「アラサー女子が結婚前からセックスレスに悩む原因は」専門家に理由を聞いてみた

「したくてもしてもらえない」「してあげたいけどしてあげられない」。今、結婚前のCLASSY.世代カップルの間でも悩む人が多いセックスレス。「そもそもなぜレスになってしまうのか」という点から、専門家に取材しました。

セックスレスの根本的な原因は何?

――セックスレスはどのようなことが原因で起こるのでしょうか?
木村:まず身体的原因とパートナーシップ間の問題の2つがあります。身体的原因は、男性なら心因性勃起不全や射精機能の問題。女性側なら性交疼痛症といって、挿入した際の性器の痛みや、そもそも膣内に挿入することができない挿入障害の場合があります。子宮内膜症や子宮腺筋症などの病気が隠れていることもあるので、そのような方はまずは婦人科の受診をおすすめします。このような状態が継続したり進展してしまうと性欲低下につながり、性に対する嫌悪感まで出てしまうことがあります。それが原因で性行為中にプレッシャーや不安を感じると興奮も消失。これが度重なり、セックスレスにつながっていくと考えられます。

――うまくいかなかったらどうしようとか、相手に悪いなというストレスからくる気持ちということでしょうか。
木村:そうですね。また、女性に多いのは性に嫌悪感を伴う性欲低下。セックスに関心がないばかりか嫌悪感があるので、これもセックスレスへと向かう大きな原因となります。こちらについては「性嫌悪チェックリスト」を確認してみてください。一般的に女性が性交を受け入れる条件として、相手に対する性欲(ときめき・発情)と相手に対する共感(尊敬・親しみ)の少なくとも一つが必要と考えられています。性嫌悪に陥る女性は、この心の動きがブロックされている状態で、過去のトラウマや幼少期の家族との関わりから来る性認識の歪み、宗教的な理由などから性的な気持ちを遠ざけてしまっていることがあり、これに対しては心理的なアプローチが必要になります。

性教育、働く時間など様々な社会的要因もセックスレスの背景に

――親や学校から受けた性教育も近年では議題に上がることが多いなと感じますが、性認識の歪みはその類ですか?
木村:そうですね。日本って避妊と性感染症にばかりスポットライトを当てて、性の楽しさを教えてくれないですよね。最初から性行為にネガティブなイメージを抱く人が多いのは日本の性教育の問題で、現代のセックスレスの背景にあるかもしれません。

――性の話題や性にオープンなことって恥ずかしいとかいけないことだという刷り込みがありますね。
木村:そう。たとえばギリシャは世界で一番性行為をすると言われている国なんですよね。夫婦だったらセックスするのが当たり前という社会通念がある。でも日本はそういう教育をされていないし、他国に比べて働く時間も多い。時間的にも精神的にも経済的にも余裕がないんですよ。アニメやゲームなどの娯楽、手っ取り早くニッチな嗜好を満たしてくれる性的ツールもあるじゃないですか。毎日疲れているなか大変な思いをして目の前のパートナーと向き合わなくても、代替可能な何かが存在しているのが日本の今ですね。そうなってくると、性行為へのメリットもあまり感じられなくなってくる。それもまたセックスレスの引き金になっていると言えるかもしれません。

付き合いたての情熱や性欲だけでうまくいくのは最初だけ。お互いにとってちょうどいい性生活について話し合える関係が大切です

話し合いもせずお互いの気持ちだけでセックスライフがうまくいくのは最初だけ

道場:今、木村先生がお話ししたのは身体面と社会的問題における性との距離感。パートナーシップ間での心因性の話を僕からお話しします。結婚前のカップルがセックスレスになる原因は大きくわけて5つの問題があり、それは次のページで原因と改善策を詳しく説明するのでここでは別の話を。付き合いたての頃は情熱や性欲のままにセックスをしていても、交際期間が長くなってきたり年を重ねるとともに回数が少なくなっていくのは当然のことです。交際したてのカップルと50〜60代の夫婦が同じセックスの内容や回数とはなりにくいですよね。ただ、セックスの回数が減っても〝お互いに話し合った上で〟スキンシップの時間を設けるというのが大事。交際期間を重ねれば、どういうコミュニケーションがあれば関係性がうまくいくのかがある程度見えてきますよね。パートナー間によって程度はありますが、たとえば月に1〜2回はセックスができればいいね、などお互いに合意がとれていると、継続してスキンシップができてセックスレスも回避しやすくなると思います。話し合いをせずお互いの気持ちだけでうまくいくなんてことは本当に最初だけ。2人でするスキンシップを含むセックスがお互いにとってどういうものなのかをきちんと話せると「じゃあその時間は大事にしていこうね」と決められるし、いい関係が続けられると思います。

――そういう話をしないまま、「できなくなったら別れる」を繰り返してしまうから、30代になってもお互い歩み寄る努力をしないまま関係を保とうとしてセックスレスが発生しているように思えますね…。
木村:そうですね。道場さんが次のページでも言っているとおり、目標を高くしすぎると年齢を重ねたときにまた物理的に難しくなってきますよね。だから年齢に合わせて視点をちょっとずつずらしていく工夫も大事です。CLASSY.世代なら10代20代とはまた違った営みがあるはずなので、そうやって考えを変えていくこともセックスライフを長く続けていくポイントです。

身体的理由以外でセックスレスの原因として考えられるもの

    道場:今、木村先生がお話しした

    長時間労働
    長時間労働の常態化だけでなく「賃金上がらず物価高」の現代では、パートナーとの時間に物理的にも精神的にも経済的にも余裕を持てないばかりか、メリットを見いだしにくいという悲しい現実が…。

    道場:今、木村先生がお話しした

    心のわだかまり
    結婚適齢期の女性の8割が働いている現代で、実生活を丁寧に作り上げる余裕がなくなっている現状が。パートナーとじっくり向き合う時間も減っていて、セックスとは関係ない日常での不満がレスへとつながることも。

    道場:今、木村先生がお話しした

    不安定な社会情勢
    賃金の低さが取り沙汰されている今。将来的にも収入増が見込めず未来に希望が持てないと感じる人が増え、本人も気付かない潜在的な部分で家庭や子どもを作ることを負担として捉えられている傾向も。

性嫌悪チェックリスト

☑︎パートナーとセックスする気が起きない、行為に不安や恐怖を感じる。
☑︎セックス中に興奮せず何か冷めた感じになる。
☑︎セックスしてもオーガズムに達しない。
☑︎膣内性交はできるが挿入されると痛みがある。
☑︎マスターベーションをすることに嫌悪感がある。

女性に多いのが、性に嫌悪感を伴う性欲低下。性的雰囲気になるのを嫌ったり性的接触を極端に嫌悪し回避する現象。最近では男性の性嫌悪も問題になることがあり、いずれも心理的アプローチが必要です。

教えてくれたのは…

カウンセリングルームEsolv

カウンセリングルームEsolve公認心理師・道場勇太さん
職場での悩みや休職復職へのメンタルサポート、夫婦やパートナー間の問題、心因性の性機能問題やセックスレス改善のカウンセリングなど、様々な心理的サポートを行う。

カウンセリングルームEsolv

カウンセリングルームEsolveオーガナイザー・アドバイザー・木村将貴先生
泌尿器科医として様々な性の問題にアプローチ。性に悩む人に時間をかけ寄りそうため道場カウンセラーとEsolveを開設。性機能専門医、日 本性科学会認定セックスセラピスト。

イラスト/Erika Skelton 取材/野田春香 再構成/Bravoworks.Inc