大草直子さんをはじめとする女性リーダー陣による「ホルモンハグプロジェクト」とは?

多くの女性に訪れる更年期。特に不調を感じない人もいれば、日常生活を送ることすらままならなくなる人も。加えて40代は働き盛り、子育て、親の介護など、ライフスタイルの変化が重なる時期。
まだまだタブーな雰囲気のある更年期問題も「一緒なら、乗りこなせる。」というチームホルモンタグラインをもとに、「ホルモンハグプロジェクト」が発足、我らが大草直子さんをはじめとするパワー女子の皆さんがご自身の壮絶な体験談を赤裸々に語ってくれました。
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正しい知識を得て、シェアができる場を。みんなのホルモンをそっと抱きしめてあげたい
[ファッションエディター・スタイリスト 大草直子さん]

「このプロジェクトは私にとってお誘い(インビテーション)です。私がこの更年期についてSNSなどで発信するようになったのは5年前に大阪の百貨店が主宰する更年期をテーマとしたイベントの出演がきかっけです。イベントの最後の質疑応答の時に、50代後半の素敵なマダムが手をあげてくださって、『あなたのようなファッションを語る方がこういった話をしてくれて本当にありがとう。私は更年期が一番辛かった時、親の介護で自分に手をかけられなかった。そういう女性が一人でも少なくなって欲しい。どうぞ、これからもお続けになってね』と言ってくださいました。それをきっかけに勉強をし、情報を集め、自分自身の経験を踏まえながら、機会があるごとに更年期の話をしてきました。
私の更年期の実体験についてお話すると、まずは47歳の時、コロナ禍になって不眠が始まりました。初めてのことでうろたえましたが、その時はただのストレスかなって更年期は疑いませんでした。
その後、しばらくして『これはまずいな』と思ったのが50歳の時。何が一番嫌だったかというと、急にまわりの人を信じられなくなったんです。もともと、あまり情緒がブレない高め安定の性格。ところが信頼しているスタッフ、家族に対し疑心暗鬼になってしまって。ホルモン値を測ったら、先生が『大草さん、これは辛いね』って。合成ホルモンを処方していただき、服用することであっという間に精神的に安定してきました。ところがそれと引き換えるように今度はむくみと体重増加が始まったんです。信頼している美容ジャーナリストさんに相談したところ、『大草さん、体重増加は命には関わらないわよ。どっちを取る?』って。その時、『もう二度とあの時には戻りたくない』と思ったんです。その後、色々な方法をアドバイスしていただき、今はナチュラルホルモンを摂取し、精神的にも体力的にも自分にとっては比較的いい状態が続いています。
私にとって更年期を一言で表すと”更年期ガチャ”と”更年期フレンズ”。どんな症状が出るか全く予想がつかないからガチャガチャの”ガチャ”。あとは周りの人と辛いことを吐露できる仲間(フレンズ)がいたことはとても大きかったと思います。
40~50代って女性に限らず、家族や職場の人など、興味の軸が自分以外に向くことが多い時期。そう考えるとあるようでなかった自分への興味を自分に戻す時期なのかなって。正しい情報を受け取り、みんなでオープンに話し合える場。自分も他人のホルモンもそっと抱きしめて、安心できる世の中になることを願っています」
更年期のロイヤルストレートフラッシュ。壮絶な体験をしました
[パーソナルスタイリスト 大日方久美子さん]

「私の場合は、ずばり更年期の”ロイヤルストレートフラッシュ”です。忘れもしない46歳の春、突如として更年期症状が信じられないくらい一気に押し寄せてきました。人生で最も強烈な体験でしたね。夜はホットフラッシュで1時間ごとに目が覚める、肌の乾燥、抗うつ症状、さらには制御不能な怒りの感情に襲われるようになり、日常生活がままならなくなる。今まで健康には人一倍気を付けてきた分、『どうして私が』とあわてふためき、パニックになりました。さらには、それまでライフスタイルだった犬猫の保護活動にもとても向き合える状態ではなくなっていき……。そんな風に心も身体も自分でなくなっていく感覚は、耐え難いほどの喪失感を伴うものでした。
その後、婦人科を受診したところ、何とホルモン値は”測定不可”の10以下。閉経した人よりも低い数値でした。心療内科も受診し、”月経前不快気分障害(PMDD)”と診断されました。薬を処方してもらい、今は元気でやっています!
この壮絶な体験を通じ、『更年期だから』と一括りにされ、軽視されがちな現状に強い疑問を抱くようになりました。私自身が、サプリメントやホルモン補充療法を試しながら、少しずつコントロールできるようになった今、この経験を共有することで誰かが同じ苦しみに直面する前に”備え”として知る機会を持ってほしい。そして社会全体の理解が深まり、支え合える社会が実現することを願い、これからも発信を続けたいと思っています」
不調を感じたら「更年期」とやり過ごさず、まずは受診を
[小学館ビューティ・プロジェクト編集長 下河辺さやこさん]

