齊藤工さん(42歳)にとって結婚とは?「仕事を通して家庭の裏の部分を見すぎて…」

齊藤工さんと言えば、クリエイティブで最もセクシーな俳優のイメージ。数多くの作品に出演し、映画監督でも多彩な才能を発揮されている姿からは想像できないほど、超素朴な方。40代が目指すべき美しき女性像について伺いました。

▼あわせて読みたい
監督を務めた映画が話題!【齊藤 工さん】特別カット集はこちらから

仕事を通して家庭の裏の部分を見すぎて結婚が難しくなった気が(笑)

お話を伺ったのは……齊藤 工さん

《Profile》 1981年東京都出身。’01年、俳優デビュー以降、映画、ドラマ、CMと活躍。さらには映画の企画・脚本・監督として活躍を見せる。監督長編最新作映画『スイート・マイホーム』(主演:窪田正孝)が9/1公開。

コロナ禍前は、幸せな家族の形は、背景にお家があり、その中に収まっているイメージを抱いていました。ところが、パンデミックで家族が長い間一緒にいると、DVやある種の事件が起こり、家は自分を守ってくれる聖域みたいな居場所という響きは、必ずしもそうでないと実感しました。 実は監督映画作品『スイート・マイホーム』は、幸せの象徴であるマイホームを手にしたのに、ある事件から恐怖に転じる神津凛子さん作品の実写化です。コロナ前に映画化の話を頂いたとき、原作を超えることは不可能だと感じ、受けるか否か迷いました。ところがコロナ禍での実感が、この作品の進むべき一つの理由だと悟りました。 僕自身は、結婚は情報でしかなく、実態が伴っていません。が、俳優として、不貞行為を演じるにあたり、映画や小説でシミュレーションして、疑似体験をしすぎたせいで、結婚観を数値化すると赤字(笑)。ハードモードなものとして捉えていて良くないなあと思います。

これまでのパートナーとなってきた女性にはいつも母の面影を感じてきたように思います

映画のテーマでもある不貞行為の成れの果ての恐ろしさの入口は、誰もが踏みやすい一歩。非現実的な話でなく、自分の半径内にはじまりが潜んでいるリアリティと緊張感が皆さんに響き、何かを感じ取って頂ければ本望です。かつて演じた映画『昼顔』然り、結婚の闇を描いたのが’00年代。他人の家庭にカメラが入った20年後にこの作品が生まれたのは繋がっていますね。

実は、最近、児童養護施設に通っています。行けるときに行って、彼らと遊ぶだけですが、だんだんと心開いてくれる子もいたりして。ここの子供たちは大人に対して警戒しているのを瞳から感じます。接していると、子供の頃に見上げた大人たちがどうあったかでその子の生き方、特に家族を築くことに大きく影響を及ぼしてることに気づきます。

結婚が成功か失敗かは、各ペアリングの化学反応で変わるから、攻略法も正解も見つけにくいと思いますが、確実に言えることは雛型は自分の両親だということ。僕もそこを基に自分の結婚を想像してるし、母の面影を以前のパートナーに感じてきたことを、今までのプロセスを振り返って感じました。そんな勝手な解釈を映画の中にも込めています。でも僕は今は犬と生きていこうと思ったりして。まだ出会ってないけど(笑)。

素敵な女性は周囲にいい影響を与えられる=自分が〝光る〟のではなく〝照らす〟人

40歳になってから発酵食品にハマり、ひたすら腸活をしています。発酵は人間が唯一手に入れた錬金術らしく、日々錬金中です。発酵は時間がかかりますが、積み重ねたことで養分が生まれ、有用なものになるわけです。

人も同じで、そこには時間を要した美しさがあります。でも相反するものが有害な腐敗。ただ状態としては似ている。時間を重ねると、悲しいかな、放っておくと精神的・肉体的にも腐敗に近づく可能性は否めないのです。じゃあ、発酵と腐敗は何が違うかって言うと周囲の状態。食べ物で言えば、腐ったリンゴが1個あれば箱ごと腐るけど、発酵はむしろ周りの栄養度を高める。

人も、周りにいる人でその人が見えます。自分だけが輝いて周りがくすんで見える人は表面的な美しさ。自分が光源となり、周囲を照らす発酵的生き方が美しい人。僕もせめて同じ転ぶなら発酵に転びたいから、体に投資し始めたのがコロナ禍。食生活にお金をかけるのではなく、昔からある日本食に変えていきました。玄米やぬか漬けやお味噌汁をよく食べ、今はお味噌を作っています。

結果、花粉症が治り、精神的にも安定し、現代病がことごとく改善し、心身ともに快調です。そんな発酵的美を手にできるのは僕も含めた40代。周囲に良い影響を及ぼす生き方ができる人こそ美しいです。

映画『スイート・マイホーム』上海国際映画祭にも出品されました

©2023『スイート・マイホーム』製作委員会 ©神津凛子/講談社

小説現代新人賞を受賞した作家神津凛子のデビュー作の実写化。1台のエアコンで家中を暖められる「まほうの家」に越した直後から奇妙な出来事が起こるホラーミステリー。

《衣装クレジット》 ジャケット¥64,900、シャツ¥36,300、サロペット¥58,300(すべてスズキ タカユキ)その他スタイリスト私物

2023年『美ST』10月号掲載 撮影/彦坂栄治 ヘア・メーク/赤塚修二 スタイリスト/三田真一 取材/安田真里 構成/長谷川千尋

美ST