どんなふうに考えていますか?

「あ〜楽しかった、あはは!」って、笑いながら終われたら最高だなって思います。やっぱり笑顔でいられるのが一番ですよね。

――この作品を通じて、ご自身の人生について何か考えるきっかけにはなりましたか?

“死”について考え、それを受け入れることで、この人生をよりよく生きようと思えるようになりました。まず自分の足で立って、一人でちゃんと生きよう、と。鳴海を演じながら、「せっかくの人生、もっと楽しもう!」って自分にも言い聞かせていた気がします。人生を楽しんでいる鳴海にたくさん背中を押してもらいました。

――鳴海が推しのアイドルの動画に合わせて歌って踊るシーンがすごく可愛かったです。撮影中のエピソードがあれば教えてください。

ありがとうございます(笑)。実は私、ダンス経験がそんなにないんです。なので、クランクインの2ヶ月前から練習しました。キャッチーで覚えやすい曲なので、練習中もすごく楽しくて、かなり盛り上がっていました。途中で、いろんな思いを表す3人の鳴海が現れるのですが、右側の鳴海がすっごい面白い動きをしてるんですよ(笑)。「自由に動いていいです」と言われて踊ったのですが、改めて映像で見ると、楽しそうで、「いいな〜」って。ちゃんとしたダンスにはなっていないんですけど、オリジナリティがあるし、ぜひ右側の鳴海に注目してほしいです。

――付箋がたくさん貼られた原作のコミックスを現場に持ち込んで撮影に臨んだと伺いました。付箋はどんなところに貼っていたんですか?

脚本が原作にかなり忠実だった部分もあり、面白いと思ったシーンを中心に貼っていました。漫画の中での表情やテンションを参考にしつつ、「これは実写でやるとどうなんだろう?」っていう感覚で確認して。漫画だと成立する表現でも、リアルにやるとちょっとやりすぎになっちゃうこともあるので、どこまで取り入れられるかはすごく考えていました。

――ピカソみたいな顔になっているコマもありましたね(笑)。あれは難しいポイントでしたか?

難しかったですね〜。できなくてちょっと悔しかったところもあります(笑)。「これはちょっとオーバーかな」って判断してカットしたりもしました。付箋の部分はなるべく取り入れてみたくて。「この顔はこうだったんですけど、やりすぎですかね?」みたいな感じで、現場で見せて相談したりしていました。

子供の頃に憧れていたのは、CAの伯母

――また、鳴海が子どものころ、おばさんに憧れるっていう描写がありましたが、綾瀬さん自身にも憧れていた方はいましたか?

いましたね。実家に遊びに来ていた父方のお姉さん、つまり私にとっての伯母ですね。国際線のCAさんだったんですけど、もう纏っているものが違ってて(笑)。私は市内のわりと田舎の方に住んでいたので、「わぁ、なんか違う世界の人だ!」って思っていました。鳴海とすごく重なるところがあります。

――CAさんに憧れたことも?

いや、なりたいとまでは思わなかったけどすごくかっこいいなって。都会的というか、「世界を飛び回ってる人」っていう感じがして、憧れの存在でした。

最近は自分の縛りを手放せるようになってきた

――デビューから25年になりますが、演じることへの思いに変化はありましたか?

基本的な思いはあんまり変わってないかもしれないですね。

――最初から「楽しい」って感じていたんですか?

それが、最初は全然楽しくなかったです(笑)。どちらかというと「大変だな」っていう気持ちのほうが大きくて。違う誰かになるって、ものすごくエネルギーが必要なんですよね。ただ、今回はコメディっていうのもあって、すごく楽しかったです。役柄による部分は大きいんですけど、経験を重ねるうちに、「これくらいはできてなきゃ」って自分で自分を縛り付けることもあり、逆に緊張してしまうこともありました。でも最近は、そういうのを少しずつ手放せてきたかもしれません。

――ちょっと肩の力が抜けてきた感じですか?

そうですね。演じることって“生もの”だから、正解がないんですよね。だからこそ、その瞬間に生まれたものが正解なんだって思えるようになって。「こうじゃなきゃ」って完璧主義だったところから、「そういうのもアリだよね」って、揺らぎも含めて楽しめるようになった気がします。

推しがいる生活ってこんなに楽しいんだ⁉ と気づいた

――今回の作品で、推しに夢中な鳴海がすごく印象的でした。綾瀬さんご自身は“推される側”なことが多いと思うんですが、「推し活」ってされたことありますか?

実は私、これまで“推し”を持ったことがない人生だったんです。でも、このドラマを通して、「推しがいる生活ってこんなに楽しいんだ!?」と思って、私も何か推せるものを探してみようかなあって、現場でそんな話をしてました。

――どんな“推し”が見つかりそうですか?

私は、食べ物かなあ。朝ごはんの美味しいところを見つける、朝の推し活みたいなことをやってみたいかも(笑)。

Information

土曜ドラマ『ひとりでしにたい』(全6回)

カレー沢薫による同名漫画を大森美香脚本でドラマ化。ひょんなことから終活について考え始める30代後半独身の主人公・山口鳴海(綾瀬はるか)が、「死にどう向き合うべきか」という問いに体当たりで挑む、笑って泣ける「終活」コメディ。NHK総合にて毎週土曜22時より放送。初回は6月21日スタート。

ツイルシャツ¥39,600(オーラリー)グルカパンツ¥49,940(ザ・リラクス)ピンキーリング¥275,000(オー/ハルミ ショールーム)リング¥28,600(マユ/マユ ショールーム)シューズ¥155,100(セルジオ ロッシ/セルジオ ロッシ ジャパン カスタマーサービス)

撮影/You Ishii ヘアメーク/栗原里美(Three PEACE) スタイリング/山本マナ 取材/服部広子 編集/越知恭子