「ホルモン補充治療」ってどうするの?実際どうなの?
女性ホルモンのエストロゲンが低下し、更年期症状が起こるということを知ると、ならば、何らかの方法で減少した分を補いたい!そういう風に思ってしまいます。そこで気になってくるのがホルモン補充治療法(HRT)ではないでしょうか。STORY読者アンケートでも「実際に取り入れている」と回答した人は全体の約5%でしたが、「良さそうであれば取り入れたい」「取り入れてみたいが不安がある」の回答の合計は約58%ありました。実は気になってはいる人、結構多そうです!
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ホルモン補充治療って、実際どう?【STORYライター経験談】<前編>
ホルモン補充療法(HRT=Hormone Replacement Therapy)とは?
ホルモン補充療法とは、減少する女性ホルモンの代わりに同じ働きをする薬剤を投与して、心身の不調を改善する治療法。市販薬ではなく、必ず婦人科で問診、検査を受けた上での治療となります(保険適用内)。
基本的には、更年期に入りエストロゲンの減少が確認されたときに使用しますが、女性ホルモンの揺らぎを整えるために、もっと前から使用することも。更年期症状などに対処するためだけでなく、女性ホルモンの減少に伴う骨密度低下の改善、肌、髪のツヤアップ等の効果も確認されています。
仕組みとしては、各臓器にあるエストロゲンレセプターの「スイッチ」をエストロゲン剤が代わりに押すことで、体内の様々な仕組みが、エストロゲンが正常に分泌されていたころと同じように働き始めます。
使用するホルモンは「2種類」
一般的にHRTに使用される薬剤は「エストロゲン剤」と「黄体ホルモン剤」の2種類。この2種類はセットで併用します。
エストロゲン剤
各臓器にあるエストロゲンレセプターに結合してスイッチを押してくれるのは減少するエストロゲンの代わりとなるエストロゲン剤。
黄体ホルモン剤
エストロゲンの子宮内膜への刺激を抑えるための薬剤。エストロゲン剤の補充は子宮内膜を増殖させる働きがあり、それが過剰になると、子宮たい癌のリスクが高まる恐れが。それを回避するのが黄体ホルモン剤。
具体的に、どうすればいいの?
まずは婦人科へ。投与は主に3種類(貼るタイプ、塗るタイプ、飲むタイプ)
婦人科で問診・血縁検査後、更年期症状が認められればドクターから以下のいずれかの治療が行われます。
経皮吸収型製剤(パッチやジェル)
皮膚から皮下の毛細血管を通って血液中に直接吸い込まれます。
経口剤
投与量を減らす時や投薬パターンの変更等に調整が簡単な投与法。肝臓で代謝され腸から吸収されます。投与の調節はしやすいが肝臓への負担や中性脂肪などの増加、血栓症のリスクがわずかながら上昇することも。肝機能障害がある人は使用できません。
黄体ホルモン単独の薬剤は経口剤のみとなっています。
実際の効果は?
様々な心身の不調に改善が見られます
月経異常、イライラ・落ち込み、倦怠感、発汗・ほてり、不眠、めまい、手指のこわばり、肩こり、冷え、判断力・決断力・思考力の低下、骨密度の低下予防、動脈硬化の進行予防など。
どういう人におすすめ? いつからやっていいの?
50歳前後で月経周期の乱れが見られる人、閉経後数年以内、上記の症状を含め、特にほてり、発汗症状が強く日常生活に支障がある人におすすめ。
逆に、ほてりや発汗といった身体症状がほとんどなく精神面の症状が前面に出ている場合は、HRTよりも抗欝剤、精神安定剤、睡眠導入剤などで治療したほうが回復が早い場合も。
月経周期や不調の状況にもよりますが、治療のスタートは閉経前後、閉経後数年以内からがおすすめです。ですが場合によっては更年期症状・更年期障害の改善後も継続することもできます。症状のリバウンドが気になる、肌の調子が気になる、骨密度のキープしたいというのが、ホルモン補充治療を継続する人の主な目的になっているようです。
更年期症状以外の目的にも投与してもいい?
骨密度低下を防ぐ効果があります。また二次的な効果として肌、髪の潤いアップなどの美容効果も。ただし、40代で月経が順調に来ている人、特に心身の不調が認められない人はホルモンレベルの観点からも(女性ホルモンが充足している)適応になりません。
受ける前にチェックすること
ホルモン補充療法を始めるにあたっては、婦人科でのホルモン検査が欠かせません。血液検査でエストラジオール値※、FSH(卵胞刺激ホルモン)値を調べて。エストラジオール値は性成熟期ではおよそ30〜300pg/mlなのに対して、更年期では減少しはじめ、閉経するといつ測定しても20pg/ml未満になります。それに反してFSH値は高くなっていたら要注意。25mlU/ml以上ならホルモン補充療法の適齢期のサインです。また、FSH値が、高くなっていると言う事は脳の視床下部から「エストロゲンが足りないから分泌せよ」の指令が乱発されている証拠。つまり卵巣からもうエストロゲンが出ないのに脳は無理に「分泌しなさい」とハッパをかけている状態で、自律神経が混乱しているということ。その場合、更年期症状が出やすくなっているのでそろそろホルモン補充適齢期だとわかります。
※エストラジオールとは女性ホルモンであるエストロゲンを代表とする成分で、この値により卵巣機能の状態や閉経の可能性が分かります。エストラジオールの値が低いと卵巣機能の低下が考えられます。
閉経前後10年を軽やかに過ごすために
更年期に大切なのは、エストロゲンの分泌が減少することによる自律神経の乱れを落ち着かせ、軟着陸を目指すこと。それには薬のアシストはとても有効です。婦人科で診察を受け、ホルモン補充療法を始めることは、女性ホルモンの揺らぎで乱された体調を少しずつ落ち着けていける近道に。
45歳以上で、なんとなく心身に不調を感じる方は一度婦人科で診察を受けてみては?
人生100年時代、60代以降を健康で美しく過ごすためには閉経前後の10年間、どれだけ自分の体をケアしたかにかかっています。不調を見過ごさず、放置しないで美容寿命、健康寿命を伸ばしましょう。
今回監修していただいたは『40代から始めよう!閉経マネジメント』の著者 吉形玲美先生
吉形玲美先生
医学博士、日本産婦人科学会産婦人科専門医。現在浜松町ハマサイトクリニック婦人科専門医、東京女子医大病院産婦人科非常勤講師。『40代から始めよう!閉経マネジメント』(講談社)の著者。産婦人科医として医療の最前線に立つ傍ら、女性医療・更年期医療の臨床研究にも数多く携わる。2002年より東京女子医科大学病院婦人科の更年期専門外来を担当。更年期症状で悩む女性たちを20年にわたって診療し続けている。そして趣味の社交ダンスでエイジレスな美貌をキープ!