指の関節が痛い、引っかかる…「ばね指」の解決法5選【薬剤師が解説】
朝起きると指の関節の痛みやこわばりが気になる……。さらに 朝に痛いと感じていたにもかかわらず、日中に家事や仕事で指を使っていると痛みが緩和する。そんな方は「ばね指」かもしれません。ばね指とは指の腱鞘炎(けんしょうえん)で、軽度であれば治りますがひどくなると指が変形することも。今回は無意識でやっているかもしれないNG習慣をお伝えします。
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1.そもそも「ばね指」とは?
指が曲げ伸ばしできるのは「屈筋腱(くっきんけん)」の働きのおかげです。屈筋腱とは、前腕にある屈筋と指とをつなぐ腱。この腱が筋肉を伸縮させる働きを促すことで、指の曲げ伸ばしができます。
屈筋腱はスムーズな動きを促す組織「滑膜」に包まれています。この滑膜が何らかの原因で炎症を起こすと、指の動きが悪くなる「ばね指」になるのです。
ばね指になると次のような症状があらわれます。
■指の引っかかり
■指関節の痛み
■手のひらの指の付け根あたりの腫れ・熱感・痛み
■指がこわばる
■指が伸ばせない
■指をまっすぐにしようとするとカクンと跳ねる
一つでも当てはまる方は整形外科を受診しましょう。ばね指かどうかは、レントゲンや超音波検査で調べるとわかります。ばね指は治療できる疾患です。薬物療法や外科手術などで改善を目指せるため、我慢せず医師に相談しましょう。
2.ばね指の原因は?
ばね指は、関節リウマチなどの疾患で発症することもありますが、日常生活での指の酷使やホルモンバランスの変化も関係があるとされています。例えば「パソコン作業」「テニスやゴルフなどの手に負荷がかかるスポーツ」「鍵盤楽器の演奏」「家事」などで指を酷使することが多かったりすると若い人でもばね指が起こることがあります。またホルモンバランスが変化する妊娠中や出産後のタイミングはリスクが高まります。
しかし、発症リスクが特に高い傾向にあるのは50歳前後の女性です。いわゆる更年期に入ると女性ホルモンのバランスが崩れ、腱や腱鞘(腱を包む組織)の状態が弱くなります。そこに家事やパソコン仕事、スポーツなどで負荷をかけ続けると炎症を起こすリスクが高まるのです。
3.無意識にやりがちなNG習慣と対策
ばね指の原因となるNG習慣は大きく2つに分けられます。1つは「指先の血行不良を起こす習慣」、もう1つは「ホルモンバランスを崩す習慣」です。
<指先の血行不良を起こす習慣>
指先の血行不良が続くとばね指になるリスクが高まります。血行不良を起こすと腱鞘の内部が狭くなり、指の動きを悪くするためです。指先の血行が悪くなるNG習慣の具体例としては「たまったストレスを放置する」「生活習慣が乱れている」「運動不足」などが挙げられます。
たまったストレスを放置したり生活習慣が乱れていたりすると、自律神経のバランスが乱れて血管が常に収縮されます。血管の収縮が継続すると末端まで血流が行き届きにくくなり、血行不良が起きるのです。
また運動不足は筋肉量を減らし、熱産生の効率が悪くなったり血流を促すポンプ機能を低下させたりします。その結果、指先にまで血流が行き渡りにくくなり、血行不良につながります。
<ホルモンバランスを崩す習慣>
ホルモンバランスを崩すNG習慣としては「睡眠不足」「ストレスの放置」「栄養の偏り」などが挙げられます。
特に女性の場合、更年期は女性ホルモンの分泌量が大きく減少し、男性ホルモンが優位になる傾向にあります。生理的な現象のためホルモンバランスが崩れるのは仕方のないことですが、前述のようなNG習慣はリスクを高めるので注意しましょう。
対策方法を以下で解説するので、できることから積極的に実践しましょう。
①ストレッチで血行を促す
ストレッチは血行を促す効果があるため、定期的に行うことで痛みの緩和やばね指予防につながります。
<ストレッチ方法1>
(1)手のひらを前に向けた状態で自分の前に出す。
(2)軽く手首を反らせる。
(3)指を伸ばして反対側の手でさらに指を自分の方へ反らせる。
(4)最低でも20秒キープする。
(5)反対の手も同様に行う。
<ストレッチ方法2>
(1)胸の前で手のひらを正面に向けて指を大きく開く。
(2)手のひらが顔の横の位置になるように腕を上げる(イラスト参照)。
(3)手をグー・パーと閉じたり開いたりする動きを10回程度行う。
(4)手をグーにして胸の高さまで下ろす。
(5)手をグー・パーと閉じたり開いたりする動きを10回程度行う。
ストレッチしている間も呼吸を忘れずに行いましょう。
②ストレス発散や生活習慣の改善に取り組む
自律神経やホルモンのバランスを整えるには、ストレスの発散や生活習慣の改善が欠かせません。
「食事の栄養をバランスよく取る」「睡眠時間をしっかり確保する」「適度に運動する」「食事・睡眠のリズムを一定に保つ」などのよい生活習慣が身についているかどうか見直してみましょう。習慣を一度に変えるのは大変ですので、徐々に変えていくことをおすすめします。たとえば、月に1つずつ実践することを増やしていくとストレスや負担がかかりにくいでしょう。
③手を温めて血行を促す
指先や手の血行不良を感じる場合は手を温めましょう。具体的な方法としてハンドマッサージがあります。
<ハンドマッサージの方法>
(1)十分に滑るほどのハンドクリームを手の甲に取る。
(2)手の甲に広げたクリームを、親指側から小指側に向けてマッサージしながらなじませる。
(3)指1本ずつていねいにクリームをなじませる。
(4)指1本ずつ爪の周りを軽くプッシュしてマッサージする。
(5)指の股にもクリームがなじむようマッサージしながら広げる。
(6)親指と人差し指のあいだを気持ち良いと感じる強さでプッシュしながらマッサージする。
④手を冷やして炎症を落ち着かせる
熱や腫れ、痛みを手指に感じる場合はアイシングをしましょう。炎症を落ち着かせるには冷やすことが大切です。アイシングは、保冷剤や氷をタオルに包んで当てる方法が手軽です。
⑤漢方薬を試してみる
体の栄養や水分バランスが乱れていることも、ばね指のリスクを高めます。食事やこまめな水分補給で改善できる場合もありますが、漢方薬を飲んでバランスを整えるのもおすすめです。
<ばね指が気になる人におすすめの漢方薬>
・温経湯(うんけいとう):婦人薬としても有名な漢方薬で、ばね指でなくてもよく手掌のほてりで用いられます。
・当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう):血流を促進して巡りを良くする漢方薬です。熱の産生を促し、末端の冷えをとり除きます。
・桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう):血流を良くして冷えた体を温め、痛みを緩和します。関節痛、神経痛などに用いられます。
漢方薬は体質に合ったものを選んで初めて効果を発揮します。合わないものを服用すると、場合によっては副作用が起こることもあるため、初めに漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してから服用しましょう。
薬剤師・元漢方薬生薬認定薬剤師 / 修士(薬学) / 博士(理学)。神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いからオンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
編集/根橋明日美
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