【韓国の”ゴールデングローブ賞”】必ず観ておきたい「百祭芸術大賞」受賞作7選!

百想芸術大賞(ペクサンゲイジュツタイショウ)は韓国のゴールデングローブ賞と言われ、1965年に創設された年に1回開催される総合芸術賞。前年度の春から12カ月の期間に公開された優秀な映画部門、ドラマ部門、テレビ部門(ドキュメンタリーやバラエティ)のそれぞれ、作品、スタッフ、演者が受賞する、数ある授賞式の中でも権威あるアワードです。
きたる5月5日開催された、「第61回百想芸術大賞2025」 。今回は、数ある作品の中から名誉に輝いた、今観ておきたい作品を紹介します。
『白と黒のスプーン ~料理階級戦争~』テレビ部門大賞




百想芸術大賞は映画部門、ドラマ部門、テレビ部門がありますが、大賞は、総合でその年に話題になった作品、番組、人の中から選ばれます。2024年はドラマ『ムービング』、2023年はドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』、2022年はドラマ『イカゲーム』、2021年はタレントで国民的MCと言われるユ・ジェソクが受賞。と、社会的な影響力が加味される賞なのです。
そんな中、今回選ばれたのは『白と黒のスプーン ~料理階級戦争~』。
賞金は3億ウォン! 総勢100人の韓国の料理人たちが料理バトルを繰り広げるリアリティショー。スーパースターシェフ20人と、無名のシェフ80人が熱い戦いを繰り広げ、食文化を大事にする本国では大ヒットしました。料理バトルの審査は韓国料理界の重鎮2名。料理家であり、チェーン店の経営など実業家の顔をもつペク・ジョンウォンと、韓国唯一のミシュラン3つ星レストラン「MOSU・ソウル」のオーナーシェフ、アン・ソンジェ。まず80人の無名シェフ達「黒さじ」の予選。次に、20人に絞られた「黒さじ」と、スーパースターシェフ達「白さじ」の1対1の対決。目隠し審査や、チーム戦、敗者復活戦、レストラン運営対決など、平坦なバトルが続くのではなく、様々な角度から演出されたバトルは見ごたえたっぷり。推しのシェフを応援するのもよし、若いシェフがベテランシェフに勝つ下剋上を楽しむのもよし、目福なお料理を楽しむのもよし、次回の韓国旅行のレストラン候補を探す目的でもよし! エンタメ性たっぷりで飽きずに見られる演出、番組出演がきかっけでスターになったシェフを生み出す社会現象をも巻き起こした料理サバイバルバラエティ、飯テロな一面もあるので深夜の鑑賞は気を付けて!
ドラマ『おつかれさま』テレビ部門作品賞、テレビ部門助演賞(女性)、テレビ部門助演賞(男性)、テレビ部門脚本賞受賞




