小島慶子さん、40代の美容は「盛りすぎない」エイジングを目指そう!

エッセイスト、メディアパーソナリティの小島慶子さんによる揺らぐ40代たちへ「腹声(はらごえ)」出して送るエール。今回は「エイジング」について。

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小島慶子さん

1972年生まれ。エッセイスト、メディアパーソナリティ。2014〜23年は息子2人と夫はオーストラリア居住、自身は日本で働く日豪往復生活を送る。息子たちが海外の大学に進学し、一昨年から10年ぶりの日本定住生活に。

『盛りすぎないエイジングを』

100歳の尼様にお目にかかったことがあります。輝いていました。後にも先にも、実際に光を放つ人は他に会ったことがありません。尼様ですから髪を剃り、寒い時期だったので毛糸の帽子を被っていました。大変小柄な方で、ゆっくりと歩く姿は腰から上が完全に床の方を向き、こちらにニット帽の頭頂部だけが見えています。そして畳に座られたときに、ようやくお顔が見えました。パッとハスの花が咲いたよう! 思わず息を呑みました。

100年分の人生の刻まれた素肌は健やかで、唇はほんのり紅を差したように血色が良く、眼差しは強く瑞々しく、室内なのにそこだけ日が当たったように明るい。爪にももちろん飾りはなく、何も華やかなものは身につけていません。でも、衝撃的に美しかったのです。何がって、存在そのものが。

いわゆる「見た目の美」は、多くの場合は年齢を感じさせない、均整のとれた目鼻立ちを言うのでしょう。でも100年経ったら誰でも若い頃の顔立ちはわからなくなるし、肌には時の痕跡が幾重にも刻まれます。それでも、尼様はこれまでに会ったどんな女性よりも美しかったのです。100歳の素顔のままの輝きです。ああ、私も何歳まで生きるかわからないけれど、生きた分だけはあんな美しさを湛えたいものだな! と心底思いました。

尼様は幼い頃にお寺に入って、なんと90年以上をその小さな尼寺で暮らしているとのこと。子どもから少女へ、大人へと年齢を重ねながら、何度鏡に映る我が身を見つめたことでしょう。いわゆる美容やおしゃれとは無縁の生活です。尼様の放つ光はきっと、規則正しい生活を送りながら命に感謝し、与えられた身体を日々丁寧に扱っているからなのではと思います。

メイクやファッションは何より自分自身が楽しく健やかでいられることが一番だから、他人のやり方をとやかくいうのは余計なお世話。しっかりメイクする人も、そうでない人もいますよね。いずれも基本は、自身を労り、慈しむことなんじゃないかと思います。そして年齢を重ねるほど、だんだん盛らないように心がけるといい気がするのです。

100歳の美に打たれた私は、今は生身の手入れ、すなわち「お棺に持ち込める部分を手入れする」ことに注力しています。もちろん尼様のように暮らすことはできないので、あくまで心もちの話ですけど。「肌と骨と眼球」をケアしています。

もともと化粧するのも落とすのもめんどくさいので、普段はなるべくメークはしたくない。顔は15年ほど前にシミをとって以来、かかりつけの美容皮膚科の先生にレーザーで定期的に手入れしてもらっています。色むらを整えたり、コラーゲンで励ましたり。おかげで普段は日焼け止めとトーンアップ下地とマスカラだけで済み、非常に楽です。

シワはずっと増えるがままにしていましたが、50歳を過ぎてから先生の勧めもあり、時々ボトックスを打って特に深いシワだけ目立たないようにしています。本人しかわからないけど、笑ってもどこか悲しげに見える熟年ならではの翳りが少しだけ緩和されました。ボトックスは打ち続けなければ数ヶ月で元の自肌に戻るので、気が楽です。

四半世紀続けたネイルサロン通いはコロナ禍をきっかけにやめました。サロンに行かないと加齢に伴う爪の縦ジワが目立つのだけど、なんだか削るのが可哀想になって、今では野生のままにしています。薄桃色の素爪の端っこに白い三日月がちょこっと覗いているのは健やかでいいものです。血色で健康状態のチェックもできます。そして骨。骨密度は毎年チェック。

身体で唯一骨が剝き出しになっているのは、口の中。歯です。こちらは、年に一度はかかりつけ医でクリーニングしています。着色が気になる時はホームホワイトニング。最近は加齢でエナメル質がクリスタルみたいに透けてきたので、フッ素入りのペーストや洗口液でせっせと補強して、歯養生をしています。歯は絶えず動いているので、食事の時には左右均等に嚙むように心がけ、時々マウスピースで歯列を整えています。ちゃんと嚙めるって、とっても大事なことだから。

目ん玉も大事です。こまめに目薬をさし、半年に一度は眼科に行って、飛蚊症の経過と視力の変化を調べてもらっています。目尻にシワが寄っても瞼が弛んでも、眼球さえ瑞々しく表情豊かなら、人として魅力的です。面白そうなことや興味のあることに積極的に取り組むのも瞳の輝きを維持する秘訣ですよね。

揺らぎ世代の美容は少しずつ老いていく体を手入れして、変化を受け入れる作業なのかもしれないですね。肌も爪も歯も永遠に昔のままというわけにはいきません。生きることは、変わり続けることですから。今日も無事に生きてくれている我が身に感謝して、いい笑顔で過ごしましょう!

文/小島慶子 撮影/河内 彩 ※情報は2025年9月号掲載時のものです。 ※情報は2025年9月号掲載時のものです。

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