40代の揺らぎ「お金について」 【対談・原田ひ香さん×優木まおみさん】 お金は自分らしく使ってこそ生きる
40代……。
さまざまな揺らぎを感じる世代です。
年金2000万円問題があったかと思えば、
エネルギー価格の高騰や円安による物価高……。これからの人生を考えたときに、経済的な不安要素は増えてゆくばかり。
STORY2月号では、作家の原田ひ香さんとの優木まおみさんに“お金について”のお話をうかがいしました。
本誌P.160-161の対談記事の続きをこちらに紹介させていただきます。
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働き方の価値観もどんどん変化する時代
原田さん(以下敬称略) 20年ほど前までは、日本は右肩上がりの成長をしていくと、誰もが信じていたけれど、バブル後、状況は様変わりしましたよね。企業に勤めている方も、定年までずっと働ける、という状況は、考えにくくなっている。もし、定年まで勤めきっても、リタイアではなくて、その後も働かなければいけなくなりましたよね。
優木さん(以下敬称略) そうですね。私はずっとフリーランスで、雇用されたことがないので不安定なのですが、会社勤めの方でも、安泰なんてない。以前と比べると、相当に揺らいでいる時代ですよね。
そのせいか、誰もが安定した会社員になりたがる、という傾向も弱くなっているかも。私は会社を経営しているんですが、スタッフに「社員にならない?」って聞いても、社員よりフリーランスや業務委託のような働き方がいい、という人も多いんです。お金で拘束されたくない、自由に働きたい、という人も増えている気がする。
原田 確かに価値観は昔に比べて、本当に多様化してますよね。
投資も節約も身近なとこからやってみよう
原田 ところで、投資って難しいと思いますか?
優木 いえ。例えば、子どもの学費にお金をかけるのも、広い意味でいえば、将来への投資ですよね。だから、みんなやっているわけで。私は、学資保険とか、小規模共済とかから始めて、今はいろいろ考えてやっています。
原田 アメリカなどでは投資はもっと身近だけれど、日本では「自己責任」という言葉が重すぎて、投資しなさいとは言いにくい環境ですよね。
優木 そうそう。ちょっとギャンブルみたいにとらえている方もいますよね。それに、学校でお金について学ぶ機会が少ないですよね。うちの子たちの通う放課後学級では、会社ごっこなどで働いたり、お金を稼いだり、使ったり、投資したり、みたいな体験をさせてくれるんです。キッザニアでの職業体験みたいなことかな。子どもって、大人の真似をするのが大好きだから、喜々としてやっていて。そんなふうに学ぶ機会がもっとあるといいなと思います。
原田 日本でも、最近は少しずつ工夫されつつあるんですよ。初級編として、中学校・高校の家庭科の教科書は、大人にとっても、とてもいい投資の教材だと感心します。
優木 へえ。そうなんですね。今度見てみよう。
私の父は凝り性で、いろいろ勉強して、1株株主みたいなことをよくやっていたんです。そのせいか、私は投資に抵抗がなかったですね。ただ、株を買うにしても、株主優待でお得に買い物や食事ができる、とか、このブランドのお洋服が好きだから、とか、趣味が写真なのでカメラの会社、といった具合に、興味のあるところや応援したい企業の株をちょっと買ってみることから始めるといいかなって思います。
原田 そうなんですよ。どんと投資して、どんと儲けるなんて、なかなかできないけれど、よく言われることなのですが「収入の1割を好きなことに投資してみる」というのが王道ですかね。もっと少額なら、本誌対談の中でお話しした、格安スマホに乗り換えて、浮いた5千円で毎月積み立て投資をやってみる、というのもいい。
優木 ただ、やみくもに積み立てをして、満期とか、解約時期を忘れちゃったりすることもあるので、たまに整理しないといけないですよね。
原田 そうなんです。保険をただ掛けておいても、忘れたり、わからなくなってしまって請求しないでいると、戻ってこないということもありますからね。よく聞くのが、高齢になって、何に投資していたのかわからなくなってしまって、そのままになってしまうということ。管理が必要ですよね。
優木 〈投資しっぱなし〉に加えて、〈サブスク継続しっぱなし〉というのもよくやってしまう。ひとつずつは少額だけど、いつの間にかどんどん加入しちゃって、気づくと、アプリとか、ジムとか、使ってないのにダラダラお金だけ払い続けている。一度全部洗い出して、やめるものはやめる。そんな管理が大事だと思うんです。私は「今日は1日、お金見直しの日」というのを決めて、確認するようにしてます。
お金の采配ができる人は人生も采配できる
優木 知り合いの編集者で、10年間、年末ジャンボを毎年30万円分買って、全然当たらなかったという方がいるんです。
原田 ええ? 30万円(笑)。それはすごい。
優木 何にお金を使うかはその人の価値観で、〈夢を買う〉っていうのも、悪くはないですよね。ただ、それを買うために、例えば食費を削っているなら、私なら、健康のために良くないから宝くじは買わないで、毎日のご飯にその分を当てよう、と思うだろうな。その話を聞いて、どこにプライオリティを置くかはその人の生き方だと思います。
原田 そうですね。自分で采配して自分で使う。その人は夢を買いたいなら、それはそれでいいですよ。人に決められる人生でなく、自分の人生ということですものね。
優木 お金って、やりたいことのために使うものだと思うんです。使ってこそ生きる。だから、お金のために我慢して、何かを諦めるっていうのは違うと思う。お金を増やしたり、節約したりするのも、楽しんでできることがいちばんなんじゃないかな。
原田 おっしゃるとおり。楽しんで実践していくなかで、お金のことを学んでいけばいいと思います。40代って、人生の折り返し地点。今からやってみてほしいですよね。
撮影/清水将之[mili] ヘア・メーク/只友謙也[Linx](原田さん)、久保フユミ[ROI](優木さん) 取材/秋元恵美
原田ひ香さん(52)
『三千円の使いかた』(中公文庫)は“読めばお金がたまるマネー×家族”小説として大ヒットし、’22年文庫ベストセラー第一位に。お金にまつわるノウハウをテーマにした『老人ホテル』(光文社)も絶賛発売中。
優木まおみさん(42)
バラエティー・情報番組、モデル等、広く活躍する一方、第二子出産を機にピラティスを始め、インストラクターの資格を取得し、オリジナルのエクササイズのレッスン会を行うなど実業家としても活動中。
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