^{『波うららかに、めおと日和』（フジテレビ）公式ホームページより}

話題作が多かった2025年春ドラマも、すべてが最終回を迎えました。その中からドラマオタクのコラムニスト小林久乃と元JJ編集長イマイズミが、演技が印象に残った俳優をそれぞれ5人ずつピックアップして、推しの理由を熱く語ってみました！

【コラムニスト小林が選んだ俳優ベスト５】
①河合優実／『あんぱん』（NHK総合）
②久保田磨希／『続・続・最後からの二番目の恋』（フジテレビ系）
③本田響矢／『波うららかに、めおと日和』（フジテレビ系）
④松下由樹／『ディアマイベイビー～私があなたを支配するまで』（テレ東系）
⑤一ノ瀬ワタル／『対岸の家事～これが、私の生きる道！～』（TBS系）

【元JJ編集長イマイズミが選んだ俳優ベスト５】
①高橋光臣／『夫よ、死んでくれないか』（テレ東系）
②千葉雄大／『ダメマネ！－ダメなタレント、マネジメントします－』（日本テレビ系）
③松下由樹／『ディアマイベイビー～私があなたを支配するまで』
④石井杏奈／『PJ～航空救難団～』（テレビ朝日系）
⑤塩野瑛久／『魔物』（テレビ朝日系）

演じる役がどんどん広がる一ノ瀬ワタルと塩野瑛久

元JJ編集長イマイズミ（以下、イマ）：いやー、5人に絞るのが難しかったー。それぞれのドラマが最終回に向かうにつれて、どんどん変わっていきましたよ。

コラムニスト小林（以下、小林）：最初は分からなかった演技の意図が、後半で「なるほど」ってなることありますもんね。

イマ：では、早速5位から順番にいきましょう。

小林：私が5位に選んだのは『対岸の家事～これが私の生きる道！』で主人公・村上詩織（多部未華子）の夫・村上虎朗を演じた一ノ瀬ワタルです。

イマイズミ：へー、意外なセレクトですね。

小林：野呂佳代が出るドラマは全部ヒットするという野呂佳代伝説に続いて、一ノ瀬ワタル伝説が始まる気がします。『対岸の家事』も最初はこんなに人気が出るとは思ってなかったんですが（笑）、TVerのお気に入り登録数はなんと約120万！

イマイズミ：他に春ドラマで100万超えしているのは『続・続・最後から二番目の恋』と『波うららかに、めおと日和』（ともにフジテレビ系）だけですから、かなりの好成績ですね。

小林：家族を溺愛する一家の大黒柱として、とてもいい演技をしてたんですよ。ふとした出来事で子供みたいに拗ねたりするんだけど、どこか憎めないキャラ。

イマイズミ：元プロ格闘家だから迫力のある体格なんだけど、清潔感があるし、なんか可愛らしいですよね。

小林：そのガタイの良さを生かした『サンクチュアリ-聖域-』（Netflix／2023年）で大ブレイクした彼だけど、意外とキャリアが長いんですよ。

イマイズミ：エキストラ出演だけど、俳優デビューは映画『クローズZERO II』（2009年）なんですね。

小林：『HiGH&LOW』シリーズ（2015年／日本テレビ系）など、最初は格闘家としてのキャリアを生かした役が多かったんですが、『獣になれない私たち』（2018年／日本テレビ系）や『親バカ青春白書』（2020年／日本テレビ系）、そして『Believe-君にかける橋-』（2024年／テレビ朝日系）など話題作への出演も増えていって。

イマイズミ：昨年大ヒットした映画『はたらく細胞』（2024年）では外肛門括約筋の役（笑）。役の幅が広がってますよねー。

小林：あの体格でいろんな役を演じられるんだから、唯一無二の俳優だと思います。今年11月に配信される、岡田准一主演・プロデュースの『イクサガミ』（Netflix）の出演も控えています。

イマイズミ：山田孝之、玉木宏、二宮和也など、そうそうたるメンツと並んでて凄い！

小林：続いて、イマイズミさんの5位は？

イマイズミ：『魔物』で主人公・華陣あやめ（麻生久美子）と許されない恋に落ちる源凍也役を演じた塩野瑛久です。

小林：昨年は『光る君へ』（2024年／NHK総合）に一条天皇として大河ドラマ初出演で話題になりました。

イマイズミ：その一条天皇がこのドラマではとんでもないDV男に！（笑）。清々しいくらい振り切ったパンチや体重の乗ったキック、そして容赦ない首絞め。さすが戦隊ヒーロー出身（『獣電戦隊キョウリュウジャー』（2013年／テレビ朝日系）のキョウリュウグリーン）です。