「私の更年期はそこまでひどくなかったのですが、47歳くらいの時、不正出血が続きました。長く編集者として女性の健康ページに携わっていたこともあり、『子宮体癌かも』と不安になり、婦人科を受診しました。先生から『閉経してますか?』と聞かれ、『そっか。私って更年期に入っているんだ』と気づかされました。とはいえ、不正出血は大病の可能性もあるので、いつもと違う違和感を感じたら、”単なる不調”と捉えず、まずは病院を受診してほしいです。
社会的にも定年退職まで働く女性が増えてきましたよね。閉経の平均年齢は50歳。その前後10年、45歳~55歳の更年期と呼ばれる期間は、心身ともに不調を感じる一方で、働き盛りの時期です。体調がすぐれないことを言い出せず、サポートを求めにくい社会では、女性が責任のあるポジションで活躍することはできません。それは男女問わず言えること。みんなが心地よく過ごせる世の中に向かうためには”ホルモン”への理解と知識を深めることが重要だと思っています」
不安な気持ちを日記に綴ることで新しい自分を受け入れられた
[エッセイスト/ファッション・ディレクター 龍淵絵美さん]

「もともと、ホルモン値が以上に高くて40歳の時、計測したら『27歳のホルモン値です』と言われたんです。自分なりには下降していますが、今もホルモン治療も必要ないとは言われています。ところが、48歳の時に親しい友人が亡くなりどん底の中、今度は50歳の時に父が突然死し、さらに心が沈んでいきました。自分なりにサプリや運動、あらゆることを試しました。
今まで気にならなかったことが見過ごせなくなり、もしかしてそれって自分自身の中に答えがあるんじゃないかって思い、自分自身を振り返るために、スレッズで日記を書き始めました。誰かが見るものだから社会と繋がっている気がして……、そんな小さなアクションで徐々に明るさを取り戻すきっかけになった気がします。今までの人生を振り返っていたら、どんどん止まらなくなってしまい、結果、『ファッションエディターだって風呂に入りたくない夜もある』という書籍にまでなりました(笑)。
私はこの状況になるまで、物でもチャンスでも何かをたくさん手に入れることが幸せの指針で、それがエネルギーになっていた気がします。でも更年期の時期っていろいろなことを手放す時期なのかもって気づきました。物、人付き合い、お酒(笑)……。不必要なものを排除してみると、人生の折り返しで自分にとってエッセンシャルなものが分かってきたから、決してネガティブなことだけじゃなかったんだって思えたことは良かったと思っています」
45歳を過ぎると不調が出るのは当たり前。健康診断で「オールA」を目指す必要はない
「クレアージュ東京」総院長 浜中聡子先生

「まずは大前提として、健康診断や人間ドックを定期的に受け、自分の不調の傾向を知っておくこと。女性って真面目だから常にオールAを欲しがるんですけど、45歳を過ぎたら、体調不良が出ておかしくない年齢です。そもそもA判定は厳しい設定なので、B~C判定を自分の不調の傾向だと受け止め、早めに対処を。特に異常がない場合は、更年期の可能性も踏まえて婦人科を受診し、アプローチしていけばいいんです。健康管理も更年期対策も自分の方法を体得することが大事だと思います」
ホルモンハグプロジェクトのメッセージ
生理が苦しかった。PMSが辛かった。更年期が怖かった。
我慢し続けてきた。
みんな頑張ってるんだから、泣き言は言ってはいけない。 自分が弱いからいけないんだ。
でも、やっと気づいた。
それは脈々と受け継がれていた「呪い」だったと。 大丈夫、もうあなたは悪くない。誰のせいでもない。
すべてはホルモン変化によるものだから。
苦しみも、辛さも、不安も分かち合おう。シェアし合おう。 一人じゃ泣き言かもしれないけど、
みんなで言えば、うねりになる。
2みんなで抱きしめ合えば、世界はもっと優しくなる。
さあ、一緒に乗りこなそう。
Team Hormone Hug
[公式サイト]https://horhug.jp/
[公式Instgram]horhug_official
取材/石川 恵