堀田茜さん【杉本彩さん】と考える「ブームに惑わされないペットの迎え方」
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堀田茜が「30代になってなんだか気になる…」と感じるタイムリーな話題を、今会いたい識者に直接聞きに行く連載22回目。今回は「公益財団法人動物環境・福祉協会Eva 代表理事」の杉本 彩さんに、ペットを迎える上で理解しておくべきこと、ブームに惑わされないペットの迎え方などについて伺いました。
高校生まで犬を飼っていました。
新たにペットを迎えるとしたらどんな選択肢があるのか知りたい
今月のゲストは…公益財団法人動物環境・福祉協会Eva 代表理事・杉本 彩さん
【今月の茜のモヤモヤ案件】
今ペットブームと言われていますが命を預かることを「ブーム」とされることに疑問を感じています。一部のペットショップの劣悪環境のことや飼育放棄をしてしまう人の話もよく聞きますが私たちが考えられることはありますか?
「動物にとっての幸せが何かを知るためには、まず現実を知ったほうがいいなと思う」(茜)
茜:高校生まで犬を飼っていたのですが、亡くなったときにすごくショックでその命の重みが忘れられず、動物の命が「ブーム」になる流れに違和感があって。SNSをひらけば可愛いペットの投稿もたくさん見ますが、その裏で劣悪な飼育環境のペットショップのことや悪質なブリーダーの話も耳にします。今どのような現実があるのかを知りたくて、長く動物愛護の活動をされている杉本彩さんにお話を聞きにきました。
杉本:最近ではそういった闇の部分をメディアが報道するようになり、多くの人に問題が認知されて、保護団体や優良なブリーダーから譲り受ける手段を選ぶ方が増えました。ただここまで来るのにすごく時間がかかったんですよ。私たちのような団体が地道に啓発をしてきたことで少しずつ民間の意識が変わって、こうやって取材に来てもらえることも増えて。
茜:そうですね。だからこそ今日私たちも杉本さんのところにお伺いできたと思います。具体的にはどんな問題があるのですか?
杉本:ペットショップに子犬、子猫が常時展示されているのはそれだけ大量に生産され、悪質な繁殖を繰り返しているということ。流通過程にどれだけの数の子が控えているかわかりません。幼いほうが需要が高いから十分な食事を与えず大きくならないようにしていたり、生後8週間以下の犬猫を販売してはいけない規制があるのに生年月日をごまかして流通させたり、子供は免疫力が低く病気になりやすいのに病院にかかると経費がかかるから放置したり…。とにかく様々な問題がありますが、こうして動物で利益を得ようとすると動物福祉がないがしろになります。今のビジネスモデルは動物の痛み、苦しみのうえにしか成立しないことをまずは知ってもらえたら。動物を迎える方には慎重になってほしいです。
茜:ヨーロッパなどはもっと動物愛護法が厳しいですよね。
杉本:そうですね。問題意識を高く持つ国はどんどん事業に規制をかけ、法律を厳格化して状況を変えています。日本は規制強化にすごく時間がかかるんですよ。動物で利益を得ているような悪質な団体も、国会議員を支援していたりするので…。
茜:30年以上動物愛護の活動をされてきて、少しずつしか変わらない現実を前に、信念を曲げず活動を続けるモチベーションはどう保っていらっしゃるんですか?
杉本:本当に大変だし、リスキーな活動だし、がっくり肩を落とすことも多いですよ。でも動物の苦しみを感じるし、現実を知ってしまったからには目を背けることは絶対にできない。目を背けたら人として正しくないし美しくないと思って。動物のためであることはもちろんだけれど、動物が幸せに暮らせる社会のほうが、人のため・社会全体のためにもなると思うんです。私の根底にある正義感が原動力ですね。
モラルのないビジネスの利益に加担しないで
命の迎え方には慎重であってほしい
「優良な団体から迎える、署名に参加するなど、みなさんができることも様々です」(杉本)
茜:今ペットを飼いたいと考えている人は、どんなことに気をつけたらいいですか?
