子育てインフルエンサー・木下ゆーきさん「育児中の“もう無理!”を笑いに変える方法」って?
あるあるを超えた独自の世界観の育児動画が笑えると、話題の子育てインフルエンサー木下ゆーきさん。シングルファーザーとして子育てをし、その後再婚。現在3児の父である木下さんは自身の経験が動画を発信するきっかけになったといいます。育児で慌ただしい日常をちょっと楽しくする方法を木下さんに聞きました。
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とにかく「笑える」育児情報を発信する
子育てインフルエンサー・木下ゆーきさん
「自分よりもパートナーのほうが
ほんのちょっとだけ大変だと
思うようにしています」
木下ゆーき(きのしたゆーき)さん
笑いを交えた子育て情報を発信するSNS総フォロワー数60万人超の子育てインフルエンサー。元シングルファーザーで、現在10歳、4歳、1歳の子どもの育児中。チャイルドカウンセラー資格保有。RCC『イマナマ!』火曜レギュラーを務めるほか、NHK『すくすく子育て』など多くのメディアに出演中。
育児中の「もう無理!」を
笑いに変える方法
──木下ゆーきさんはもともとお笑い芸人をしていたんですよね?
テレビで見たジャグリングの大道芸人に憧れて15歳頃から人前に立つようになりました。大学に入ったものの、お笑いを極めたいという気持ちが強くなり中退。上京してコンビを組み芸人をやっていました。当時はもう、本当にお金がなくて……。でも、楽しかったですね。築60年家賃3万円のボロアパートに住んでいたのですが、とにかく壁が薄くて、音漏れがひどかったんです。隣の話し声が聞こえるのは当然なのですが、電話する声だけじゃなくて電話の相手の声まで聞こえてくるんですよ。ある日、ひとり部屋で「思い出は、いつの日も~♪」って口ずさんでいたら、壁の向こうから「雨~」って返されて、もうこの部屋から引っ越そうと思いました(笑)。
──極貧生活を笑い飛ばせてしまうようなタイプなのですか。
当時はお金がなくて大変でしたが、思い返せば自分のやりたいことを全力でできた時代でもありました。つらくてもこうやって、エピソードにしたら笑えてしまうんですよ。子育てしていると、「何やってるの!!」ってシチュエーションの連続だと思います。牛乳全部こぼされたとか、ティッシュ全部出されちゃったとか。そういう「うわぁ」と思った瞬間を撮って、「悲惨な光景」というアルバムをカメラロールに残しています。後で見返すと笑えますし、また悲惨な事態に直面したときに、「あのアルバムの写真が増やせる……」と、なぜか、ちょっとだけ余裕が生まれるんですよ。普段から、子育てに限らず感じたことをメモするようにしています。スマホのメモ帳に喜・怒・哀・楽で分けて記録しているんですが、育児をしているとどうしても「怒」が突出して多くなりがちです。でもそういうエピソードほど面白いし、後々、その経験が自分を助けてくれたりするので。まあ、あえて残そうと思っても、メモを取る時間さえ作れないのが子育てのつらいところなんですけどね。
──離婚後、シングルで育児をしていた時期もありますね。
23歳で最初の結婚をして、長男が生まれ、子どもが2歳の頃に別居、その後離婚しました。離婚前から子育ては主体的にやっていたので、離婚したから大変になったというわけではないんです。シングルになってから実家に戻ったので、親や姉夫婦も助けてくれました。それでも保育園で子どもが熱を出して呼び出されたときなど、夫婦で迎えを分担することができないので、僕が仕事を早退するしかありません。職場に対しての申し訳なさみたいなものを感じることはしょっちゅうでした。育児中の多くの人が経験することではあると思うのですが……。仕事中、スマホに着信があって保育園の名前が表示されると、「またか……」とどうしても重い気持ちになります。ちょっとでも楽しい気持ちにできないかなと思って、当時、息子が通っていた園の名前を、電話帳では「新垣結衣」に変えておきました。それだけで、着信表示を見たときのドキッと感が良いほうに変わるので。すぐに迎えに行かなきゃいけないという状況は何も変わらないんですが……。家族や友人に「ガッキーが迎えに来て欲しいっていうからさ」と自慢してどうにか乗り切っていました。
僕だって虐待を
していたかもしれない
──笑いに転換できるのはいいですよね。
そんなことでもしないとやってられないんですよ。再婚後に娘が生まれたとき、「おむつ替え動画」※1をSNSに投稿したら、ものすごくバズって今の仕事をはじめるきっかけになりました。その年のはじめ、愛知県で虐待事件がありました。生後11カ月の子どもを母親が床に叩きつけて死なせたという事件でした。ニュースを最初に聞いたときは「なんてひどい親なんだろう」と思ったんです。でも、続報が出て、そのお母さんは三つ子の赤ちゃんの育児中だったということも分かりました。彼女が24時間休む時間もなく育児をして追い詰められていったということを知って、「もしかしたら、僕も同じことやっていたかもしれないな」と思ったのです。今までは虐待イコールひどい親というイメージしかありませんでしたが、その背景には、産後うつとか育児ノイローゼが関係していることも多いのだと気づきました。僕も、息子が全然泣き止まないから、夜中に何時間も抱っこして部屋の中を歩きまわって寝かしつけたりしていたんですよね。やっと寝てくれたとSNSを見たら、まだ独身の友人たちはみんな楽しそうにしているんです。肩組んで居酒屋でビールジョッキ片手に盛り上がっているのを見て、孤独感に苛まれました。そういう過去があったので同じように子育てに悩み苦しんでいる人がくすっと笑える情報があったらいいな、と思って発信をはじめたんです。