小林：第3話で凍也が魔性の男として本性を出してから物語が動き始めましたね。

イマイズミ：このドラマでは凍也が服を脱ぐシーン結構あったんですが、バキバキにビルドアップしてました。

小林：やっぱりオスカーからLDHに移籍して正解でしたね。事務所が運営しているトレーニングジムもあるし（笑）。

イマイズミ：美形なだけあって『来世ではちゃんとします』（2020年／テレ東系）のAくんのようなイケメン役はお手の物ですが、『無能の鷹』（2024年／テレビ朝日系）でのオドオドキャラも意外にハマってましたね。

小林：全然関係ないんですけど、塩野くんの実家って神奈川でクレープ屋をやってるんですよね。

イマイズミ：ホントに全然関係ない（笑）。なんで、そんなこと知ってるんですか？

小林：私、塩野くんの写真集『栗山航×塩野瑛久 PHOTO BOOK connect』（講談社）を作ってますから！

二人の推しは常軌を逸した怪演が印象深い元祖トレンディー俳優

小林：私が選んだ4位は『ディアマイベイビー』で狂気のマネージャー吉川恵子を演じた松下由樹です。

イマイズミ：私も3位に入れました！

小林：他にも深夜のドロドロ系ドラマはたくさんありましたが、このドラマはけた違いに面白かった！ その最大の要因は松下由樹だと思います。

イマイズミ：“元祖トレンディー俳優”は伊達じゃなかったですね。狂気の中に母性を感じさせる演技が素晴らしかったし、最後は「あれ、本当はいい人だったのかしら？」って洗脳されたくらいです（笑）。

小林：毎週恵子が何をしでかすのか、ハラハラさせるストーリー展開も良かったです。

イマイズミ：テレ東とアミューズクリエイティブスタジオが、原作から共同で開発した漫画を基にドラマを制作するという新しい試みがうまくハマった気がします。

小林：原作者と揉めるぐらいなら自分たちで作っちゃえ的なノリなんですかね。ドラマの一番の衝撃シーンはやっぱり拓人（野村康太）との濃厚なディープキス…！ これで野村くんは俳優としての階段をひとつ上った気がします（笑）。

イマイズミ：まるでライオンの捕食シーンを見てるようでした。

小林：一ノ瀬ワタルじゃないけど、松下由樹も体格いいから迫力があるんですよ。拓人を恵子から奪う南雲美羽を演じた中村ゆりかだと小柄で細いから、見た目だけで勝てる気がしない。

イマイズミ：ドロドロ系ドラマは若手俳優じゃなくて、昭和を生き抜いた女優をキャスティングした方が面白くなりそうですね。

小林：松下由樹が次にどんなドラマに出るのか、今から楽しみです。とりあえず、いい人役はしばらくお休みしてほしい（笑）。

勢いを感じる若手俳優二人に注目！

イマイズミ：私が4位に選んだのは『PJ～航空救難団～』から、女性で唯一救難団員を目指す訓練生・藤木さやかを演じた石井杏奈です。元E-girlsだから身体能力は高いでしょうが、あの訓練シーンは相当きつかったはず。

小林：私なら3分で辞めるやつね（笑）。

イマイズミ：女だからって特別扱いしないでくれって気を張っていたんだけど、プールでの訓練と山岳実習でみんなについていけなくなる。どうにもならない悔しさや心の葛藤が伝わってくる演技に「うん、うん、よく頑張ったよ」って言いながら、もうおじさん号泣ですよ。

小林：E-girlsは昔何度か取材したことあるけど、メンバーの中でも女優として一番成功してますよね。当時は全員の名前を覚えられなかったけど、マネージャーがカッコよかったのは覚えてる（笑）。

イマイズミ：そこ⁉ 私は、E-girlsが解散する直前にJJ最後の表紙をお願いしたんで感慨深いですね。一番年下だったせいか、わりとおとなしかった印象ですが、今やこんなに立派な俳優さんになられて…。

