神田うのさんが明かす「娘のバイオリンでの活躍、夫の復活劇、子育て」
何をさせるか、どこまで続けさせるか。将来に繫がる可能性を秘めた習い事は、子育ての悩みポイント。カーネギーホールでの演奏、ジュリアード音楽院でのレッスンと娘さんがバイオリンの世界で素晴らしい活躍を見せる神田うのさんに聞く〝やり遂げる力〟の伸ばし方。現在発売中の『NaVY』4月号から、インタビューをお届けします。
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ずっと自由でいたくて誰かのために
生きる自分を想像できなかった。
娘は、私を変えた唯一の人
自分中心だった世界が
娘中心に自分が回る世界に
36歳で、娘を出産。それまでは〝母〟になることを避けていました。自由がなくなる、好きなものを諦めなくちゃいけない。自己犠牲できる度量がなく、命を育てるなんてできないと思っていたんです。妊娠中もハイヒール&ロングネイルをやめず、いろんな方にご指摘を受けました。もちろんご意見は受け止めて、ペタンコ靴にも挑戦したんです。でも、ヒールに慣れてしまった私にとっては歩きづらく、居心地が悪かった。母親スイッチが入ったのは、出産のクライマックス。和痛分娩だったのですが、お医者様に「頭が出てきましたよ」と言われ、伸ばした指先が娘の頭に触れたとき。一気にうわーっと涙が溢れ、大泣きしました。産まれようと頑張っているその命が健気で愛おしくて、尊くて……。その瞬間、自分中心に回っていた世界が逆転。娘中心に自分が回る世界に切り替わったんです。あんなにこだわっていたハイヒールとロングネイルも、すぐやめました。だって危ないですもん(笑)。ロングネイルが復活したのはここ数年、それまでは常に深爪状態でした。娘は私のことを変えてくれた、唯一の人。やったことのない料理まで頑張るようになり「娘のおかげで手料理が食べられるようになった」と夫も驚いていました。
「このピアノ、発音が変」。
娘の特別な個性に気づきました
娘は11歳、バイオリンを一生懸命頑張っています。習い始めたのは、3歳から。私の母の提案で「グランマがおすすめするなら、やってみる?」と、近所のお教室に通うことに。そのお教室で今でも〝バイオリンの母〟と慕う先生と出会ったのですが、先生から最初にお話しされたのは「20歳までは続けましょうね」ということ。「はい、そのつもりです」とお答えしました。正直、当時は娘がバイオリン一本でやっていくとは考えていなくて、ただ何かひとつ〝これだけは負けない〟と誇れるものを作ってあげたいという想いだけでした。バイオリンは、その可能性のひとつ。でも〝やめても大丈夫〟と〝20歳まで続ける〟とでは向き合う姿勢が変わってくる。バイオリンの世界ヘの敬意も込めて、継続前提でスタートしました。「もしかしたら娘には、音楽の道が向いているかも」と思ったきっかけのひとつが、耳の良さ。ピアノの調律のわずかな狂いに気づいて「このピアノ、発音が変なの」と耳を塞いでしまうことが多々あって。バイオリンを習っている子はみんなそうだと思っていたら、そうでないことに後から気づき……「ちゃんと褒めてあげられなくてごめんね」という気持ちに。子どものリアクションのなかに個性や才能を見出すきっかけが隠れていることを学びました。
「やめても大丈夫」と、
「20歳まで続ける」では習い事に
向き合う覚悟が変わります
ブラウス ¥249,700 パンツ ¥206,800(ともにアニオナ/ウールン商会) チェーンネックレス ¥1,848,000 ピアス ¥869,000 ダブルリング ¥682,000 リング ¥484,000(すべてフレッド/フレッド カスタマーサービス)
子育てに、待ったなし。
今やれることを、やるしかない!