1960年代の韓国・済州島から2025年の韓国・ソウルを逆境にめげずに生き抜く家族2代を描いたヒューマンドラマ。貧しい家庭に生まれながらも詩人を目指す聡明な少女エスン(IU)と、いつだってどんな時だってエスンのそばでエスンを守り味方でいる誠実な少年グァンシク(パク・ボゴム)が激動の社会情勢の中で揉まれながらも家族を作り、そしてその子供たちの人生をも描いた感動作。自身のもっている気持ちのカケラや、経験、今の立ち位置によって、共鳴する登場人物は違えど、心に深く刺さり涙が溢れる展開は、ややしんどさもありますが、間違いなく今年1番の秀作。家族について、人生について、深く考え直すきっかけになるかもしれません。
受賞した助演賞(女性)のヨム・ヘランはエスンの母親役で、なんと去年と連続受賞。化粧っけのないヴィジュアルで、娘を想う懸命な母役で憑依演技をみせています。助演賞(男性)のチェ・デフンはエスンの元お見合い相手で漁船の船長サンギル役。金持ちのばか息子役を演じたら匠の域に達しているチェ・デフン。今回は真骨頂とも言える、嫌な奴だけど憎みきれない役作りは話題となりサンギルの口癖「ハクシ!(クッソ!)」を文字って「ハクシおじさん」と呼ばれていたとか。下品な口癖ですが妙に印象に残り、ミームも作られていたほどで納得の受賞です。脚本賞を受賞したのははイム・サンチュン。実は性別年齢を明かしていない謎めいた存在ですが、パク・ソジュンの隠れた名作『サム・マイウェイ~恋の一発逆転!~』で注目され『椿の花咲く頃』で既に第56回百想芸術祭で大賞とテレビ部門脚本賞に輝いている実力派。ブレない芯のある女性が逆境にめげずに懸命に生きる脚本に定評があり、今回はかなりの長い年代を飽きさせない展開で執筆。緻密な人間描写も光ります!
ちなみに作品賞の他は、『ソンジェ背負って走れ』『オク氏夫人伝―偽りの身分 真実の人生―』『こんなに親密な裏切り者(原題)』『トラウマコード』がノミネート。
助演賞(女性)の他は『家族計画』のキム・グクヒ、『オク氏夫人伝―偽りの身分 真実の人生―』のキム・ジェファ、『ジョンニョン:スター誕生』のオ・ギョンファ、チョン・ウンチェがノミネート。
助演賞(男性)の他は『グッド・パートナー~離婚のお悩み解決します~』のキム・ジュハン、『イカゲーム シーズン2』のノ・ジェウォン、『良いが悪い、ドンジェ』のヒョン・ボンシクがノミネート。
脚本賞は『家族計画』のキム・ジョンミン、『オク氏夫人伝―偽りの身分 真実の人生―』のパク・ジスク、『ソンジェ背負って走れ』のイ・シウン、『グッド・パートナー~離婚のお悩み解決します~』のチェ・ユナがノミネートされていました。
ドラマ『ジョンニョン:スター誕生』テレビ部門最優秀演技賞(女性)、テレビ部門芸術賞(音楽)受賞




1956年朝鮮戦争後。木浦で魚を売りながら母と姉と貧しい生活を送る18歳のジョンニョン(キム・テリ)。ある日、天性の声をもつジョンニョンが市場で歌っていたところ、女性国劇団「梅蘭国劇団」の王子役トップスター、オッキョン(チョン・ウンチェ)に見初められる。貧しい生活からの脱却、スターを夢見て駆け上がっていくが・・・ 女性国劇団は1950年代に韓国で人気を集めた民族音楽劇。歌、踊り、演技からなる総合芸術をオール女性キャストが演じる日本の宝塚のようなスタイルで、宝塚好きの人にもおすすめの作品。天才といわれる主人公の青春ドラマでありながら、混乱期の中でも自ら道を切り拓き前に進もうとする女性たちの力強さ、しなやかさが描かれるシスターフッドにも心励まされます。最優秀演技賞(女性)を受賞したキム・テリは、パンソリ(韓国の伝統芸能)の天才役をこなすためになんと3年間練習したとか。他を圧倒する、もはや狂気にみちた熱演は一見の価値ありです。音楽が核となる作品の中で深みと彩りを演出したチャン・ヨンギュが芸術賞を音楽部門で受賞しています。
ちなみテレビ部門最優秀演技賞(女性)の他は『誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる』のコ・ミンシ、『ソンジェ背負って走れ』のキム・ヘユン、『おつかれさま』のIU、『グッド・パートナー~離婚のお悩み解決します~』のチャン・ナラがノミネート。
テレビ部門芸術賞の他は『白と黒のスプーン~料理階級戦争~』(美術)、『こんなに親密な裏切り者(原題)』(撮影)、『スタディグループ』(アクション)『地獄が呼んでいる シーズン2』(VFX)がノミネートされていました。
ドラマ『トラウマコード』最優秀演技賞(男性)受賞




