「服に迷わなくなったら、キャリアが動き出した」1000枚以上の服を整理したエディターが大人に伝えたいこと。
出勤前、服でいっぱいのクローゼットで着る服に迷って遅刻しそうになる…そんな経験をしたことがある人は多いはず。ファッションエディターでありながら服にもキャリアにも迷っていたという昼田さんに、30代に伝えたいことを伺いました。
30代はキャリアもワードローブも、自分を見つめ直すタイミング
―――『1000枚の服を捨てたら、人生がすごい勢いで動き出した話』という著書のタイトル、インパクトがすごいです。キャリアや結婚などに揺れ動くCLASSY.世代にも〝服捨て〟は効果がありますか?
昼田さん:(以下、敬称略)20代は捨てるより、得ることに専念していいと思います。仕事も落ち着いてきて、社会人としてのキャリアも10年くらいの30代は人生を見直すタイミング。出版社勤務を経て、フリーランスのエディターになって…、私も人生に行き詰まっていた36歳の時にクローゼットの整理に着手しました。
―――実際に捨て始めると、すぐに変化はありましたか?
昼田:「いつか使うかも…」とクローゼットにずっとあった仕事の資料を、勇気を出して捨ててみたら次の日に妊娠が発覚してびっくり。「捨てたら入ってくる」の法則を実感しました。その後1000枚の服を捨て、50枚に絞ったクローゼットが完成したら「好きな場所で好きに働きたい、自然の多い環境で子育てしたい」という夢も実現。山形へ移住しました。
―――すごい変化!クローゼットを片付けたいと思ってはいても、忙しくてなかなか…という人も多いと思うのですが…。
昼田:忙しくて整理できないというのは本末転倒で、ものがあるから時間を奪われるんです。まず、捨てる。クローゼットと人生は連動していて、クローゼットをオーガナイズできない人は自分の人生もオーガナイズできない。これは、100%断言できます(笑)。
上司も同僚もいない、クローゼットで取捨選択の訓練をしよう
―――クローゼットの片付けは、キャリアとも連動していますか?
昼田:クローゼットは自分の感情を見つめ直す場所。捨てる、残す、のジャッジを繰り返す中で、自分の本音に遭遇します。服を買う時は、他人にどう見られたいか、意識が他人に向きがちですが、捨てる作業は自分にベクトルを向ける時間。上司や同僚、他人は排除して、自分の本音をキャッチする訓練をしましょう。私自身、どう見られたいかという概念を捨てて服を絞ったら、毎日違う服を着てオシャレを頑張っていた頃よりもオシャレを褒められることが増えました。捨てる作業を通して培った判断力はキャリアにも有効。自分の選択に自信が持てるようになっていきます。
〝不快な服〟に敏感になれば、苦手な仕事も手放せるはず
昼田:また、〝服捨て〟は不快なものをキャッチ、ピックアップする作業。例えば、丈が少し短くてバランスが難しいワンピース、毛玉ができやすいニット、手入れが面倒なコートなど、人生を詰まらせている服は早く手放しましょう。不快な服にちゃんと気づけると、自分にとって心地いい服も自ずとわかってくる。仕事も同じです。TO DOが多すぎて、やりたくないけどやらなきゃいけないことに追い込まれている人も多いのでは?誰かに褒められるより自分のやりたいことを優先、やりたくないことはやらない、というのも選択のひとつ。私にはできない仕事があることを認めて、無理に頑張らない。苦手なことを潔く手放すと、案外得意な人がさらりとこなしてくれることも。手放すことで、自分の得意なことにフォーカスした働き方ができるようになってくるはずです。
減らしたからといって、新たに買っていけないワケじゃない
―――〝服捨て〟の効果に共感しながらも、トレンドに敏感でオシャレを謳歌しているCLASSY.世代、服を買わない選択は寂しいです…。
昼田:服を捨ててすっきりしたら、そのクローゼットを死守しなければいけない…!なんてことはなくて、新しいものを買うことももちろんOKです。買うことで自分を責めないようにしてほしい。買ってばかりで溜め込むのではなく、不要なものを排出しながら新しいものも入ってくる。吐いたら(捨てたら)、吸う(入れる)、〝呼吸できるワードローブ〟が理想です。減らす=オシャレをあきらめるということでは決してなく、むしろ自分のスタイルが明確になって、より服が好きになると思います。
オシャレもキャリアも、自分の型を作ってみよう
―――買っていいなら、クローゼットの片付けもよりポジティブにできそうです(笑)。著書に収納法が載っていないのも斬新でした。
昼田:クローゼットは人生そのもの。捨てることで隙間ができて、気づかなかったことに気づける。誰かを目指すことをやめて、自分の型ができる。人の型にはめなくていいから、そもそも収納術なんていうものは必要ないというのが私の考えです。「私はこ う!」という凝り固まった固定観念から自由になると突拍子もないアイディアが湧いたり、今までやってみなかったことに目が向いたり、新しい自分の一面を発見することも。服を捨ててもなくならない、自分のよさをベースに、オシャレもキャリアも、自分の型を作りましょう。自分で選ぶことを通して、「This is me!(私は私!)」と思えたら勝ち!クローゼットも人生も、〝心地いい〟を基準に選択することをぜひ、実践してみてください。
\30代CLASSY.読者に伝えたい金言/
昼田祥子
ファッションエディター歴21年。出版社勤務を経てフリーランスに。2016年からクローゼットの片付けに着手し、1000枚あった服を整理。その体験をWEBメディア『mi-mollet』に綴る。新著『1000枚の服を捨てたら、人生がすごい勢いで動き出した話』(講談社)も重版がかかるなど大反響。長身に似合うパンツとシャツがトレードマーク。
撮影/水野美隆 ヘアメーク/室橋佑紀(ROI) 取材/北山えいみ 再構成/Bravoworks.Inc