小林：このドラマには、ほぼすっぴんで出てたけど、キレイですよね。最近では『東京ラブストーリー』のリメイク版（2020年／FOD）では関口さとみを演じてたのが印象深い。

イマイズミ：彼女は、韓国ドラマ『私のIDはカンナム美人』の原作ウェブトゥーンを日本でドラマ化した『私は整形美人』（2025年／フジテレビ系）のヒロインも演じてましたが、その相手役は小林さんが3位に挙げていた本田響矢ですね。

小林：『波うらかかに、めおと日和』は毎週楽しみにしていたドラマの一つ。本田くんは不器用ながらもなつ美（芳根京子）と誠実に心を通わせていく夫・江端瀧昌を演じていますが、そのウブな演技が良かったんですよ。

イマイズミ：デビューが「男子高生ミスターコン2016」で、俳優デビューが2017年なんですね。

小林：世間に見つかったのはこのドラマの出演がきっかけだけど、最近は『虎に翼』（2024年／NHK総合）や『恋愛バトルロワイヤル』（2024年／Netflix）、『私の夫と夫の彼氏』（2023年／テレ東系）などいろんなドラマで見かけるように。俳優としてのキャリアを着実に積んでいるイメージです。

イマイズミ：そこいらの、ぽっと出のイケメンじゃないと。

小林：瀧昌さまが戸惑っているシーンではモノローグが多いんですが、声優仕事をやってほしいくらい上手。キスシーンの時も相手役が綺麗に見えるように動いてるし、なによりフェイスラインが美しい！

イマイズミ：べた褒めすぎませんか？（笑）。

小林：べた褒めついでに言いますけど、ドラマの番宣で朝から出ずっぱりの時も、疲れた顔ひとつせずに真面目に宣伝していたところは誠実な性格がにじみ出ていてよかったわー。

イマイズミ：大学生の娘も「同級生がみんな観てる」って言ってたので、これからは幅広い年齢層に人気の俳優になりそう。

名バイプレーヤーの千葉雄大と久保田磨希がランクイン！

小林：イマイズミさんは『ダメマネ！－ダメなタレント、マネジメントします－』で神田川美和（川栄李奈）に振り回される先輩マネージャー・木村三太を演じた千葉雄大を2位に選んでいますね。

イマイズミ：なにかと美和にボコボコに殴られるんですけど、そのリアクションが面白いし、存在自体が愛くるしいからハラスメントに見えない。

小林：ちょっとふくよかになったせいなのか、中性的でしなやかな印象になってきましたね。昔もっとシュッとしてたころに取材したことあるけど、今とは全然印象が違いましたよ（笑）。

イマイズミ：美和とわちゃわちゃしてるだけかと思いきや、以前脚光を浴びたお笑いコンビ「ビレッジマウス」の相方の溝口（大東俊介）とコンテストに再チャレンジする回では、一転してぐっと泣かせる演技。おじさん二人の青春にキュンとしました。

小林：最近では『アンメット ある脳外科医の日記』（2024年／フジテレビ系）の救急部長・星前宏太役でもいい味出していましたね。

イマイズミ：いまでこそバイプレーヤーの印象が強いですが、『天装戦隊ゴセイジャー』（2010年／テレビ朝日）ではゴセイレッド役でバリバリのセンター。

小林：まあ、シュッとしてたしね。

イマイズミ：今の方が断然良いと思いませんか？ 今後も「どこか憎めない癒し系」役は千葉雄大一強です！

小林：そして私は、ついに終わってしまいましたが『続・続・最後から二番目の恋』で三井さんを演じた久保田磨希を2位に挙げました。

イマイズミ：台本に書かれている役名も「三井さん」って、さん付けらしいですね。

小林：わかる！ 彼女にはやっぱり「三井さん」がしっくりきます。千明（小泉今日子）を陰で支えるAPですが、言うべきことはきちんと言う最高の同僚。あんなに頼れる人がいたら、千明が結婚したいって思うのも無理はないですね。

イマイズミ：編集長時代にあんな副編がいたら…。

小林：三井さんってどこまでキャラクター設定がされていたのかわかりませんが、あそこまで魅力的な人物像を作り上げたのは間違いなく久保田磨希の力だと思います。もし街で彼女を見かけたら、「あ、三井さんだ！」って絶対思っちゃう。