ここでいうトラウマは命にかかわる外傷のこと。メインのスター医師が激務で倒れて以来、当直の外科医が持ち回りで担当、機能させてきた韓国の名門大学病院の重症外来が舞台。国境なき医師団の元メンバーで型破りな天才外科医ガンヒョク(チュ・ジフン)が、時の大臣の思惑で赴任。いやいやながら持ち回りで重症外来を担当していた肛門外科の医師ジェウォン(チュ・ヨンウ)を巻き込んで、重症外来チーム、大学病院を生まれ変わらせていくジェットコースター展開の医療ドラマ。重すぎず、軽すぎず、そして医療シーンにはリアリティがあり、甘いロマンスは臭わさず展開の彩りで見せる2025年の大ヒット作。絶対的に強く頼れるガンヒョクの安定感、信頼感で、心を任せて鑑賞できるのもこの作品の魅力です。最優秀演技賞(男性)に輝いたのがガンヒョク演じるチュ・ジフン。色っぽくて、強くて、渋くて、いうなれば、今のチュ・ジフンの魅力を余すことなく描かれたドラマと言っていいほどで、貫禄の受賞でした。ガンヒョクの1番弟子となり振り回されるジェウォン役のチュ・ヨンウは『オク氏夫人伝―偽りの身分 真実の人生―』で、新人演技賞(男性)を受賞!
ちなみに他は『おつかれさま』のパク・ボゴム、『ソンジェ背負って走れ』のピョン・ウソク、『良いが悪い、ドンジェ』のイ・ジュニョク、『こんなに親密な裏切り者(原題)』のハン・ソッキュがノミネートされていました。
ドラマ『こんなに親密な裏切り者(原題)』テレビ部門新人演技賞(女性)、テレビ部門演出賞受賞




京畿ヨンジュ警察署の犯罪行動分析チームでチーム長を務めるテス(ハン・ソッキュ)は、国内最高のプロファイラーで相手の言動から嘘を見抜くことができる。長い間離れて暮らしていた最愛の一人娘ハビン(チェ・ウォンビン)と再び一緒に暮らすことになるが、ある日、捜査をしている死体のない殺人事件にハビンが関わっているかもしれない疑惑が生まれる。父親として警察としての葛藤が始まるが・・・ 情熱をかけてきた警察という仕事。自信と誇りをもって邁進してきたプロファイルの先にあった“犯人は娘かもしれない”という疑念。人として父親として、どうあるべきかという深い葛藤と、果たして真犯人は誰なのか、ハビンはどんな風にかかわっているのか、常に憶測と疑心が支配する心理スリラー作品です。本命とされていた『おつかれさま』をおさえて、演出賞を受賞するだけあってカメラワークと映像で創り出す、ドラマのもつ(いい意味で)薄気味悪い独特の雰囲気はぞくっとさせられるほど秀逸。最後の最後まで犯人がわからないサスペンスとしての面白さ、親子の絆を描く物語としての両方の側面があり、落ちついたサスペンスものを探している方におすすめです。新人演技賞(女性)を受賞したチェ・ウォンビンはサイコパス感のあるミステリアスなハビン役を怪演。ハン・ソッキュとの間に流れる妙な緊張感を作り出す天性の演技のセンスは、これからが楽しみです。
ちなみに新人演技賞(女性)の他は『おつかれさま』のキム・テヨン、『魔女―君を救うメソッド―』のノ・ジョンウィ、『旋風』のチョ・ユンス、『トラウマコード』のハ・ヨンがノミネート。
演出賞の他は『おつかれさま』のキム・ウォンソク、『照明店の客人たち』のキム・ヒウォン、『トラウマコード』のイ・ドユン、『ジョンニョン:スター誕生』チョン・ジインがノミネートされていました。
ドラマ『オク氏夫人伝―偽りの身分 真実の人生―』テレビ部門新人演技賞(男性)受賞