いろんな考え方があるとは思いますが、幼い子どもの習い事に親のサポートは必要だと思っています。私のクラシックバレエも、母と二人三脚だった記憶。いろんな刺激を受け、成果を感じ、興味が深まることで向上心が芽生える。お教室でのレッスン以外に、いかにその場を与えられるかが親の仕事かなと思うんです。娘が習い始めの頃は、私も自分用のバイオリンを購入。『きらきら星』をマスターし、一緒に練習しました。今は娘が朝1時間レッスンをしてから登校するので、その前に朝食とお弁当作り。バイオリンだけでなく、それに関連する習い事も多かったりするので、体調管理や励ましも含めてサポートは続いています。バイオリンの難易度に連動して難しくなるミッションを、親子でクリアしていく感覚。もちろんお友達と遊ぶご褒美タイムもしっかりとっています。土日のどちらかは、パパとランチデートも。スケジュールだけ見ると忙しそうではありますが、私も娘も「やるしかない!」という気持ちで、意外と楽しくやっています。子育てに〝待った〟はないと思っていて、今しかできないことの積み重ねで仕上がりが変わる。そう信じているんです。
パティシエールにお笑い芸人。
将来の夢は「ソリスト以外」
娘は、バイオリンが大好き。でも、「やめたい」と言い出すこともあります。一生懸命な分、辛くなることも多い。「そう決めたなら、先生に菓子折りを持ってご挨拶に行きましょう」と伝えると、娘は冷静になって考え「やっぱり続ける」となるのがいつものパターン。始めるもやめるも覚悟と礼儀が必要、とは母からの教え。今のところ将来の夢はソリストではなく、パティシエール、アニメーション映画や映画音楽の製作、お笑い芸人と、いろいろやりたいことがあるみたいです。娘の将来は、娘の自由。それでいいと思っていますが「ソリストにはなれるけど、ならないでも良し。そのレベルまで到達してから好きな道を歩もうね」とは言いました。ここまでの経験を、将来に活かせるところまでやり切らないともったいない。私もバレエでの経験がモデルを始めたときのポージングに役立ち、舞台映えする衣装に触れてきたおかげでウェディングドレスのデザインの仕事にもつながりました。ランウェイやバラエティで怯まない度胸も、バレエのステージが養ってくれたもの。一生懸命バレエに費やした時間とその経験が、今にきちんと還元されている実感があります。この先娘がバイオリンを通じて学ぶこと、出会う人たちは、間違いなく将来のバリエーションを広げてくれるはず。娘はまだ11歳、働くことへの解釈がもう少しリアルになるまで……頑張ってほしいのが本音です。
娘のバイオリンも、子育ても
私ひとりではなしえなかったこと
「皆さんに育ててもらっている」
昨年、バイオリンの先生方のあたたかいご指導のおかげで、カーネギーホールでの演奏、ジュリアード音楽院でのレッスンという夢のような機会に恵まれました。娘の努力する姿をずっと見てきたので、演奏の直前は私の方が大緊張! 病に倒れ、一時期は話すことも困難だった夫も回復してNYへ行き、娘の晴れ舞台を一緒に鑑賞することができました。娘のバイオリンでの活躍、夫の復活劇、仕事をしながらの子育て…… どれも私ひとりではなしえなかったこと。両親や友人、先生方を始めとする周囲の協力があってこそなんです。娘にきょうだいを作ってあげることは叶いませんでしたが、その分いろんな人と関わる喜びを教えてあげたい。親の愛だけでは偏ってしまう部分を柔軟に、素敵に整えてくれるのがコミュニケーションの力。娘だけでなく、私も母親として「皆さんに育てていただいているのだな」と、実感する日々です。
京都に本社があるウェディングドレス会社のスタッフとのランチ。娘とは小さい時にしか会ってなかったので、久しぶりの再会にみんな喜んでくれました。伊豆下田にあるセカンドハウスをはじめ、さまざまな場所に行くことでたくさんの経験を積んでほしいなと思っています。
Profile
神田うのさん
かんだ うの。1975年生まれ。タレント、ウェディングドレスやコスメ、ナイトブラなどのプロデュースと多彩に活躍。4歳から始めたクラシックバレエでは、東京新聞バレエコンクール入賞、中部全日本バレエコンクール ジュニア部1位の実績。11歳の女の子ママ。
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撮影/黒沼 諭〈aosora〉スタイリング/西野メンコ ヘア・メーク/胡桃沢和久〈Iris〉取材・文/櫻井裕美 編集/羽城麻子
VERY NaVY4月号『子育て第2シーズンどうですか?神田うのさんインタビュー』より。詳しくは2023年3/7発売VERY NaVY4月号に掲載しています。*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。