イマイズミ：身長が高いせいか、千明と並んだ時のギャップも面白かった。

小林：以前、シェイクスピア劇の『ジュリアス・シーザー』（2021年）を観に行ったときに出演してたんだけど、やっぱり舞台でも映えてましたよ。

イマイズミ：小林さん、一ノ瀬ワタルといい、松下由樹といい、今クールは体格がいい俳優をやたら推しますね（笑）。

1位はサイコパスがハマった高橋光臣と朝ドラの演技が話題になった河合優実

小林：いよいよ１位ですが、イマイズミさんは『夫よ、死んでくれないか』の高橋光臣ですね。

イマイズミ：加賀美璃子（相武紗季）の夫・弘毅を演じてましたが、サイコパスっぷりが常軌を逸していて、『ディアマイベイビー』の恵子と同じくらい、毎回何をやってくるのか楽しみでした。

小林：璃子の下着を並べてクローゼットに潜んでいたり、彼女が逃げないように手錠をかけたり…。

イマイズミ：地味にツボに入ったのは、璃子が妊娠したことを知った弘毅が福山雅治の『家族になろうよ』をお腹の子に向かって歌うところ。そして、意外に上手かった（笑）。

小林：最終回では横断歩道で璃子をかばって車に轢かれ、足が逆にねじれていましたが…。

イマイズミ：最初はただの気持ち悪いサイコパスだったんですけど、物語が進むにつれて、こんなに璃子を愛する人って他にいないんじゃ？って思えてきて。

小林：高橋光臣は今まで「いい夫」を演じてきたバックボーンがあるからこそ、納得させられちゃうのかも。

イマイズミ：そういえば、彼も塩野くんや千葉くんと同じように戦隊ヒーロー出身ですよね。『轟轟戦隊ボウケンジャー』（2006年／テレビ朝日系）のボウケンレッド。

小林：また「赤」！ センターのイケメンポジションをやった俳優が、どうやって生き残っていくかって課題ですよね。そして、彼はスイーツ男子としての一面もあります。

イマイズミ：え、ラガーマンの印象しかなかった！

小林：コロナ禍中に仲が良いDAIGOに『ドーナツを作ってみて』って無茶ぶりされたのがきっかけで、いまやスイーツ本を出すくらい。

イマイズミ：たしかにインスタが「俺と○○」シリーズのスイーツで埋め尽くされている…！ こういう引き出しがあればあるほど、バイプレーヤーとしての幅広さに繋がるんでしょうね。

小林：そして、私の1位は河合優実！

イマイズミ：朝ドラ『あんぱん』でのぶ（今田美桜）の妹・蘭子役でしたが、主役の今田美桜を凌駕する演技とSNSでも話題でしたね。

小林：ちょっと髪を触る仕草だけで豪（細田佳央太）のことを好きなのがわかる演技も凄かったけど、豪が戦地に行く壮行会の後、二人が夫婦になる約束をするシーンは圧巻でした。

イマイズミ：『100カメ』（NHK総合）でも舞台裏を映していたけど、蘭子の切れた下駄の鼻緒を豪が結びなおすシーンも美しかった。

小林：戦後80年の今年、軍国主義に流れていく日本で反戦を表現できる役を演じられて良かったっていう河合優実のインタビューを読んで、ただ演技が上手いだけの俳優じゃないんだなと思いました。

イマイズミ：だいぶ先だけど、2027年前期の朝ドラヒロインは内定でいいと思います！

小林：その前に、民放の王道恋愛ドラマでヒロインを演じる彼女も観てみたい！ TBSの火曜22時枠とかで。

イマイズミ：恋愛ドラマといえば、彼女がヒロインを演じる『今日の空が一番好き、とはまだ言えない僕は』（2025年）を最近観たんですけど、信じられないくらい長いセリフがあって、しかも関西弁！ 演技の神様が降りてきた瞬間を目撃した気分でした。

小林：実は彼女が出演してる映画って観たことないんで、今度観てみようと思います！

小林久乃（こばやし・ひさの）コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ！』（青春出版社刊）を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp

元JJ編集長イマイズミ　女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。１クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。

イラスト／lala nitta