父と、残忍な両班の家に仕えるクドク(イム・ジヨン)。ある日、虐待に耐え兼ね父とともに逃亡するが生き別れてしまう。その後、小さな宿で職を見つけていたクドクは両班の令嬢テヨンと仲を深める。そんな時、宿が山賊に襲われテヨンは亡くなり、一命をとりとめたクドクは、テヨンの家で目覚める。テヨンの祖母から、テヨンとして生きていくように告げられたクドクは、両班の令嬢として生きていくことに・・・ 波乱万丈な運命にめげずに強く、そして世の中のために身を捧げる女性の生きざま、そんな彼女を一途に想い守り抜く男性の真摯な愛。がバランスよく描かれ、時代劇は苦手という人が多い中、心に響く展開で沼落ちする人が続出した名作。もちろん、韓国ドラマらしく、くすっと笑える要素も盛り込まれ、スピーディな展開なのもこのドラマの魅力です。新人演技賞(男性)を受賞したチュ・ヨンウは、1人2役を魅力的に演技分け、ドラマのメロ部分を担当。身長185cmの体躯で着こなす韓服姿も素敵ですが、繊細な心の機微をさりげなく演じ、まっすぐで誠実な愛表現で視聴者は虜に。『トラウマコード』でも注目され、2025年は正にチュ・ヨンウイヤー。両親ともに元モデル、弟も俳優というサラブレットの今後の活躍に期待です!
ちなみに他は『こんなに親密な裏切り者』のキム・チョンシン、『ソンジェ背負って走れ』のソン・ゴニ、『スタディーグループ』のチャ・ウミン、『YOUR HONOR~許されざる判事~』のホ・ナムジュンがノミネートされていました。
ドラマ『ソンジェ背負って走れ』PRIZM人気賞(女性)(男性)受賞





ソル(キム・ヘユン)は、ある事故で下半身不随となり、生きる希望を失っていたがデビュー間もないバンドECLIPSEのボーカル、ソンジェ(ビョン・ウソク)の言葉に救われファンになる。15年後、ファンネーム「ソンジェ背負って走れ」の名前で熱狂的にソンジェを応援するソルは、念願だったECLIPSEのライブへ。しかし、問題を抱えていたソンジェはその後、極端な選択をしてしまう。彼の死を知ったソルはオークションで買ったソンジェの私物の時計を握りしめ号泣、気がつくと高校時代にタイムスリップしていた。最愛の人、ソンジェを救うために過去を変えようと奔走するが・・・ 放送当時、世界中で話題となり社会現象を巻き起こし、主演のビョン・ウソクがライジングスターとなった2024年上半期最大のヒット作。成功したオタクと大人気アイドルという、推し活をしている人誰も夢見て共鳴する神設定、キュンとするメロシーンが毎話演出され、ビョン・ウソクとキム・ヘユンの甘いケミも注目の的に。百想芸術大賞では、一般人からの投票で決まる人気賞があり、今回は男性部門でピョン・ウソクが、女性部門でキム・ヘユンが、断トツでカップル受賞! タイムスリップというファンタジーながら、観る人達が没入できたのは、この二人の役柄への憑依ぶりがリアリティをもたせていたから。鑑賞しながら、青春時代にタイムスリップしちゃうような甘酸っぱさが楽しめます。
この記事を書いたのは・・・
STORYライター味澤彩子
韓国ドラマだけでなくファッション、皇室、美容、カルチャーとさまざまなジャンルを担当するライター。1度ハマるととことん突き詰める生まれながらのオタク気質で、感動する作品に出合うと、スタッフ、俳優、関連する作品を芋づる式に鑑賞し、寝る暇も惜しんで韓流ドラマ三昧。気がついたら、ビジュアル、内容、演出、文化面多方面から語るようになり、韓ドラの1人おすぎとピーコと言われるように。好きな俳優はチュ・ジフン、カン・ハヌル、ソン・ソック。好きな脚本家はイム・サンチュン作家。『君は天国でも美しい』『ナインパズル』をリアタイしながら、『広場』『グッドボーイ』を楽しみにする日々。
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