青木裕子さん「ほかの子と比べてしまうとき、育児に悩んだとき」読みたい本は?
撮影/金 玖美
VERYモデル青木裕子さんは大の読書好き。連載エッセイでは、今、読みたい本や子どもにおすすめの本をお聞きします。青木さんが「子育ての迷いやモヤモヤの正体が言語化されるよう」だと感じた小説とは? 青木さんやご家族の近況とともに紹介します。
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今月の一冊
「うちの子ってどうしてこうなの?」育児にモヤモヤしたときに読みたい本
どんな場所にいても、物語の世界に入っていけるから読書が好きです
読書が好きなのは、それがとても自由だからだ、と感じます。始めるのも終わらせるのも、私次第。たとえば映画館では、隣の人の物音が気になったって物語は進んでいってしまうけれど、読書だったら、一度ページを閉じて場所を変えればいい。それに、物語は文字の並びとしてそこにすでに存在するものの、主人公がどんな声で、どんなスピードで、どんなボリュームでしゃべるのか、そこから広がる世界は読み手の自由です。そう、私次第なのです。だから時には、あんまりその世界の居心地がよくて、「どうしたってもう一気に読んでしまいたい! 」という衝動に駆られることもあります。
「育児中に感じるモヤモヤ」の正体を言語化してくれるような本
そんな感覚で読んだのが、今回紹介する小説『私の良い子』です。【子育てにモヤモヤしたとき読みたい本】というテーマをいただいて、「あの本はどうかしらん」と思い付いたこの作品。久々に開いてみたらドッグイヤーだらけでちょっと笑ってしまいました。私には、響くところだらけの本なのです。小説ですからさまざまなとらえ方があると思いますが、私はとくに妹の子ども・朔を育てている主人公・椿の子育てに対する考え方に惹かれます。運動会のダンスを踊らない朔になにをどう伝えればいいのか考えて〈みんながやってるから、なんて理由にならないんじゃなかったのか〉と迷うところとか、片付けができない朔にいらいらしているときに〈小学校に入ってから、わたしは朔を他の子と比べてばかりいる〉とハッとするところなど、まさに私が私の子育てで経験したことと同じです。
撮影/西崎博哉<MOUSTACHE>
椿は朔の親ではないし、親になりたいと思ってもいません。でも、だからこそ、何かと「親だから」を行動の理由にしてしまう私よりもずっと、客観的に、子育てのあらゆる場面で遭遇するモヤモヤの正体を言語化してくれるような気がします。〈愛情がなくては子どもは育てられない、と多くの人はいう。だけど愛情があればそれだけで子どもが育てられるわけでは、決してない〉という彼女の言葉は子育ての神髄だなあと感じます。子育ては難しいです。すっきり解決しないことばかりだし、何が正解なのか全然わかりません(あるいは正解なんてないのかもしれないと思います)。この本は私にとって、【子育てにモヤモヤしたときに読みたい本】ですが、モヤモヤが晴れる本ではありません。小説の世界で心のなかまで覗いて、ある意味で、ママ友たちより近い存在になる主人公・椿と一緒にモヤモヤにぶつかっていく本です。そして、最後のページを閉じた後も、その世界がどこかにあるという感覚が少しだけ私を強くしてくれる、そんなふうに感じる一冊なのです。
『わたしの良い子』
(寺地はるな・中公文庫)
三十一歳独身、文具メーカーの経理部に勤める椿は、出奔した妹の子ども・朔と暮らすことに。毎日の子育て、更に勉強も運動も苦手で内にこもりがちな朔との生活は、時に椿を追いつめる。自分が正しいかわからない、自分の意思を押しつけたくもない。そんな中、どこかで朔を「ほかの子」と比べていることに気づいた椿は……。
【絵本・児童書】子どもの本のおすすめは?
「読み聞かせにも! 落語好きの息子がハマった本」
次男が幼稚園年長のとき、空前の落語ブームがやってきました。きっかけは、コロナ禍で増えた車移動の時間に流していた落語のCD。せっかくだから、移動時間も何かのきっかけにという私の思惑が(珍しく)ハマり、私の想像を超えた熱中ぶりになったのです。好きな落語家さんが出来て、寄席に行きたがるようになり、自分の扇子や手拭いを手に入れました。そんなときにたくさんそろえたのがこの「落語絵本シリーズ」です。次男の場合は、まず落語が好きという前提があったわけですが、そうではなくても絵本として面白いシリーズだと思います。そして、読み聞かせに、とってもおすすめです! だって、落語ですから、読んでいて心地よいのです。声に出して読みたくなる、読んでみるともっと上手に読みたくなる、そのうち覚えて披露したくなるような〈噺〉の数々。次男が特に好きだったのは『めぐろのさんま』でしたし、みんな一度は聞いたことがある『じゅげむ』もやっぱり楽しい。このシリーズには親子で一緒に楽しめる噺がそろっています。ぜひお気に入りの噺を見つけてみてください。
「川端誠の落語絵本」
(川端誠・クレヨンハウス)
「ときそば」「はつてんじん」「まんじゅうこわい」など古典落語を絵本に。落語の魅力がたっぷり詰まったシリーズ。
最近の青木さんは?
潮干狩り、豆ごはん…この時期ならではのお出かけや季節の味を家族で楽しみました。







青木裕子さん
VERYモデル。小学生2人の男の子の母。「本は紙で読む派」で、忙しい日々のなか自宅やお子さんの学校近くの書店に立ち寄るのが楽しみだとか。
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