杉本:自分が動物の命に責任を持てるかどうか。動物も人と同じように病気になるし、年老いて介護が必要になることもある。それだけ労力と経済的負担もかかるので覚悟を持てるか。また動物が快適に過ごせる環境に自分がいつづけられるか…。例えば犬は小型から大型といますけど、犬種に合った広さを用意できるかも大事ですよね。少しでも不安を抱えたり「なんとかなるでしょ」という考えなら絶対に迎えないでほしいと思います。それから信用できる団体から迎えること。「どうしてもこの種類の犬猫を飼いたい」とこだわりがあるなら優良なブリーダーを探してください。
茜:優良な業者かどうかはどうしたらわかりますか?
杉本:自分で足を運んで現地を見にいくことは最低限必要です。施設の環境、働いている方の人柄を見ればわかることがたくさんあると思いますよ。動物愛護を謳いながら悪質なビジネスをしている人がいることも確か。それに加担しないことが動物を守ることになるし、自分を守ることでもあると忘れないでほしいです。
茜:「加担している」と言われるとドキッとしますね。
杉本:そう、悪気なく加担することになっちゃう。わかってて加担するのは言語道断ですが。
茜:こういう情報がもっと広がれば自分が悪いビジネスに加担することもなくなりますよね。動物愛護の活動に興味があったり参加してみたい場合は何からはじめればいいですか?
杉本:’25年の動愛法改正を目指して、今多くの人が様々な議論をしています。私の協会は動物の遺棄虐待を厳罰化したいと考え請願署名を集めている最中。こうした署名活動に個人で参加したり、まわりに呼びかけて署名を集めたりしていただくのがいいかなと思います。もし動物の飼育経験と環境があるなら、保護団体にいる動物を一時的に預かる「あずかりボランティア」に登録していただくのもいいかもしれません。ただ、悪質なボランティア団体もあって、ボランティアした側が何かしらの被害を受けたり搾取されるだけのこともあるので、必ず善良な団体かどうか見極めてサポートしていただきたいと思います。
茜:どんな事柄もそうですが、自分が無知でいることが一番怖いですね。辛い現実をたくさん目の当たりにしていらしたと思いますが、活動してきてよかったと思うことはありますか?
杉本:やはり保護団体の活動を理解して、里親になる選択をする方が劇的に増えたこと。いろいろな保護団体が長年がんばってきた結果だし、メディアが取り上げてくれるようになった結果も大きいです。その末に動愛法も改正に向けて前進していることはたしか。まだまだ問題も多いですが、民間が変われば事業者も変わるし、法律も変わっていくはず。
茜:私も微力ながら、この話をまわりに広めて、未来が変わっていくことを信じます。
\茜の取材ノート/
私自身、犬と生活を共にした経験があるので辛い気持ちで話を聞きました。身近にいる仲の良い人とでもペットに対しての価値観は違うし、それが理由で相手にモヤモヤした気持ちを抱いたこともありました。でもこうした情報を広めていくことによって動物の命の重みについてみんなで考え、誰もが真剣に向き合えるようになれたらと思いました。動物にとっても、幸せに生きられる国になることを切に願います。
杉本 彩さん(公益財団法人動物環境・福祉協会Eva 代表理事)
俳優、作家、実業家など多岐にわたり活躍。約30年前に野良猫を保護したことをきっかけに動物保護活動を開始。10年前に現在のEvaを立ち上げ、活動1年で公益法人に。動物愛護の啓発活動を精力的に行う。京都動物愛護センター名誉センター長、全日本車いすダンスネットワーク特別理事。
[堀田茜さん衣装]ジャケット¥124,300(ハウスオブダグマー/エリオポール代官山)ブラウス¥23,100タイトスカート¥20,900(ともにLE PHIL/LE PHIL NEWoMan 新宿店)ピアス¥15,400(ワンエーアールバイウノアエレ/ウノアエレ ジャパン)※杉本彩さんの衣装は本人私物です
撮影/杉本大希 スタイリング/AYANA[堀田さん分] ヘアメイク/TONOE 取材/野田春香 編集/小林麻衣子 再構成/Bravoworks,Inc.
※CLASSY.2025年1月号「堀田茜のほったらかしにしたらアカン!」より。
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。