──産婦人科の夜の風景※2とか観察力に驚きます。木下さんご自身はお産で入院していないはずなのに妙にリアルなのはなぜでしょう。
日頃から周囲の人の特徴を観察するのが好きなんです。長女のときの妊婦健診はほぼ全部付き添っているので(次男はコロナ禍で付き添いNG)、産婦人科の雰囲気も何となくわかっていました。夜中に、助産師さんが病室にやってくる風の動画は今、500万回以上再生されていて、「なんでこんなこと知っているの?」と言われます。長男が生まれたとき、病室で付き添っていたのですが、息子がどうしても泣き止まなくてナースコールで助けを呼んだことがあったんです。そのとき部屋に来てくれた助産師さんが「縦抱きが好きなんだねー」と抱っこで泣き止ませてくれたんですよ。そういうちょっとしたエピソードがもとになっています。
子育てのイライラを
ポイントに変換できたら……
──ミルクをあげたり、離乳食を食べさせたりする動画※3もそれだけで笑えるんですよ……。ふだんからこんなふうに育児できると楽しいですね。
子どもって、こちらがいくら頑張ってもなかなか食べてくれないですよね。その打開策というか、苦し紛れでやっていた感じです。子どもに食事させるだけの動画も色々撮りましたがそれだけ悩んでいたということで僕の苦しみの数だと思ってください。よく、「木下ゆーきさんみたいに楽しい子育てをしたい」と言われるんですよ。でも、楽しそうな部分を切り取っているだけで、僕自身も大変なことのほうが多いんです。子育てのイライラやストレスをドラッグストアのポイントに変換できないかなっていつも思っています。すぐたまりますよね。でも、子育てが大変だなと思っている人は、それだけ全力で子どもと向き合っているということだと思うので、それ自体とても素敵です。子育てって、終わりが見えない長距離走みたいなところがあるじゃないですか。長い道のりなので、適度に力を抜きながらやっていくのが大事だと思いますよ。子どものことが第一優先になっている人こそ、自分のためだけにケーキを買ってきて、「クリームはおいしいけど、スポンジは、パサパサだなぁ」って思えるくらいがちょうどいいんじゃないでしょうか。なんでも完璧を求めないということで、自分にご褒美もいいんだけれど、そこまで気合いを入れる必要はなくて、そこらへんで適当に買ってきたケーキを「おいしいけど、スポンジがな~」と思いながら食べるくらいの息抜きがちょうどいいと思います。
──独特のたとえが、わかるような、わからないような(笑)。
インスタとかのキラキラアカウントを見ると、それに比べて私はダメだって、自分を責めちゃう人もいると思います。でもキラキラの人は表面的なところしか見せてないだけだと思いますよ。VERYに出てくるきれいな人たちだって、カメラの前だからきれいにしているのであって、別に普段の暮らしすべてがそんなふうではないと思います。みんな大変な思いもたくさんしている人たちだと思うんですよね。見た目はジューシーでおいしそうな鶏からあげが、食べてみたら意外とパサついていて硬かったということがあると思うのですが、僕の育児もそんな感じです。やわらかもも肉のように見えて中身はグラム58円のむね肉なんですよ。
パートナーのほうが
「ちょっとだけ大変」と
思うようにしている
──他のインタビューでは「パートナーのほうが自分よりもちょっとだけ大変」だと思うようにしてるとおっしゃっていました。
自分が仕事で大変な思いをしてくたくたになって帰ってきたときは、それだけ労働時間が長いことが多いので、その間家で子どもを見ていたパートナーも同じように大変だったはずなんです。疲れて帰ってきたら、僕もソファでゴロンとしたくなります。でも、相手も疲れているはず。そこで、自分よりパートナーのほうがほんのちょっとだけ大変なんだと考えられたら相手を気遣えるのかなと思いました。ただこれは、お互いにそう思っていないと、どちらか一方だけが我慢することになって不平等なので。夫婦が互いにそう思えることがベストだとは思いますね。
──今育児真っ最中の読者に、とくにおすすめの動画はありますか?
いやいや、僕の動画なんか見る時間があったら一刻も早く寝てください!と言いたいです(笑)。
育児中の「ツラい」「大変」が一瞬で笑いに変わる
木下ワールド
【Instagram:kinoshitayuki_official】
【1】
携帯ショップ店員風、百貨店のコスメカウンター風、職務質問風などフォロワーのリクエストにこたえているうちにどんどんおむつ替えのバリエーションが増えました。
アパレル店員風のおむつ替え
「これなんか若い子にすっごい人気で。一枚は持っていて損はないアイテムですね」
【2】
「産婦人科のよくあるシーンなんで知ってるの?と言われるんですが、子どもが生まれる前の妊婦健診に付き添ったり、入院中の話を聞いたりして記憶に残っているんですよ」
【3】
「婚活パーティの雰囲気は想像です……。子どもって『食べて』『飲んで』と言ってもなかなかこちらの思い通りにはならないので苦し紛れにやっていたらこんなに動画が増えていました」
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撮影/古本麻由未 取材・文/髙田翔子 編集/フォレスト・ガンプJr.
*VERY2023年5月号「とにかく「笑える」育児情報を発信する 子育てインフルエンサー・木下ゆーきさん「自分よりもパートナーのほうがほんのちょっとだけ大変だと思うようにしています」」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。