NTTデータ部長・黒崎佳子さん~10年目まではとことん働く!と決めていました~

女性としてこれからのキャリアについて悩むSTORY世代。’22年に女性活躍推進法が改定されてからはますます女性の活躍が期待され始め、徐々に女性管理職比率も高くなってきています。個人として評価され活躍される女性リーダーの方々には、キャリアの狭間で自身の生き方を見つめ、可能性を信じてチャレンジする姿がありました。

今回ご登場いただくのは、株式会社NTTデータで、入社以降から常に第一線で活躍し続ける黒崎佳子さんです。ビジネスの最前線で活躍するその裏側では、母として妻として、そして女性として葛藤や壁にぶち当たったことも……。そんな彼女のSTORYをご紹介します。(全3回の第2回)

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黒崎 佳子さん(50歳)
株式会社NTTデータ
金融イノベーション本部 グローバルカスタマーサクセス室
コンサル&セールス統括部 ビジネス創発担当部長
企画部・人事総務担当部長

STORY編集部(以下同)――研修で感じた、「社会は今までとは違う」という感覚。それは、その後も変わらなかったのでしょうか?

研修同様に、配属された部署でも男女比は9対1のまま。でも、本格的に仕事が始動していく中で、改めて気づいたこと。それは性別の差はあるけれども、仕事の違いはないということ。男性ばかりに重要な案件が任され、女性はそんな仕事は担当できない……なんてことは全くありません。女性だから優遇されることなどないし、それを求めている女性など一人もいませでした。常に立場は対等だと感じました。

――共に「超就職氷河期」を経験した、学生時代の仲間たちとは就職後に会いましたか?

集まって、仕事のことや会社のことを話し、働き方も様々だなと感じたことを覚えています。数年経過してくると話題は仕事の話から結婚や出産の話に変わり、中には退職する友人もいました。

――友人たちから結婚や出産という話がでてくると、黒崎さんの周りの方たちも騒ぎだすのでは?

両親は私をせっつくようなことはしませんでした。当時は実家から通勤していたので、あまりに忙しく自宅になかなか帰ってこない娘のことを心配はしていました。本当に忙しかったんです。結婚や出産というライフイベントはとても大きいもの……なるべく自分の許容範囲の中で進めたいところですが、計画的にはいかないのが事実ですよね(笑)。

――御社の出産や育児に対する制度は整えられていたのでしょうか?

電電公社の時代から、またNTTグループになってからも、出産から復帰してくる女性はいましたので、働き続けられる環境は整っていたと思います。

――産休後、働き続けるための環境は自ら選択することができたのでしょうか?

できました。私が入社してから数年、当社の女性社員は共働きも方も多い一方、出産を経て戻ってくる女性社員は最前線からは退き、スタッフ職を選ぶ方が多かったように記憶しています。

――“スタッフ職”というと?

スタッフ職は、バックヤードの業務に携わる職種(人事、総務、財務など)のことを言います。お客様と応対する営業職や開発職は突発的な対応が必要になりがちですが、スタッフ職は働く時間をある程度コントロールしやすいのです。育児休職明けの方は、24時間365日対応が必要となる最前線を退いて、上記のようなスタッフ職になる方が多かったんです。
それが悪いということではなく、選択できた状況下で、仕事と子育てを両立するには、スタッフ職のほうが時間管理しやすいからですよね。

――産後、最前線から退く女性たちを見て、黒崎さん自身もそのような選択をしようと考えていましたか?

いつか自分も出産したらそうなるかもしれないと思っていました。少なくとも結婚でそうなるのではなく、出産して戻ってくる時にそうなるかもしれないと。それを想定して、10年間は気にせず働きたい、つまり10年経ってから子どもを産もうと心のどこかで決めていたんです。そこまでのびのび働ければ自分も納得するかなと思っていたし、10年という数字は、転職を含めて色々なことを見直すタイミングだと思っていたからです。

――実際には?

私の場合、入社10年目の10月に出産しました。残業もしつつ産休に入るぎりぎりまで仕事をして、翌年の4月の保育園入園にあわせて職場復帰。ただ、さすがに6か月の子どもを保育園へ入れるのは忍びなく……母乳で育てつつ、離乳食を開始した時期なので、時短勤務を選択しました。

――産休前の部署に戻られたのでしょうか?

産休前の所属部署である、開発現場に復帰しました。ただ、その部署はトラブルがあれば朝まで対応するのが普通の職場。時短勤務の私が復帰したところで半分のパフォーマンスにしかならない。たった6時間しか仕事ができないとなると周りに申し訳なく、後ろ髪をひかれるように帰る自分に納得できていないことに気づきました。そこで、職場復帰後3か月で時短を取りやめ、フルタイム勤務へ切り替え、保育園にもぎりぎりまで預ける調整をしたんです。フルタイムで働き、可能な時は残業もする。帰れるときはサクッと帰る。メリハリをつけて仕事をする方が性に合うと気づいた瞬間であり、私はそういう性格なんだなあと改めて認識しました。

――自らの選択とはいえ、時短勤務からフルタイムへの切り替えは大変だったのでは?

絶対的に子どもと接する時間が減ってしまうので、土日は子どもの習い事に同行する、キャンプに行く、家族みんなでお出かけをする、3人とも1歳半までは授乳するなど、いろいろと自分なりに子どものためにできることは何か? を考え、仕事との両立をしていました。そうやってメリハリをつけて仕事をする方が私には心地よいのだと思ったんです。39歳と41歳で第二子、三子を出産しました。その際は産休後、時短を挟まずフルタイムで復帰しました。

――時に仕事と家庭の両立に悩むことも?

専業主婦の方や時短勤務の方と比較して、子どもたちのために何かをやってないのかもしれない……と思うことはあります。でも、比較して結果がわかったところで「私ができることをやる」ということが、自分にも家族にとっても一番いいんだと考えていたので、周りと比較はしていません。

――社員にとって働きやすい場所とは?

出産、育児に関する制度は整い、新型コロナの影響もあり、テレワークも浸透し、当社はますます働きやすい環境となっていると思います。そんな今、私たち社員に求められていることは何か。

会社の業務継続も大事ですが、日本の将来のために社会参加をすることもとても大切だと思うんです。色々な社会参加の仕方はあるかと思いますが、私にとっては子どもを産み育てることで社会参加していると実感します。ですので、会社として両立を進めることは大事なことだと思うんです。働く社員がお互いの事情を理解して、困ったときはお互い様でカバーしあう人間関係が自然に醸成されること。それが最も大切なことなのではないかと思います。

(後編につづく)

撮影/BOCO 取材/上原亜希子

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